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リベラル・エリートの作り方:アメリカはなぜ騙されたか?❸

手が届く成功、アメリカンドリーム48

アメリカで”高給”は日本ほど難しくない

アメリカを語る前に・・・まず、日本の給料はかなりおかしいです。日本企業に勤める従業員は総じて、もっと給料をもらって当然の能力、そして、仕事に対するロイヤリティを持った働きをしていると断言できると思います。ですから、これからシェアさせていただく、アメリカ人の給料は、もしかすると、私が比較対象とする日本人の給料が安すぎることの影響も関係していることではあると思います。

とはいえ、アメリカで働いていて思うのは、同じ職種、同じ肩書きの一般職〜中間管理職くらいであれば、アメリカ人は日本人の2〜3倍の給料を50〜80%くらいの就業時間で稼いでいる!と言っても過言ではない気がします。経営幹部クラスになると、給料の”ケタ”が遥かに違ってくることはご存知かと思いますが、正社員だけではなく、アルバイトの給料も全然違います。例えば・・・。

カリフォルニア州の最低賃金は今年1月から、時給15ドル!

1ドル100円計算でも1,500円、3月22日のレートである1ドル132円で計算すると、約2,000円です!

世界の物価比較でよく使われるマクドナルドのクルーの時給ですが、日本の中でも高そうな立地にある銀座二丁目店での募集は、1,200円以上とのことでしたが、カリフォルニア州の中であれば、ロサンゼルス等の都市部でなくても、最低時給が2,000円ということになります。


念のため、これはあくまで州政府の定めた”最低賃金”ですので、すべての職種、仕事で最低でも時給15ドルはもらえることが確定しており、人不足が指摘されるアメリカ市場では、これに”上乗せ”がなければ必要な従業員を確保することが難しくなっています。昨年4月には、ウォルマートが自社のトラック運転手に対し、初年度から最高で11万ドル(約1,460万円)の給与を支払うと発表したことが話題になりました。

リベラル州はなぜ、最低賃金の引き上げに熱心か?

インフレが止まらないとされている中、カリフォルニア州、ニューヨーク州をはじめとする23州が2022年12月〜2023年1月にかけ、最低賃金を引き上げました。

物価上昇と同じ割合だけ、最低賃金を引き上げた州もあるようなのですが、この対応は少し微妙ではないかという気がします。最低賃金の引き上げは、商品やサービスの価格をできるだけ抑えようとしている企業にとっては、高騰した人件費を、価格に転嫁せざるを得ない状況を作り出してしまうのではないかと思うからです。

というのは、そもそも、アメリカは日本よりも給料の額をめぐる交渉をしやすいという環境にあります。

アメリカでは”数年ごとの転職”というのは、そんなに珍しいことではありません。転職の都度、高い給料を要求し、給料を上げていく・・・のが一般的に正しいとされる転職活動方法です。強者になると、入社予定日の前日に、「別の仕事が決まったので」等の理由を伝え、内定を辞退し、相手が決まっていた額よりも多くの給料を出してくるなら入社する・・・みたいな話も。これは学校でも起こる話です。アメリカの学校は教師の給料は、担当科目や経験等によって異なりますので、新学年が始まる直前に、担当が決まっていた教師が別の学校からのオファーを受け、急遽いなくなるということは、特に驚かない話であると言います。

特に現在のアメリカは人が不足している状態ですので、政府介入がなくとも、人材がどうしても必要な業界は、賃金を上げる必要が出てくるからです。

例えば、日本円にして1千万円以上の給料を出してでも人を雇いたいというトラック業界は、2021年の時点で、不足している運転手は約8万人と言われていました。その後、トラック運転手に課されたワクチン接種義務化騒動で、さらに減っていると考えられます。ただ、このような状況を受け、新たにトラック運転手を目指し、教習所に通う人がいる(教習所にたくさん人が集まっている)というような話もありましたし、カリフォルニアでは、選択科目にトラックの運転を取り入れた高校(職業訓練校ではない普通校)も出てきたようです。社会に必要とされる技術を取得することで、安定した職業や、高い給与が可能になります。

