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先の読めない”例の情勢”を謎解きしてみた:コウ氏死亡ニュースの次は?

重要人物の死亡ニュースがなぜ今?

コーさん、死亡ニュースが出る前に考えていたシナリオ

みなさん、ご存知のことだと思いますので、ニュースの内容については省略させていただきますが、数年前から”亡くなった説”の出ていた江(以下、コー)さんが亡くなったというニュースがとうとう出ましたね。念の為・・・

”亡くなった”というよりも”亡くなったニュースが出た”部分が重要

かと思います。というのも、シューさん、コーさんの派閥の対立は、年々一層激しさを増していました。そのため、例の革命の話が出た時に、「これはコーさん一派が裏で仕掛けているのでは?」という気がしました。というのも、デモ活動を収めた動画がかなり出回っていたからです。

中国では、中国製のSNS以外の使用が禁止されており、独自ファイアーウォールにより、中国国内からの海外SNSプラットフォームへのアクセスができなくなっているといいます。そうはいっても、VPNを使って海外SNSにつながる中国人は少なくなく、この層が海外SNSに動画投稿することは可能です。とはいえ、たとえば、日本にいるウイグル人が中国批判の投稿をTwitterに行うと、中国警察が中国国内にいる家族の元に訪れ、家族を通じてTweetを消させたり・・・と、徹底した情報統制を行なっているからです。

その本気の情報統制からすると、これまでのところ、本件への監視は少し緩いような気もします。検挙の危険回避のために、真っ白な紙を掲げている・・・とはいえ、叫んでいる内容は、かなり過激な共産党批判、シューさん批判。シューさんに似ているという人気キャラクター、プーさんでさえ、NGワードになっているような中国で、あまりにも直接的な批判を展開していることが・・・頑張れ!と思う半面、心配でもあります。

というわけで、コーさんが亡くなったというニュースが出る前に、私が考えていたシナリオは次の4つでした。

  1. 政府が本件についてはまだ本気の情報統制を行なっていない

  2. 政府の本気の情報統制を上回るスピードで情報が拡散している

  3. チーム・コーさんがシューさん攻撃を仕掛けている

  4. 海外SNS上の動画を”危険分子”のスクーリングにあえて使っている

もし、例の革命がここまで広がっている要因に、上記3のチーム・コーさんによる仕掛けがあるのだとすれば、今の時期に死亡ニュースを出てきたのも、シューさんVSコーさんの一環であるような気もします。

コーさん死亡ニュースのタイミングがなぜ重要か?

まず、高齢で亡くなったコーさんの死、そのものは、特に怪しい点はないと考える方が無難ではないかと思います。派閥の長は、その存在感だけで物事を動かす大きな力となります。そのためどんなに具合が悪くても、重要な会議ではその姿を表すことが重要とされています。

以前、別のコラムで共産主義はイデオロギーではないと思うという話をシェアさせていただきましたが、派閥も同じだと思います。同じ思想を共有した仲間というようなものではなく、利益を追求するための共同体。派閥の長と近いポジションにいる人は、長の力によって得られる利益も大きい分、違う派閥に”転職”しにくい状況にあるかと思います。一方、下っ端のメンバーにとっては、情勢を見極めてより有利になる方がにつく方がお得です。

長が重要会議で派閥の長が姿を見せないというのは、派閥メンバーを不安にさせ、人材の流出につながってしまうと言われています。そのような事態を避けるためにも、「とにかく姿を表すことが重要だから、生きていれば、車椅子に乗ってでも会議に参加するはずだ」という専門家の人も多くいました。しかし、昨年くらいからのコーさんは、その姿を見かけられないという話が出ていました。そのため、

すでに死亡している?

という説も出ていました。そういうこともあり、死亡したことよりも、死亡したニュースが出たタイミングがとても気になるわけです。

”死亡ニュース”をチーム・コーさん側が仕掛けたシナリオ

仮に今回の”死亡ニュース”の発信源がチーム・コーさん側だったとした場合、考えられるストーリーについてです。あくまでも謎解きのノリであることをご了承ください。

タイミングが気になるもう1つのニュース:ジャック・マー、日本に潜伏!?

