APEXブラハイベント「古の理、新たな夜明け」の考察

考察の前提となる情報の主なソースは公式の動画「アウトランズ・ストーリーズ」と公式の書籍「パスファインダーズ・クエスト」です。詳しくはそちらを参照してください。

1 生い立ち

まず、ブラハの生い立ちを知っている必要があります。ブラハは幼い頃、「新たな夜明け」と名付けられた施設のメルトダウンによりエンジニアであった両親を失いました。ワールズエッジのエピセンターがそのメルトダウンが起こった場所です。
ブラハもメルトダウンに巻き込まれましたが父方の叔父アルトゥルに救助され、そのまま叔父の下で育ちます。アルトゥルは北欧神話に由来する思われる神々を崇拝する土着信仰に基づいて生活する狩猟民族の長で、科学技術を使うことを拒否していました。ブラハは成長し、あるときアルトゥルから一人で狩りをする試練を課されますが、道中で見つけたチャーライを使ってしまい、「古の理」に背いたとして追放されます。
その後、色々あってブラハは自分の狩人としての力をアルトゥルや仲間に示すことができましたが、その過程でアルトゥルは死んでしまいます。アルトゥルは死に際にブラハに対して「お前が最初のブロス・フゥンダルとなれ」と言い残しました。ブラハは部族の長になり、仲間に科学技術を用いた道具を少しずつ受容させるなどリーダーとして部族を率いていきますが、アルトゥルの死についてずっと責任を感じていたと思われます。

2 ブーンとの出会い

さらに成長したブラハは、ブーンという名の人物に出会います。詳細は不明ですが、ブーンは様々な場所を巡って狩りをしたり戦ったりして戦利品を集めていたようです。ブラハとブーンは一緒に狩りをするうちに親しくなり、ブラハはブーンに対して特別な感情を抱くようになりました。
しかし、ある狩りの中でブーンがブラハたちが信じる狩りのルールに基づけばフェアではない方法で狩りをしたため、ブラハは激怒します。その後不運が重なり、ブラハとブーンはきちんと話し合うことができないままにブーンは自身が捕らえた獲物にブラハの目の前で殺されてしまい、その獲物も周りにいた人々により無残に殺されてしまうという結末を迎えます。
ブラハが信仰している宗教ではヴァルハラという死後の場所があって、これは北欧神話では選別された戦士の魂が行くところのようですが、フェアではない狩りをして命を落としたブーンはそこに行くことができないとブラハは思いました(なお、ブーンの死についてもブラハは自分の行動が一部原因になったと思っていた可能性があります)。
そこでブラハは、自分がブーンの分も沢山真っ当な戦いをして徳を積み、ブーンがヴァルハラに行けるようにしようと決意しました。ブラハがAPEXに参加してるのもこのためです。ブラハのゲーム内の台詞に「愛しきブーンのために。ヴァルハラの聖堂でまた会おう。」というのがありますね。

3 イベントの第1章~第3章

さて、ここまでが前提知識です。だいぶ端折ったのに長いです。
今回のイベントは、ブラハの故郷であるワールズエッジにて、例のメルトダウン後に代替施設として建設されたハーベスターでの採掘が原因で、シーズン10になって地殻変動が起こり地面が割れてマグマが流れ出ている場所(エピセンターからクリマタイザーの辺り)ができたことに端を発します。
ブラハはこの地殻変動がハーベスターでの無茶な採掘のせいだと理解していてこれに対して憤りを感じていましたが、同時に、これは神々が怒っている証でその原因は自分にあるのではと考えはじめて精神を病んでいきます。これは、シーズン10になってから追加されたブラハの台詞から推測されます。
そんな時、ブラハは今回のイベントの白いカラスをワールズエッジで見つけ、そのカラスは傷付いたプラウラーの痕跡へとブラハを導いているようでした。追っているうちにカラスから叔父アルトゥルの声が聞こえてきます。最初に聞こえたのは「先祖に背を向けるか」という言葉です。これは英語版では"Have you chosen exile"で、過去にブラハがアルトゥルから追放された時に言われた言葉です(この台詞の日本語訳はアウトランズ・ストーリーズのものと異なるため最初は同じ言葉だと気づきませんでした)。
これを聞いたブラハは、アルトゥルが自分に対して怒っていると考え始めます。イベントでは第1章~第3章までカラスを追い続けて、その痕跡からブラハはプラウラーが大きな怪我を負って苦しんでいることを知ります。それと同時に、ブラハを責めるアルトゥルの声は増していき「全てはお前の選択だ」「お前は唆され、命を繋いできた叡智を拒絶したのだ」などブラハを咎める言葉が続きます。

