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東京微分2

東京は梅雨空が広がっていて、日に何度か雨が降る空模様。それでも、暑さの苦手な自分にとってはあまり気温が高くならない今年の天候はありがたい。雨が降ると少し気温が下がるのがしっかりと感じられて心地よい。

今回の滞在は長くない。とりあえず渋谷のミッケラーでブラウンエールとブロンドエールをあおり、隣の「なぎ」で夏酒を飲む。ここは開店して間もない頃から事あるなしに関わらず通い続けているお店。もともと長居する飲み方をしない自分には立ち飲みというスタイルがぴったりなのか、気がつくとここに来ていることが多かった。もっぱら野菜や刺身を切ってもらい、それを肴に40分ほど、三、四杯飲んだら店を出る。置いてある日本酒はほぼ福島のもののみだ。しかし福島は想像以上に酒蔵が多く季節酒もかなりのラインアップときているので、とてもではないが全種類など制覇できそうにない。もう自分で選ぶのは諦めて、勧められるがままに飲むことにしている。

別の日に神楽坂へ行ってみると、近く祭りが始まるようで提灯が所狭しとぶら下げられている。伊勢藤で温燗を傾けつつこれは神社の祭りなのかと店主に聞いてみると、そうではなく商店街の祭りとのことだった。月末に開催され、ホオズキも売られるとのこと。
そうだ、鬼灯の季節じゃないか。例年7月の9日、10日には浅草で鬼灯市が開かれる。ということはその前の三日間、入谷で朝顔祭りが開催されているはず。と、早速翌日に入谷へ足を向ける。小雨の降りしきる中を歩き着いてみれば、まだ歩行者天国になる前の時間でさえ朝顔を買い求める人たちですでに大にぎわい。とはいえ朝顔というだけあって朝も10時を過ぎると花の多くはやはりしおれてしまっている。何せ日没9時間後に花を開き昼前にはしおれるのが日本の朝顔。それでも日々新しい花を付けていくのを見られるのは嬉しい。

団十郎という、市川團十郎にゆかりがあるという少しくすんだ小豆色っぽい朝顔を探して実家の母親へ送る。ビビッドな色の花よりも少しくすんだ淡い色合いのものが好きだ。花そのものだけではなく、周りの雰囲気を綺麗に見せてくれるのがこういう色合いの花の良いところ。

その後、少し歩いて隣りのかっぱ橋へ。こちらもまた祭りである。七夕祭り。すでにたくさんの人でごった返していたので祭り自体はやり過ごし、はし藤で極細の箸を、かなやで棕櫚のたわしを、あとは田窯で壁掛けの花入れと角皿を買う。本当は釜浅商店で手打ちの八角鍋も欲しかったのだけれど、少しばかり嵩張るのでそれはまた、別の機会に。

さてと、昼時。

雨も上がり、上野へ戻る途中に稲荷町で天三の暖簾をくぐる。食べたかったのは琵琶湖産の稚鮎の天ぷらだ。頭からかぶりつけるし、清涼感すら感じられるワタの苦味も楽しめるという、酒飲みにとって至高の逸品。特にこの時期の鮎は梅雨を飲んでうまくなると言われている。さっそく天ぷらを盛り合わせてもらい、ビールで涼む。ギュッと味の詰まった天ぷらを天つゆや塩でサクリサクリとやり、サッポロで流し込む。

その後上野に着いて大統領でダメ押しにもう一杯。ここで働いている人たちはみんなチャキチャキと仕事をこなしていて、見ていて本当に気分が良い。下町のデキるお店といった風格があって大好きなお店だ。いつも頼むモツ焼きの盛り合わせ、あとは旬の穴子の白焼きをツマミにビールと熱燗を幸せに浸りながらいただく。熱燗は魔法瓶に入っているのも良いし、角七酌になみなみと表面張力の限界を突破するまで注がれるのも良い。

アメ横の大津屋で豆やスパイスを仕入れて帰途につく。上野公園の不忍池一面に広がるハスは蕾が大きくなっていて咲いているものもちらほらと。透明感のある花は梅雨時のどんよりとした空に映える。

いつもなら蒸し暑さに負けて外を出歩くことのない今時期の東京だけれど、今回はそれなりに楽しめた。次に行くときもあまり暑くないとありがたい。

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