まず、「中国の派閥争いでは、重鎮は生きている姿を見せるだけで良い」と言われても、やはり健康に不安のある人よりは、ない人についていた方が安全です。死亡ニュースを待たずに、シューさん側に転職するチーム・コーのメンバーは少なからずいたのではないでしょうか。それにシューさんのチーム・コーに対する粛清は年々厳しさを増す一方でした。

有名どころでは、アリババの創業者、馬雲(ジャック・マー)。共産党政府の政策批判をやりきってしまった後、行方不明説が出たジャック・マーも、チーム・コーの1人。上海拠点で知られるコーさんですが、深セン一帯のIT利権もコーさんが握っていると言われています。ジャック・マーがシューさんを怒らせたことで、アリババグループ傘下のアントグループの上海と香港市場へのIPOは直前になって突如延期の憂き目を見ました。独占禁止法違反ということで、3500億円くらいの罰金も支払わせています。

そんなジャック・マーが再び表舞台に出た際、ちょっと様子がおかしいということで、今度は”洗脳済み”説が出ていました。その後、逮捕された説や再び行方不明説が出たりもしたものの、しばらくニュースになることのなかったジャック・マーについてのニュースがついに出た!というのも、11月30日。

雲隠れジャック・マー氏が一時日本に、銀座の会員制クラブなどで活動か 中国アリババ創業者(11月30日、産経新聞)

半年間、日本に滞在できるビザって、何でしょうか? 半年前といえば、ツアー参加か、日本人の配偶者ビザ等がない外国人は、日本に入国できなかったはずですが・・・?という疑問もありますが、このニュースが出てきたタイミングも・・・・。

神聖化することで、民衆の力を集め、コー派閥を再建!?

シューさんの凄まじい粛清に押され気味のチーム・コーにとっては、勢いを盛り返す”何か”が必要だったはずです。日本人としてはあまり良い印象のないコーさんですが、中国経済を世界2位にまで築き上げたコーさんは、中国では彼を支持する一般人も少なくないような印象を受けます。この”何か”として選んだのが”民衆の力”だった・・・というシナリオです。

亡くなった重鎮を神格化させると、求心力が高まります。

ちょうど1年くらい前、天安門事件で失脚した趙紫陽元共産党総書記の遺族を北京市中心部にある趙氏の旧居からの退去させるという出来事がありました。趙紫陽が失脚した理由は、天安門事件で武力弾圧された民主派学生らに同情的な態度を示したことです。2005年に亡くなるまで、北京の自宅で軟禁状態にあったと言われています。趙紫陽死亡後も、遺族がそこに住んでいたそうなのですが、清明節等の折に自宅を訪れ、趙紫陽を偲ぶ市民もいたようです。そのため、旧自宅という追悼拠点が政府批判の拠点になることを危惧したシューさんが、遺族らを退去させるに至ったと言います。

そもそも天安門事件のトリガーとなったのが、言論の自由化を進めようとし、失脚し、自宅南京中に亡くなった、胡耀邦の追悼集会にありました。市民に人気のある人物の追悼に、シューさんが懸念するのはそのためです。

中国のロックダウン政策は、中国の地方経済をかなり破壊しています。このような現政権を批判する象徴としては、中国を経済大国にまで押し上げたコーさんは絶好の人物ではないでしょうか。

この路線のシナリオならば、チーム・コーさんが、これまでひた隠しにし続けてきた”コーさんの死亡”について、今が公表する絶妙のタイミングと見たということは考えられます。

そして、なぜジャック・マーの記事が同じタイミングで出たのか?という件ですが、本来、派閥の長が死亡することで圧倒的に不利になるチーム・コーのメンバーが海外で問題なく過ごしているというをあえて今、知らせておきたかったのではないでしょうか。コーさんを神聖化するためには、追悼集会等を開催したいはずですが、中国国内では、”コロナ感染拡大防止”という大義名分がある以上、大勢が一堂に会すことは規制される可能性が高いかと思います。

そこで海外勢を利用する・・・となると、チーム・コーであり、自身も世界的な企業を創業したものの、不運な現在を送っている・・・というジャック・マーもシュー批判の象徴としては、ちょうど良い感じがします。

