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ヨーグルトとサラダに潜むスリル

「ラクトバチルス・ブルガリクス、ストレプトコッカス・サーモフィルス!」

こんな呪文を温めたミルクに唱えて出来るのがヨーグルト。世間でそれはそれはもう、健康的とされている食べ物だ。

でもそんなイメージなら食べてくれるのは健康志向の人びとばかりじゃないか。人口減少の局面ではシェアを広げるだけではなく、パイそのものの大きさを拡大するべく新規顧客の開拓に勤しまなければならない。そのためにはジャンクなイメージも必要不可欠。つまりは某栄養ドリンクみたいに、一日を頑張り抜けたり羽が生える感のあるヨーグルト。某ラーメン店のようにヤサイダブルニンニクアブラマシマシが通じるヨーグルト。マキシマムザ某の歌詞に登場してしまうヨーグルト。これら無くして明日のヨーグルトは語れないのではないか。

昨今ではスーパーなんかのヨーグルト売り場に行くと爽やかなパッケージがダーっと並んでいて、中には脂肪ゼロを謳う商品もある。この、ジャンクとは正反対の極めて優等生的なイメージ。これじゃいけないんだ。ノンファットじゃなくイエスファット、オメガ3脂肪酸ではなくてメガ脂肪こそが求められている。

さて、前口上はこのくらいにして、栄養満点、冬山に登るならぜひ持っていたいエクストラファットなヨーグルトの試作に移ろう。ちなみに市販のノーマルタイプのヨーグルトは残念なことにだいたい乳脂肪分が3%くらいだ。そこで生クリームなんかを足し込んでいくと上手い具合に脂肪を補えそうだし味も良さそうなのだけれど、生クリームは脂肪分の高いものでもせいぜい50%で、半々の比率でヨーグルトに配合しても最終的な脂肪分は25%ちょっとだ。これじゃ足りない。ソーソーファットだ。ジャンクなイメージのためにはやはり50%以上は欲しい。ならば、ということでヨーグルトには油を直接足しこむことにする。

油をヨーグルトに足しこむ際に気になるのは分離だ。分離してしまうとそれはただのヨーグルトと油でしかないので、ガッチリと一体化させなくてはならない。油と水を混ぜるには仲を取り持ってくれる乳化剤が必要となる。今回は卵黄に登場願おう。卵黄は日常的に入手可能だし、100g換算で387kcalとなかなかのカロリーを持つため、ジャンクなイメージへの貢献も間違いなしだ。

体積あたりのカロリーを極力上げていくためにヨーグルトは水切りしておく。コーヒードリッパーにペーパーをセットしてヨーグルトを1パック分を全部流し込み、深皿の上に置いて2時間も放っておけば大丈夫。次にボウルへ卵黄を入れ、サラダ油を少しづつ加えながら泡立て器やハンドミキサーなどでかき混ぜる。白っぽくなったら油を足していくイメージ。で、水を切ったヨーグルトと同量になるくらいまで油を足していく。1:1だ。チャーハンは油をたっぷり使ったほうが良いと聞くが、さすがに米と油の比率を1:1にはできまい。そう、それこそがエクストラファットに貢献する乳化の力だ。

乳化した油の準備ができたらヨーグルトを全て投入し、力を振り絞ってかきまぜよう。ヨーグルトから水分が失われているので、できるならハンドブレンダーを使用すると楽だ。
ところで電動工具に充電式ドライバドリルという便利なものがあるのだが、なぜアタッチメントに泡立て器のラインアップがないのか不思議でしょうがない。コードレスだし、トルクもあるので持って来いなのだが。かきまぜ用途の工具は別にカクハン機という名前で売られており、パワーにも目を瞠るものがある。ただ如何せんこいつはデカすぎて、キッチンのボウルで使おうとすればおそらくボウルは引き裂け、中身は飛び散るに違いない。さすがセメントを混ぜるのに使えるだけのことはありそうだ。
そんなことはともかく、混ぜていくうちに表面にツヤが出てきただろうか。これで完成だ。すくい取って舐めてみると良い。

クリィィィ!!ムッ!!!