最低賃金を一律で上げていくことは、人件費の高騰化につながり、さらなる物価高を招くことになりかねません。政府としては、最低賃金を闇雲に上げるのではなく、社会が必要とする新しい技術を学ぶ機会を得るサポートをしていく方がインフレ問題の解決につながるように思うのですが。

というところで、この章のタイトル、”最低賃金の引き上げに熱心なのはリベラル州”です。リベラル州は物価高なところが多いので、最低賃金を上げたがるのか、最低賃金を上げてしまうから、物価高に拍車がかかるのか・・・・わかりませんが、現米国政権を見ても、”税金として回収した大量のお金を社会にばら撒く”傾向にあります。リベラル・・・に見せかけた共産政権、言い換えれば、彼らが目指すのはより大きな政府ですから当然といえば、当然ではあるのですが。

家賃やローンが払えずに車中生活を余儀なくされている人や、ホームレスが急増したりしているのも、リベラル州での方がよく聞く話ですし、モノ不足がより深刻なのも、リベラル州のような気がしています。リベラル・エリートは弱者に優しいという建前になっていますが、実際に彼らの政策がもたらしたものを見てみると、弱者をどんどん増やしているに過ぎないような印象しかありません。”弱者支援”のもとに政府依存を高めていき、コントロールしやすい人をモゴモゴモゴモゴ・・・。

とはいえ、最低賃金や平均賃金の高さは、実情をあまり知らない人に夢を抱かせます。中南米からカリフォルニア州やニューヨーク州を目指してくる人は、同地で職を得ることが得るならば、それがたとえ最低賃金であっても、自国では稼ぐことが難しい金額が稼げるということがモチベーションになっているのではないでしょうか。自国では不可能なほど高額な給料に手が届く国ーーそのような”ドリーム”はいまだにアメリカに存在します。とはいえ、このアメリカンドリーム、何となく昔のそれとちょっと違うような形になってしまったように思うのです。

アメリカンドリーム48とは?

私たちが”アメリカンドリーム”と聞いて思い浮かぶのは、さまざまな苦難にも負けず、夢を叶えるための努力を続けた人だけが辿り着けるサクセス・ストーリーだと思います。しかし、”アメリカンドリーム48”は、少し違います。

より少ない投資でより大きな回収をすること

元々のアメリカンドリームで必須アイテムとなっている”努力”ですが、アメリカンドリーム48では、”努力は、より少ない方がよりスマート”という扱いになります。なぜこのような違いが生まれるか?といえば、誰も考え付かなかった分野を開拓して行くという未知へのチャレンジが、アメリカンドリームの目指すところですが、一方のアメリカンドリーム48の方は、”権威のいう正解”を重ねて行く中で到達できる”一番稼げるところ”を目指すからです。と言うことは、つまり・・・

アメリカンドリーム48は、リベラル・エリートになること

リベラル・エリートとは、このコラムでは、共産主義利権に肖りたいと考えている高額な給料を受け取り、尊敬されるような仕事をしている人たちを指しています。思想的にはリベラル(左翼)に見えますが、思想に対して強いこだわりがあるわけではなく、”スマートに見える”思想を好む傾向が多い人たちです。思想に対するこだわりが少ないため、ダブスタも気になりません。彼らの価値観に基準があるとすれば・・・

”稼げる”が正義

です。リベラル・エリートになることは、一見難しいことのように思えます。しかし、アメリカンドリームを掴むよりは随分簡単で確実。なぜなら、”権威がいう正解”というリベラル・エリートにたどり着くルートが見えているからです。