”死亡ニュース”の仕掛けに気付いたシューさんが”仕掛け返し”するシナリオ

どこの国の報道機関かわからないNHKが中国中央テレビの報道を伝える形で、コーさん死亡を伝えた記事が次の通りです。

国営の中国中央テレビは日本時間の午後7時、現地時間の午後6時から特別番組を放送しました。
番組の冒頭、江氏の遺影がおよそ1分間映し出されたあと、黒いネクタイを締めたアナウンサーが、江氏が30日、死去したと伝えました。
番組では江氏の経歴や業績がおよそ25分にわたって読み上げられ、このうち江氏が上海市トップの書記を務めていた際に起きた1989年の天安門事件について「深刻な政治的な騒ぎの中で、江沢民同志は、動乱に反対し、社会主義国家の政権を守るという党中央の正しい決定を支持し、実行した」と伝えました。
そして「中華民族の偉大な復興は、江沢民同志を含む、何世代もの共産党員の心血と奮闘が凝縮したものだ」としたうえで「この道を進む上では習近平同志を核心とする党中央の強力な指導のもと、団結し、奮闘しなければならない」と強調しました。

https://www.nhk.or.jp/politics/articles/statement/92611.html

天安門事件を鎮圧させたのは、鄧小平です。当時、上海にいたはずのコーさんって何をしたっけ?と思って、調べてみたら、胡耀邦追悼の座談会を報じた『世界経済導報』に対し、速攻停刊処分を下したというものがありました。
この迅速な対応が長老たちに受け、トップに上り詰めることができたのは事実ですが、天安門事件に対して「党中央の正しい決定を支持し、実行した」と言われると、もう少し具体的な関与をしたかの印象を受けます。そうです、重要なのは印象です。

コーさんを神聖化させないために、コーさんは天安門事件で武力制圧した側の人間だということを印象付けをしよう!

コーさんの死亡に際し、シューさん側が迅速に上記のような記事をリリースできたのには、予め「そろそろ例のニュース、出すだろう」という見通しがあって、準備していたのではないかとも考えられます。

さらに、”今こそ、シューさんを中心に国民が団結すべき時”というところまで持っていくクロージングはすごいなと思いました。コーさん時代に中国が経済大国になったという認識は多くの中国人が持つところかと思います。さらに、今でこそ敵対するシューさん、コーさんですが、実は危うくトップの座を逃しそうだったシューさんを後押ししたのは、長老となっていたコーさん。”使いやすい人物”だと思って後押ししたら、自らの側近にまで粛清の手を伸ばされて長老らもびっくり・・・という話もあるようです。何はともあれ・・・。

コーさんが礎を気付いた経済力を引き継いだシューさんが・・・今は一時的にコロナで低迷しているけど、あの栄光をもう一度!

みたいな宣伝をするなら、今が絶好のタイミングです。

天安門事件は中国ではかなり強いNGワードになっていて、国内では検索することができない=具体的な事実をよく知らない中国人は少なくないと見られています。白紙のプラカードを掲げつつも、口頭では激しい中国批判ができるのは、天安門事件を知らない世代だからという専門家もいます。ということは、シューさんに都合の良い”天安門事件”を広めることができるチャンスでもあります。

宣伝工作は、共産主義者の十八番です。互いに相手の戦略を熟知しているからこそ、苛烈な情報戦が行われそうな気もします。ただし、シューさんがコーさんを表立って批判するような宣伝はしないのではないかと思います。今後の宣伝工作のシナリオとしては、チーム・コーさんらを”ゼロコロナ”なのか、”不安定な治安”なのかの責任を押し付け、粛清すると共に、それを”本当の悪党をやっつけた”的なアピールをすることも考えられます。

国民が一丸となってコロナと闘う中、こっそり海外で私服を肥やし、
自分たちだけがおいしい思いをしている奴らがいる!
”本当の悪党”たちの財産を没収し、国民に分配しよう!