4 イベントの最終章

イベントの最終章でブラハはドロップシップに乗って通常では行けないワールズエッジの高い山の中に入り、そこで戦いに負けて深く傷ついて横たわるプラウラーを見つけます。プラウラーに近づくとブラハの目の前の光景が変わり、何人ものブラッドハウンドが現れて、「母親と父親を裏切って」「故郷を見捨てたのだ」「お前は無力だ」などさらにブラハを責める言葉を浴びせてブラハは苦しみます。
しかし、やがてブラハはその声を否定して、「主神は両親を、ブーンを、私を、全て導いてくれる」「他人の過ちの責任を取ることは神々のやること」「私は神ではないだが無力でもない」「私の名前はブロス・フゥンダル」と言い放ちます。
すると、ブラッドハウンドたちは消えていき、目の前の光景は先ほどの傷付いて横たわるプラウラーのいる場所に戻りました。ブラハはプラウラーをゆっくりと撫でながら「同士よ、お前の苦痛を止めることは私にはできない」「美しき獅子よ、ヴァルハラに旅立ち、安らかに眠るといい」「お前はもう一人ではない。私はお前とともに、そしてお前は私とともにいる。永遠と。」と言い、これでイベントは終わります。

5 考察

ブラハが白いカラスを追跡していた道中に聞こえていたアルトゥルの声ですが、一番最初のセリフ以外は、少なくとも私が知る限りではこれまでに出てきたアルトゥル本人の言葉ではなく、アルトゥルが亡くなった時の言動からしてもアルトゥルがブラハに対して言うはずがない言葉です。ここから、白いカラスから聞こえてくるアルトゥルの声は、ブラハの幻聴であるという推測をすることができます。
カラスの声が幻聴だという推測を前提にすると、最終章でブラッドハウンドが沢山出てきてブラハが責められる部分もブラハの幻覚・幻聴の可能性が高いです。ブラハは、アルトゥルの死やブーンとの出来事についてずっと自責の念を抱いており、ワールズエッジの地殻変動を見て神々が自分に対して怒っていると感じて、自責の念に耐えきれなくなったのだと思います。
そんな時に白いカラスが導く傷付いたプラウラーの痕跡を見つけ、ブラハはプラウラーに自分自身を重ねていたのかもしれません。もしくは、これまでに「自分のせいで」死んだ者たちを重ねていたのかもしれません。しかしやがてブラハは幻覚・幻聴に打ち勝ち、ブロス・フゥンダルを名乗りました。「ブロス・フゥンダル」は「ブラッドハウンド」の現地語版だと思いますが、アルトゥルの死に際の言葉から推測すると栄誉ある狩人に与えられる称号であると思われます。そして、ブラハが最後にプラウラーに対してかけていた言葉は、命をかけて戦った者に対して同じ一つの命を持つ者としてかけた敬愛の言葉です。
この一連のシーンは、ブラハが取り返しのつかない過去の過ちや他人の過ちから解き放たれ、自分はただ誇りを持って戦う一つの命であると自覚したことを示しているのではないかと思いました。ブラハはブーンへの想いと自責の念からAPEXで戦っていましたが、これからは自分自身のために戦うようになるのではないかと思います。
最後にイベントのタイトルですが、「古の理」はこれまでブラハたちの部族が遵守する狩りの掟を指す言葉として登場しており、今回もそのままの意味で解釈していいと思います。しかし「新しい夜明け」というのは例のメルトダウンを起こした施設の名称としてこれまで使われていましたが、今回はその意味(固有名詞)ではなく、通常の意味としての新しい夜明けを意味するのではないでしょうか。つまり新しい夜明けがブラハに訪れて、これまでとは違う未来が始まるというポジティブな意味なのではないかと思いました。

*終わり*


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?