その重要なルートの1つが評判の良い大学を卒業し、
できるだけ上位の学位を得ること。

そして、ここにたどり着く最短ルートを歩みたければ、”自分で考える”を放棄することです。一般的に学ぶことの意義は、”自分で考える”力を深めたり、広げたりすることにあると思うのですが、リベラル・エリートにとってのそれは、”正しい答え”を手に入れることとなります。彼らにとって、一番怖いものが間違えることです。間違えることは、遠回りさせられてしまうように感じるからでしょう。そのため自分で考えるよりも、より高い知識やスキルを持った専門家や権威の意見に従います。その方が間違いが少ないと思うからです。

次章では、私がなぜこのように考えるようになったのか、リベラル・エリートとのエピソードを交えながら、アメリカンドリーム48についての深掘りをしてみたいと思います。

本家48もアメリカンドリーム48も”稼げるが正義!”

本家48ビジネスモデル、行き詰まりか!?

本家48ビジネスというのは、手が届くアイドル系のアレです。コロナで握手会ができなくなったことで、CDの売上が上がらないというような話もあります。とはいえ、ここで本家48ビジネス・モデルが良くなかったというような批判をしたいわけではありません。”仕掛けられたビジネス企画”というのは、マジック効果が薄まれば廃れていくのが当然です。

48のビジネスモデルというのは、多くの人がCDを買いたくなるような音楽を売ることではなく、握手会や”推し”の育成ゲーム的な感覚の人気投票等の特典に対して、”CD”という通貨を買うようなものかと思います。48系のグループのCDは、すごいセールスを記録しているわけですが、48系にとってのCDは通貨のようなものですので、通常のCDセールスと意味合いが少し違うーー48の歌が売れているというのは幻想ではないかーーと、思います。とはいえ、何も批判しているわけではなく、ここ十数年間の日本マーケットでは、大成功したビジネスモデルの1つだと思います。ただ、従来のCDセールスとは意味合いが違うよねということが言いたいだけです。

”学ぶ”という投資は、利益回収が前提

さて、ここで本題のアメリカンドリーム48についてです。

まず、アメリカ人は、お金にならない資格は取得しない傾向にあります。日本では、野菜ソムリエや温泉ソムリエ、アロマ〜、世界遺産〜等々、仕事のためではなく、自分の余暇を充実させるための資格が人気ですが、アメリカではほとんど聞きません。資格についての広告も、「資格取得後、〜%の人が給料が〜%アップした」というようなことが強調されているようです。

コロナ騒動が始まった頃、どうせ家で籠るなら、今後AIが私の仕事にどんな影響を与えるのか?を探るためにも、Pythonを学んでみようかなと考えたことがありました。家庭菜園に、自動で水をあげたり、屋根が降りてくるような装置が作れたら楽しいんじゃないかとも思いました。なのですが、同僚や友人からの「やめておけ」という声が大きくて驚きました。

(左)友人、(右)私
「プログラマーに転向したいのか?」「いいや」
「じゃあ、学ぶ意味がない」「趣味レベルでかじるだけだよ?」
「そんなの意味がないし、無理だ」「えっと、私、Webサイト制作やC言語を趣味レベルで学んだことあるけど、全く意味ないとは思っていないんだけど・・・」
「え?じゃあ、プログラマーになりたいの?」「いや、そういうわけではなく・・でも、Webサイトの制作について大方でも知っていることで、サイトを発注したりチェックする際に役立ってるけど」
「そういうのは、専門の人に任せた方がいい」「その”専門の人”のデバッグが甘すぎるから、問題が発生した時に役立っているんだけど・・モゴモゴ」

一方で、同じ友人グループの中にいた、「知らない人と話すのが嫌だからカスタマーサービスをやめて、プログラマーにでもなろうかな?プログラムって学ぶの大変?今更、勉強するのは面倒だけど、プログラマーになれば、人と話す機会減るよね?」という友人に対しては、彼がどの言語を学んで、どんな仕事をしたいのか?について全くビジョンがない段階にも関わらず、「〜のコースを受ければ、〜ヶ月でマスターできて、〜の仕事だったら、給料は〜くらい」みたいな情報がどんどん提供されていきました。

え?何?この超絶後ろ向きな感じの”プログラム学ぼうかな”は、かなりみんなが乗り気なのに、私が趣味程度にPythonを学ぼうかなというのはそこまでダメ?

