雇用を守ってもユートピアには至らない

古来より人々の夢はユートピア(理想郷)にありました。そこはおカネを稼ぐためだけにおこなう無味乾燥な労働から解放され、人々が自らの関心や興味だけで、自由に活動できる社会でしょう。こうしたユートピアはSF小説としては、高度な機械文明に支えられた社会として描かれてきました。たとえば人工知能を備えたロボットが人間の代わりに、労働を担う社会です。

そして今日、人工知能の飛躍的な進化と完全自動生産工場の実用化がいよいよ現実味を帯びてきました。人間が無意味な労働から解放されるユートピアに近づきつつあるわけです。ところが、こうした状況にあって、これを労働から開放されるのではなく、「労働を奪われる危機」という話になってきました。人工知能やロボットによる技術的失業問題です。

一方で「雇用を守れ」などと騒いでいる政党があります。こんな意味不明のことで騒ぐ状況では、人間が労働から開放される日など永遠に来ません。雇用を守っていても、ユートピアは永遠に実現できないでしょう。

「雇用を守るのではなく、雇用を必要としない社会を実現する。」

本来、左派であれば、そう主張すべきだと思うのです。もちろん、明日からすぐにそうすべきという話ではありません。理想をビジョンとして掲げ、ロードマップを描くことは理想の実現に不可欠なことです。ビジョンとして「雇用を守れ」ではなく「雇用を必要としない社会の実現」を堂々と掲げていただきたい。そのためには、コンクリートへの投資でも人への投資でもなく、未来技術への大規模な投資が必要です。公共投資が悪、などといっているようでは話になりません。

一方、与党・自民党は雇用も守らないし、雇用を必要としない社会の実現も目指していない。これではまったくダメだと思います。雇用を守る必要はありませんが、それは「雇用を必要としない社会を実現する」という文脈において有効であって、ただ単に雇用を市場原理に任せるのでは不幸を増やすだけです。

つまり、もはや左派政党も自民党も、基本的な考えが時代遅れであり、科学技術の飛躍的な進化が描き出す未来へのビジョンが何も感じられないのです。どちらも前世紀のかび臭い政党です。人工知能の飛躍的な進化と完全自動生産工場の実用化がいよいよ現実味を帯びてきました。ユートピアに近づきつつあるのです。

「雇用を守るのではなく、雇用を必要としない社会を実現する。」

これを打ち出せる政党があるならば、支持したいと思います。

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