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夏に萌える|2021年 夏競馬回顧1(カレンモエ、ザダル、ハイアムズビーチ、ハギノ×藤懸)

北海道のファンファーレが鳴り響き、新緑の洋芝が画面いっぱいに映し出されると、北国の涼やかな空気が流れ込んできたような錯覚を覚える。
宝塚記念を残すが、上半期の競馬はほぼ一段落。夏競馬がやってきた。

G1シーズンの華やかさも良いが、夏競馬独特の、特定の場所にフォーカスが定まらないこその緊張感が好きだ。
午前中のレースもメインレースも等しく熱気を帯びていて、トリッキーなコースは見どころに溢れ、いろいろなところに宝物が落ちている。
ジョッキーは日本各地に散らばって当地のリーディングを争い、生き残りを賭けた3歳未勝利戦の明暗に拳を握り締め、新種牡馬のリーディング争いに次代を夢見、暑い時期も休まず戦う馬から秋に飛躍する馬を探し、洋芝巧者や千直巧者の狙いすました走りを堪能する。
こんな状況じゃなければ、日本各地を旅して回りたくなる。

今週からは、そんなよもやまの中から幾つかを拾い上げたい。

1.カレンモエに萌える/2021年 函館スプリントS回顧

函館スプリントSのカレンモエはわずかに及ばずの2着。京阪杯、オーシャンSに続き、またしても重賞タイトルに僅か手が届かなかった。
パドックで見ていると、少し硬さがあってマッチョなスプリンターの中に交じると華奢でかわいらしく映るが、レースセンスはいつも実に素晴らしい。
前を行くビアンフェと直後に控える強豪スプリンターに挟まれて難しい競馬になったが、仕掛けのタイミングやコース取りにミスはなかった。ただほんの少しだけビアンフェが強かった。ライバルをビアンフェ一頭に絞って動けば捉えられたかもしれないが、そうなれば今度はまとめて後ろにつかまっていただろう。油断ではなく展開の綾。勝負の天秤はいつも気分屋だ。

次走はセントウルSと聞く。灼熱の夏、難しい調整が続くが、報われる日を待ちたい。

勝ったビアンフェは洋芝巧者ぶりを遺憾なく発揮。カレンモエとは対象的に重厚感のある馬体で行き切れば止まらない。
函館2歳Sを勝った馬が古馬になっても活躍するケースはあまり記憶になく、その成長力には舌を巻く。
本馬のように特異な活躍馬を輩出できるのがキズナの血筋であり、あるいは姉ブランボヌール共々、ノースヒルズの血統の力なのかもしれない。

2.ザダルの矜持/2021年 エプソムC回顧

G1の合間の東京芝1800m戦。手ごろな条件ということもあり、例年思わぬ強豪の参戦があるが、今年は昨年のクラシック戦線を賑わせた4歳馬、遅れてきた大物を名乗りたい4歳馬、復活を期す5歳馬等、春のG1をパスしたセカンドグループの有力馬たちが一堂に会した。
殆どの馬に勝利のチャンスがあるかにも思える豪華メンバーが集う一戦となったが、3歳時にはダービーをパスして成熟の時を待ち続けたザダルが、意外なほどの完勝ぶりを見せた。

戦績から才能は疑いようがないが、デビュー戦の出走取消やプリンシパルS直後の経度の脚部不安、毎日王冠後の骨折等、これまでどこかひ弱さが残り、順調に行かなかった本馬。
ハードルを乗り越える度に力をつけており、精神的に強い馬なのだろう。
父トーセンラーも大輪を咲かせたのは5歳秋。一線級の壁は高いが、今日のハイレベルG3を勝ち切れた意義は大きく、G1を争覇していく資格は十分にある。本馬の秋の挑戦にも期待したい。

2着サトノフラッグも不振を脱するキッカケには十分。3着ファルコニアもこのメンバーと伍した経験は糧となるだろう。4着ヴェロックスも伸びないインをこの数走続いた気の無い走りからは一変を見せている。5着アトミックフォースも地味ながらも堅実に駆けを続けており、ローカルG3くらいならいつでも手が届くところまで来ている。
今年のエプソムCで集ったメンバーたちがサマーシリーズの灼熱の戦いでの主役を演じるのではないか。そんな期待を持たせる一戦だった。


3.ドレフォン、藤懸×ハギノ

種牡馬ドレフォンはStorm Cat系のダートスプリンターで、おそらくはディープ牝馬との配合を強く意識して本邦に導入されたが、初勝利はBMSにクロフネを持つ白毛一族のハイアムズビーチだった。
セレクトセールや各クラブの募集が始まる段階で、東京芝コースで勝ち星を挙げた意義は非常に大きく、加えてそれが否応なしに注目される白毛一族で成し遂げるのだから、”持っている”種牡馬である
ハイアムズビーチ自身は、血統表を見たときにはゴツゴツしたタイプかと思いきや、広い府中を伸びやかに気分良く駆けていた。スピードを活かした競馬で如何にも持ち味が活きそうで、ソダシに続き、今度は短距離~マイル戦線を本馬が盛り上げていくかもしれない。

そしてこのレースで2着だったのがハギノモーリスと藤懸騎手。
惜しくも敗れたが、調教の良さから一番人気に押され、果敢にハナを奪い、モーリスの特性を活かした積極的な競馬だった。
馬主、厩舎、騎手の組み合わせはオークス3着だったハギノピリナと同じ。おそらくハギノピリナから紡がれた縁だろう。
かつて酒井学騎手を救い出したニホンピロと同じく、藤懸騎手にとってこのオーナーとの縁は、ターニングポイントになるかもしれない。(それが古くから競馬界を盛り上げてきたハギノであることもうrしく)
藤懸騎手はこの日2戦2着2回と気を吐いていた。デビュー11年目、実に充実したシーズンとなっている。どうせならこれが序章に過ぎぬことを期待したい

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