何を反対されているのか、最初はよくわからなかったのですが、その後、私が今の職種に関連しそうな別の資格を取った際には、同じメンバーがとても喜んでくれました。

”何かを学ぶ際にも、利益回収予定のない投資は、避けるべき”
というのがここでの賢い生き方

なのだと思います。

”学ぶ”という投資は利益回収が前提なんだなと思った別のエピソードは、高校生の子どもを持つお母さんたちと、”大学の専攻を子どもが決める際に、大人はどのようなサポートをするべきか?”を話していた時にもありました。

「娘が文学や歴史等、高給が期待できる仕事に就くことが難しい学問を専攻したいと言っていたので、それはマイナーとして学び、メジャーは仕事ありきで考えるよう、アドバイスしている」

大学の専攻が職業選択に与える影響は、日米で少し事情が異なり、メジャーは就ける職業にかなり関係してきます。管理職を目指すのであれば、やはりMBAは持っていた方がいいということで、仕事をしながらでもMBAを取得しようという人はいます。理系の修士や博士を持っていても、MBAを取得する人も少なくありません。このような学歴は、アメリカではすぐにわかります。なぜならメールの署名欄には、会社名、部署、肩書きのほかに、MBAやDr.等のタイトルも付けられるからです。

”学ぶ”にかけた投資は回収できるか?:リベラル・エリートあるある

「仕事をしながら、MBAを取得しようと勉強をしているなんて、アメリカ人ビジネスマンはさすがだ!日本人も見習うべき!」と、日本メディアなら報じるでしょう。ところが、MBAを取得することで仕事力がアップするか?といえば、マネジメント方法について知っていることと、マネジメント力が高いことは全く別問題ですし、MBAホルダーになると、高いビジネスセンスや、マーケット分析能力があるのか?といえば・・・。人によるというのが大前提である上で、MBAホルダーの多くは、プレゼンやパワポの見せ方等はすごいなと思いますが、私個人としては、アメリカの会社で勤務するようになってから、MBA取得の意欲は全くなくなりました。
その理由は色々あります。

「MBAどうよ?」と思った、最も強烈な体験の1つに、中国ビジネスを拡大させたいという上司との1on1ミーティングで、

「(中国)共産党とのコネクション、ない?」

と尋ねられたことがあります。私はアメリカの前は中華圏にいました。それで中国ビジネスについて色々聞きたいということだったのですが・・・。こんな質問を上司、それも取締役と2人っきりの場面で尋ねられるというのは恐怖でしかありませんでした。

え?もしかして、私スパイ容疑かけられてるの?

実際、テキサスでも、スパイ容疑をかけられた中華系教授が家族を置いて突然、一人で中国に帰国するということもありました。日本はスパイ天国なんて言われてしまっていますが、アメリカにもたくさんいると言われています。現在のスパイ戦略?は、必ずしも自国民を相手国に送り込むのではなく、相手国の使い勝手の良い人物をスパイとしてスカウトする方が主流だと言われています。私自身に何かすごい特殊技能や知識があるわけではありませんが、中国人の友達は多く、会社でもよくご飯に行ったりしていたので、何か変な疑いがかかってる?と。

しかし、どうやら上司が知りたかったのは、「中国でもっと儲けたいんだけど、共産党のルートがあると、もっとビジネス拡大しやすいんでしょ?」ということだったようで、これにはかなりドン引きしました。

ドン引きした理由は大きく2つあり、第一に、基本的に”おいしい話には裏がある”なんて、経営者ならずとも用心するべきことです。共産党員とのコネクションがあれば一時は甘い汁を吸わせてもらうことができます。しかし、どんなに相手と親しくなったつもりでも、あちら目線では、”使えるコマが増えた”に過ぎず、不要となればいつでも最悪な形で尻尾切りされるのが中国ビジネスの常です。コネクションのあった共産党員が失脚すれば、それとともに事業が潰されてしまうことも、中国ビジネスあるあるです。

