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TXT考察:世界を繋ぐ火 -万物流転-

今回はTXT作品を読み解くためのヒント的な内容です。
神話とは異なったアプローチで考えていきます。

TXT作品と火

TXT作品の中には火の描写が多くみられます。
「Run Away」「Magic Island」「Can't You See Me?」「0X1=LOVESONG」などが例として挙げられます。

このことから「火」とTXT作品には強い繋がりを感じているMOAも多いでしょう。私も過去の考察で「火」=「世界の終わり」ではないかと述べさせていただきました。

実は古代ギリシャの哲学者に「世界」を「火」であると考えた人物がいます。ヘラクレイトスです。

彼の話を進める前に、まずギリシャ人のものの捉え方が神話から理性に変化していった過程について紹介します。

神話からロゴスへ

古代ギリシャの人間にとって自然は驚異であるとともに恵みでもありました。人間の力をはるかにこえた自然の力を古代ギリシャ人は神格化して、崇めまつりました。そして人々は人間の理解を超えた現象を、自らが自然を神格化して生まれた神々の力の働きとして説明しようとしました。これが神話とよばれるものです。(中略)

  しかし紀元前6世紀ごろになると、自然界の出来事を神々ではなく、観察と論理的思考によって説明しようとする人々が現れました。そうした人々は、自然や世界にはロゴス[理法]が何らかの形で支配しており、人間の理性[ロゴス]によってその理法を解明しようとしました。

神話から哲学へ・古代ギリシアの哲学の誕生

前述の通り古代ギリシャ人は、自然の摂理を神話から理性へと考え方をシフトしました。知的好奇心に駆られたギリシャ人は知の探究を始めたのです。
そして哲学(知への愛)が生まれ「万物の根源は何か」という問題提議をもとに思考を始めました。

その過程の中でヘラクレイトスは 「世界とは何か」という問いに発展し、世界を「火」であると考えました。

そして彼が説いた「万物流転説」は、後の哲学者にも大いな影響を与えました。では彼のこれらの思想を探ってみましょう。

ヘラクレイトス「世界は火である」

「火」という言葉を聞いて皆さんはどのようなイメージを持ちますか?

ヘラクレイトスは「絶えず変化しながらも同じ姿を保ち続ける」と説きました。

これは一体どういう意味かというと

TXT (투모로우바이투게더) '9와 4분의 3 승강장에서 너를 기다려 (Run Away)' Official MV

共通してこれらを言葉で表すとしたら「火」ではありますが「形」は同じではありません。一秒前の火、今見ている火、一秒後の火も同じではありません。

「火」は「変化」をしている
これがヘラクレイトスの考える「火」でありそれは「世界」にも言える…ということです。

"万人にとって同一のものたるこの宇宙秩序は、いかなる神も、人も造ったものではない。それは常にあったし、今もあり、これからもあるだろう。それはとこわに生きる火であり、一定の分だけ燃え、一定の分だけ消える。"

もし前世の自分、現世の自分、後世の自分がいたとして、自分という世界は共通した火であり、生きる時代によって燃えては消えを繰り返しているのだと想像するとめちゃくちゃ面白い考えだなと個人的には思います。

「Run Away」「Magic Island」「Can't you see me?」「0X1=LOVESONG」様々な世界線で5人が見ている「火」は紛れもなく「火」ですがそれは姿を変えた「世界」で、共通する「世界」なのかもしれません。

でも私は「火というものは自発的に生まれないもの」と捉えています。「誰か」もしくは「何か」が作用しないと火は生まれません。

ヘラクレイトスは「万人にとって同一のものたるこの宇宙秩序は、いかなる神も、人も造ったものではない。 それは常にあったし、今もあり、これからもあるだろう。」と説いていますが、宇宙秩序=火が「ある」ためには根源として「何か」があったと思うんです。

そこを深掘りしていくのは避けますがTXT作品における「火」という「世界」(あくまで仮説)と ヘラクレイトスの「火」という「世界」には、通ずる点と異なる点があるなと感じたことは自分の頭の片隅に残しておこうと思います。

次に彼が説いた「万物流転説」について紹介します。

万物流転説

「万物は流転する」という有名な言葉は、「世界はたえず変化し続けていている」という意味で、「変化」を問題にしている思想です。
例えば人間は時間とともに細胞が入れ替わり、変化していますが、同じ「私」であることに変わりはありません。(中略)
ヘラクレイトスは世界は「在る」ものではなく、世界は対立するものの調和によって「変化しながら成る」ものだといい、その学説は万物流転説と呼ばれます。運動こそが万物の真相であるとしたのです。

「ヘラクレイトス」の思想とは?名言「万物は流転する」の意味も

こちらの引用文ですが、世界を「火」と置き換えてしまうと、矛盾が生まれるので解釈には注意が必要です。 あくまで世界は「在る」ものではなく「対立するものが調和し変化しながら成る」ということを説いたもので、 その例えとして「火」のようだと表したのだろう…としておきましょう。

彼の「万物流転説」は、のちに確立される「弁証法」の先駆けとも言われたようです。

弁証法

私は専門学者ではないので完全に理解できているわけではありませんがTXT作品を読み解く上でこういった理論があることは手助けになるだろうと思ったので私の解釈のもと紹介します。

弁証法とBlue Orangeade

「弁証法」を確立していったのはヘーゲルという哲学者です。

― ヘーゲルの弁証法とは、矛盾から新しい考え方を生み出すプロセスのことで、「正⇒反⇒合」または「肯定⇒否定⇒否定の否定」と説明されます。問題を解決する際に対立する2つの事柄について両者を切り捨てることなく、より良い解決方法を見つけ出す思考方法です。

一人が主張したことに対して、誰かがそれを否定ないし対立ないし矛盾を主張する。それらは相互に補完されながらより高い次元へと統合されて新たな主張が生まれる。

誰かが「青く広がる空を見たい」と言い、それに対して「赤く染まる海を見たい」と言う。そうして「日が海に沈んでいく様子を見たらもっと綺麗だ」となっていくかもしれません。

勘が鋭いMOAはハッとしたかもしれませんが、TXT作品は「●● or ××」だったり「△△と□□」だったり、相反する2つを並べる歌詞がとても多いなという印象があります。

例えば Blue Orangeadeは正にそれで、歌詞の中には以下の表現があります。

우린 정반대인 거야 그래서 더 특별한 거야
正反対だからこそより一層特別になる

少年の成長には、弁証法で述べられている「正⇒反⇒合」が行われているように思うのです。
今後の考察では、これを踏まえ考えていければと思っています。

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本記事はYouTubeの内容を抜粋しテキスト化したものです。
動画に含まれている引用作品や文献等はYouTubeにてご確認ください。
ーNOREARIKA