って感じになっているはずだ。これに砂糖を足し込んでいくだけでもかなりのカロリーとなり、ジャンクなイメージにぐんと近づけるのだが、今一歩足りないものがある。レッドなんとかやモンスターなんとかのようなドリンクに入っている疲労回復成分だ。今回は古来より滋養強壮に用いられているニンニクを使って栄養ドリンクに比肩しうるものに近づけていきたい。ひとかけをみじん切りにして混ぜこむので十分だが、ニンニクマシマシ、つまり成分アップしたい人はもちろん量を増やすと良い。

ニンニクを入れるならネギも欲しい。ラーメンに入っているニンニクとネギを考えてみれば相性の良いのがわかるだろう。ほかにチャイブやディルといったハーブも相性が良いので好みで足し込んで行こう。オニオンパウダーや干し椎茸をおろし金でおろしたものを加えるとさらなるうま味とコクを引き出せる。試してはいないがジャンクの旗印たる化学調味料もイケるはずだ。
最後に味を見ながら塩とレモン汁を足し込んでいく。味のボディにさらなる太さを求めるなら砂糖を少々加えるのもアリだ。仕上げにコショウでスパイシー感をマシマシしておく。

これで!イエスファットでジャンクなヨーグルトが完成だ!そのままでもうまいが、こいつをフライドポテトにたっぷりと付けて食べるのは至上の喜びだ。もちろん肉にも合う。ヨーグルトのパッケージ一つでだいたい250kcal、油を200g使うと1800kcalなので合計2000kcalオーバーだ!ダイナマイトカロリー!

だがしかし。
「ヤサイダブルニンニクアブラマシマシ」が可能な一品にするにはやはり野菜が必要。ということでサラダにもジャンクになってもらおう。

ひとまず内容物の精査から。まずはアボカド。「森のバター」とも呼ばれるカロリーの優等生。豆類もなかなかのカロリーだし何より高タンパク。そして流行を取り入れるのならタピオカがオススメ、あれは高純度の炭水化物だ。ラッシーに入れて追いカロリーとするのも良い。

今回はアボカドを使ってワカモレを作る。とはいえ作り方は難しくない。アボカドをフォークで潰し、ダイスに切った玉ねぎとなんばん、トマト、みじん切りのパクチーと和えて塩コショウで味付けするだけだ。

ステーキも使ってステーキサラダとする。サラダにはカリッとした食感も欲しいのでカリカリベーコンも載せよう。カリカリベーコンはフライパンにベーコンを敷いて中火にかけ、ひたひたの水を入れて熱し、水がなくなったらしばらく弱火で水分を蒸発させ、頃合いを見計らってキッチンペーパーの上に移して放置しておけば出来上がる。余力があるなら出来上がったカリカリベーコンに砂糖をまぶしてさらにオーブンで焼き、キャンディベーコンとすることでカロリーを追加するのも悪くない。
さて、フライパンに残った脂へバターを足してステーキを焼いていく。油分を無駄にしないように野菜をここで一緒にグリルするのも良い。ちなみに一番油を吸ってくれるのはナスだ。肉にはあまり火が入りすぎないように注意しつつ両面をきっちり焼く。15分ほど休ませて余熱で火を通す。

よし、肉ができたら一気呵成にサラダを組み上げよう。皿にリーフレタスを敷き詰め、豆の水煮缶(キドニービーンズやひよこ豆)から中身を取り出し、水洗いしたものを乗せ、その上にワカモレを敷き詰める。食べやすいように切り分けたステーキを乗せ、ベーコンとグリルした野菜を飾る。最後にイエスファットなヨーグルトをどどーんと乗っける。

もし量が多いなと思ったら、箸休め的な存在のフルーツをトッピングして飽きずに食べ尽くせる工夫が欲しい。栄養価の高いバナナもいいけれどキウイも捨てがたい。キウイは消化吸収を助けてくれるので体に取り込めるカロリーの期待値があがるという、ある意味、難消化性デキストリンの対極に位置するフルーツだ。

あ、そうそうトッピングといえばチーズだ。今回は食べ終わった後にその不在に気づいた。痛恨の極み。で、チーズはゴルゴンゾーラならヨーグルト側に混ぜるとシャープな味わいとともに奥行きが広がる。パルメザンやペコリーノロマーノがあるならこれでもかとばかりにグレーターですりおろし、サラダの上にガシガシ乗せていこう。ほかには粗めに砕いたナッツ、スライスしたゆで卵も栄養価が高く一考に値する。

よし、そんなこんなでジャンクなステーキサラダのヨーグルトソースがけが完成だ。

見た目的には全然ジャンクっぽさがなくて拍子抜けする人も多いだろう。しかしカロリーは3000kcalを突破しており、ニクヤサイダブルニンニクアブラマシマシともすれば4000kcalを軽く凌駕するはずだ。このカロリーこそはヨーグルトとサラダという免罪符の裏に刻まれた叛逆の証。センパーファイ!カロリーに忠誠を!!


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