さらに、その会社で取り扱う商品は、2015年に発表された産業計画”中国製造2025”の中で、中共がこれから最も力を入れていきたい分野のものでした。”産業計画”といっても、中国では”海外の技術をまるっと頂戴する”という手法もそこに含まれています。親しくなった共産党員のおかげでビジネスを拡大できた!と喜んでいるうちに、重要な技術が社外に持ち出され、気がつくと、同じ技術を持った中国企業が誕生し、そちらのビジネスに圧倒されていた・・・なんて話も珍しくない話です。それどころか、トランプ政権時代には、このような企業はアメリカ企業であっても、アメリカでのビジネスが難しくなるということもありました。

おいしい思いをしようと中国に進出しても、よほどの対策をしない限り、技術を盗まれた上、従業員にスパイ疑惑をかけられ、お金や情報を没収され・・・という懸念も。今、拘束されている日本企業の従業員がいるようですが、あの企業は元々かなり、共産党と繋がりがあったところじゃなかったっけ?・・・みたいなことも・・・中国ビジネスあるあるです。

中華圏で働いた経験がなくとも、全て英字メディアでも報じられていることですので、どこから説明して良いのやら・・・と。

別のMBA所持のビジネス戦略部の部長は、アメリカ人にとっても高額である程度の所得がなければ、購入を躊躇うような高額製品を世界展開しようとしていたようで・・・。ある国で商品展開を行おうとすれば、市場リサーチは必ず必要になってくるわけですが、”あった方が良いものの、必ずしもマストではないもので高額”という商品特徴を考えると、リサーチするまでもなく、ターゲットから外れてくる国が出てきます。そのような”ターゲットから外れた(と思われる国)”対し「○○はブルーオーシャンだ!」と強気の姿勢でしたが、他社が商品展開していないのは、投資しただけの回収がどう考えても見込めないからじゃないかなと、思いつつも・・・。部署の違う私も、日本語がわかるというだけで、日本のリサーチを頼まれ、作成していたものの、その部長は在籍半年足らずで転職し、部長の退職とともに、世界展開プロジェクトはいつの間にか消えたのでした。

プロジェクトが消える”ことに対する愚痴は、友人が集まった時に度々出る話です。アメリカは基本的に”引き継ぎ”という概念がありません。退職した人が担当していたプロジェクトは、その人の退職を持って終了ということが多々あります。「手がけているプロジェクトが完成してから辞めよう」なんて考える人はおそらくいないのでは?と思います。さらに、州にもよりますが、テキサス州では、当日解雇・退職が認められていますから、ある日突然、退職者とともに、プロジェクトが突然終了されることはよくある話なのです。

プロジェクトが消えて困るのは、残された人々です。年1の給料交渉に使うための成果報告の際に、時間と労力を費やしたにも関わらず、プロジェクト自体が途中消滅してしまうと、成果として微妙・・・(本来、プロジェクトが消滅すれば、”成果はなし”だと思うのですが、諦めずに自己アピールするのがアメリカ流のようです)。

一方で、どうしてそんな本当にMBAをとったかどうか怪しい人たちが経営幹部として次から次へ職を得ることができるのか?といえば、これは私の推測ですが、在籍期間が2年あれば問題なしという、短期での転職を繰り返すことが通常であるアメリカの就職市場のネガティブな側面ではないかと。プロジェクトや事業の規模にもよりますが、半年〜2年くらいの短期間在籍だと、明らかな成果が出せていなくても、面接でも上手いこと言えるのではないかと。繰り返しになりますが、MBA持っている人の多くはプレゼンテーション力は素晴らしかったですから、成果がなくてもアピールができるのだと思います。

この謎MBAホルダーの話になると、私は止まらなくなりますので、そろそろ章タイトルの問いの答えに。

”学ぶ”にかけた投資は回収できるか?