この宣伝工作は、案外うまくいきそうなんじゃないかという気がします。なぜなら、実際のところ、コーさん一族の資産は海外にあるものだけで、100兆円以上あると言われているからです。そして、このことは、パンデミック発生当時のトランプ大統領がこれら共産党幹部の海外資産を凍結させ、”武漢ウイルス”の賠償金に当てようとしていたことから、その事実を持って、”本物の悪党らが持つ海外資産”の証明にもなります。

さらに、都合が良いことに、これはシューさんが薦めている”共同富裕”政策とマッチします。

・・・以上は、私がシューさんだったら?のシナリオです。

一番こわーい、”只今、スクリーニング中”のシナリオ

中国、そして、これはアメリカも当てはまることですが・・・。共産主義者の動きを見るときに、気をつけなくてはならないのが、共産主義者のトップの戦略は、一般人が思い付かないほどダイナミックーー普通は待てない長期間にわたって企てたり、気がつかれないような小さな穴を各地に開けておいて、後に一斉に広げたり・・・ーーだということです。その一方で、実際にその戦略に基づいき実行する現場は、びっくりするくらいお粗末なもの。

何も理由なしにディスっているわけではありません。共産主義が特定層が儲かるためのビジネスモデルであることを考えると、それ以外のいわゆる”一般人”は下手に知恵をつけない方が良いため、トップ層以外の教育は知恵をつけない教育システムをあえて導入している可能性はあります。一昔前の植民地政策を国内で行っている形ではないかと。

最初の章で、シューさん批判コールの入った、白紙革命の動画があまりにもネット上に出回っていることについて、それが可能であると考えられる一方で、シューさん側の対応のできなさ具合が気になっているという旨をシェアさせていただきました。そこには挙げていませんが、もしかすると、単純に現場がトップの期待(支持)通りのアクションができていないだけかもしれません。この可能性は拭い切れないのですが、それでも一番危険なシナリオとして考えざるを得ないのがシューさんがあえて見逃しているというものです。何のために?かといえば・・・

”危険分子”のスクーリングのため。

広州をはじめ、抗議を受けた一部地域でロックダウン解除を含む、ゼロコロナ政策の緩和策が導入されてきたという報道がありました。しかし、その一方で気になる報道もあります。

中国「抗議する学生の連行」に、各地弁護士「無償で協力」へ

大紀元で報じられたのは、11月30日ですが、それよりも少し前から弁護士の無償協力についてちらほら見かけたような気がします。記事では、電車内で警察が市民のスマホをチェックする様子を見ることができます。ダウンロードしているアプリ等を確認することによって、反政府活動に参加しているかどうかを調べているのだと言います。

今回、抗議デモの様子を写した動画が海外でも多く出回ったということは、私たちが見ることができたものと同じ動画を共産党も確認しているわけです。今回のデモが主催者が曖昧な自然発生的なものだとしても、動画内で痛烈な共産党批判を行っている人物を”見せしめ”として罰することは可能はゼロではありません。中国の顔認識技術はかなり進んでおり、ロックダウン中の人々の移動については、スマホのGPS機能だけでなく、顔認識機能を搭載した監視カメラによっても行われているのではないかと言われていました。

これだけでも嫌な気がしますが、さらに中国が抜きに出た技術に、”信用スコア”があります。アリババが提供する芝麻信用(ジーマ・クレジット)が有名ですが、アリペイでの取引実績から、オンラインショッピングの履歴、SNS上の人間関係等々、点数化され、信用スコアが与えられるようなのですが、この信用スコアによってはサービスの提供が優先されたり、制限を受けたりするようです。そうなると、気になるのが信用スコアの具体的な評価基準。しかし、その基準については、どのようになっているのか?については明らかにされていないようです。

万が一、抗議デモの参加が点数化され、信用スコアに反映されてしまったら?

これはあるかもなぁということですが、反発が高まる中、あからさまな締め付け策は、さらなる反発を招くことがあるかもしれません。これをもう少し巧みな方法で導入するとすれば・・・。

抗議デモに参加しなかったことが点数化され、信用スコアに反映

”抗議デモに参加しなかったこと”の部分に、もう少し小細工を入れると・・・。

コロナ対策に協力し、10人以上人集まった密な場所に行かなかったことを評価

この項目で評価点を稼ごうとすれば、デモには参加できなくなってしまいます。しかし、直接的に抗議デモに参加した人を罰している訳ではありませんので、国際人権団体等も、文句はつけにくくなります。
さらに・・・ここで、チーム・コーさんらから取り上げた資産を原資とし、この評価をもとに分配・・・なんて政策もあわせて導入したら、コロナ対策の失敗を挽回することができるかもしれません。


ーーーちょっと尻切れトンボ感があるのですが、情勢が刻々と変わっていくようですので、一旦ここでシェアさせていただこうと思います。

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