MBAホルダーになるには、取得に必要な知識とスキルを獲得する必要があることには間違いのないことです・・・という前提であった上で。回収するものを、現場のビジネスで活かすせる取得スキルや知識とすると、少ないアメリカでの就業経験からではありますが、どうしても”?”をつけてしまいたくなるのですが、回収物を”より高い給料”とすると、かなり高い確率で回収できると思います。そして、アメリカ人的には、投資金額以上の給料を得ることができれば、”学ぶ”の目的は達成できたことに

そして、このような傾向があると思われる、もう1つの代表的な職業が医師。コロナ騒動で明らかになったことですが、目の前にいる患者を救うために、自分の知識やスキル、経験を活かして治療しようという医師は、少数派でした。既存薬によるコロナ治療で患者を救おうとする医師は、”新型科学”と私が名付けた、コロナ騒動の利権団体からの嫌がらせを受けていたということも影響しているとは思います。しかし、”医師”という肩書きがある人たちは、医師としての自分をフル稼働させるーー自分で考えるーーことなく、CDCのガイドライン(権威がいう”正解”)に沿った診断を機械的にする人が多かったということも一因。そういう医師はCDCがいい仕事していないという認識がありつつも、CDCのガイドラインに沿った仕事しかしないのです。

このような態度の医師らは、”学ぶ”にかけた投資が回収できているか?といえば、給料としては回収できているので、本人としては全く問題ないのだと思います。

アメリカンドリーム48の危うさ

個人の能力として残るものは?

本家48ビジネスのCDセールスの話と、アメリカンドリーム48の”学ぶ”にかけた投資回収の話に、私はどうしても似たようなものを感じてしまいます。

たくさんの人に音楽を聞いてもらえなくても、莫大な利益は出せるCDセールスと同様、現在のアメリカの教育システムには、専門知識を実際の問題解決のために使えなくても、給料として投資回収できれば良いという、本来の目的とは異なっても”稼げるが正義”があればよしというような空気があります。

CDが売れるということは、元々、売れた分だけ多くの”音楽に対する支持”を得たというものではなかったでしょうか。一方、本家48ビジネスモデルの場合は、”音楽に対する支持”も重要ですが、それよりも”いかに太客を掴むか?”がセールスに大きく影響します。プロデューサー、もしくは経営陣としては、お金に色はついていませんから、売れればそれで成功ということになります。しかし、本家48に参加しているアイドルと言われる女の子たちはどうでしょうか?48人のグループというのも、かなりの大所帯ですが、実際にはその下にその何倍かのアイドル予備軍?が控えているようですが、グループを離れた後、本人たちが望むキャリアに進めたという女の子は一体どれくらいいるのでしょうか?

どれだけ多くのCDセールスに貢献できたとしても、それはあくまでも、48という社会の中だからこそ、獲得できたポジションということが言えるかと思います。同じことはアメリカンドリーム48にも言えるかと思います。謎のMBAホルダーがアメリカで高給を手にしながら、こんなテキトーな働き方ができるのは彼らがアメリカという国の中で働いている、言い換えると、アメリカンドリーム48のメンバーだからだと思います(*1)。

*1:念のため、MBAホルダーのアメリカ人で、優秀なビジネスマンもたくさんいます。しかしそれはある意味当たり前(社会が期待する通りの結果)なので、今回のコラムでは触れていません。

現在、”ドル離れ”が静かに進行している・・・とも言われる中、万が一、本当にアメリカが世界の大国でなくなってしまったとしたら・・・。アメリカンドリーム48のメンバー、特にリベラル・エリートとして”賢く儲けている”人たちは、同じ生活水準を保てるだけの収入源を得ることはできるのか?といえば、どうなんでしょう??

最後に残るのは教育・・・という香港人との比較

私がこの問題を考えるときに、いつも思い出すのが数人の香港の友人から聞いた、教育に対する考えです。香港には、文化大革命時代に、本人や親世代が共産党から逃れるために香港に移住してきたという人がたくさんいます。彼らの多くは、中国で高等教育を受け、教養や知識もあり、豊かな生活をしている層でした。共産党主導した酷い迫害を受けた者、命からがらマカオや香港に逃げた者・・・どちらの場合にも、文化大革命という名の下、ある日突然、今までの生活や財産、幸せを奪われしまったのでした。どのくらい過酷な生活だったか?については、数行にはとてもとてもまとめきれないほどの酷さ。しかし、全てを奪おうとした共産党が彼らから唯一奪えなかったのが、彼らの中に蓄積された”教育”だったと言います。

共産党から逃げて香港に渡ったものの、当時の香港はイギリスの植民地でした。世界の植民地政策の常識で言うと、植民地の人々の教育を熱心に行うということはありません。そのため植民地時代に教育を受けた世代では、日本では大卒しか働けないようなイメージのある、例えば、新聞記者等の職種に、高卒で就いたという人もいました。彼は英語だけでなく、北京語や日本語にも堪能で、日本の経済、政治事情にも明るく、高卒だと聞いた時には驚きました。ですから、香港の友人らがいう”教育”とは、アメリカで重視される学歴ではなく、本当の意味での能力や知識でした。かなり中国化されてしまった現在の香港が未だこの考えなのか、学歴主義になってしまったのかは分かりませんが、当時の香港は、私が一緒に仕事をしたアジアの国、そして日本、アメリカの中で最も”中身を重視”しているような印象があります。あくまでも個人の感想レベルの話ですが。

ドル離れ、権威の失墜したアメリカで、リベラルエリートは生き残れるのか?

さて、本題のアメリカンドリーム48のメンバーである、リベラル・エリートについてです。アメリカの”自分で考える”を放棄し、”権威がいう正解”に沿った判断をしてきた人です。アメリカが大国でなくなるということは、アメリカで権威と言われていた人たちが間違っていたということになります。そのような時、リベラル・エリートは「これは権威が言っていた正解であり、自分の考えではない(だから、自分の責任ではない)」というようなことを主張してきますが、このような言い訳で問題回避できるのは、あくまで今のアメリカがアメリカであるからです。「これまでの貯蓄で食べていくー!」と言っても、ドルが紙屑になってしまえばそれまで。

”博士号も取った。MBAも取った。権威がいう正解を、説得力を持って主張することができる・・・”という人であっても、”自分で考える”を放棄してしまって久しいというリベラル・エリートたちが、彼らの実力の担保となっていた”アメリカンドリーム48”というブランドが失墜した時に、サバイブできるのでしょうか?
コロナ騒動で、素人でも気がつけるような嘘に騙されたリベラル・エリートたちに、かつての香港人がそうだったようなサバイブ力が彼らに備わっているとは、とても思えないのですが。

ちょっとアメリカに対してディスりすぎじゃない?

と、感じる方もいらっしゃるかもしれません。

ですが、なぜ私がこの問題に熱くなるか?といえば、今のアメリカのおかしな問題を引き起こすきっかけになっていること、そして、そのおかしな現象に騙されるリベラル・エリートの増産体制に、”教育”が深く関係していると思うからです。さらに、今回のアメリカンドリーム48論を展開していく中で、このような幻想を築き上げる重要な要素となっているのが高額な大学の授業料ではないか?と考えています。アメリカの大学の授業料は、諸外国とは比べ物にならないほど、高額です。NCESの調査では、公立 4 年制大学では、2020-21 年度の平均年間授業料は 9,400 ドル(1ドル130円計算で1200万円くらい)で、私立(営利)の4年制大学では、2020-21年の平均年間授業料は18,200ドル(同2千4百万円くらい)。この数字は年々上昇傾向にあり、2023年の数字では、公立大学でも平均年間授業料が
10,000ドルを超えていると報じているところもあります。

この大学の授業料の異常な高さがアメリカンドリーム48を成功させる重要な鍵を握っているのではないか?・・・という件を次回は深掘りしていきたいと思います。

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