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FDAのおかしな要請、却下される:ファイザーワクチンの承認情報、今年9月末までに開示

情報公開が必要な理由を考えたら、至極当然な判決

裁判の経緯

私はアメリカンジョークのおもしろさがなかなか理解できないのですが、昨年の11月にFDAが行った「皆さんが知りたいというファイザー製ワクチンの承認時事情報は、2097年までに全て公開します!」というジョークについては、多くのアメリカ人にも理解できなかったようです。そして、もちろん、最高裁判所も!

ことの経緯は以下の通りです。

イェール大学のハーベイ・リッシュ教授とカリフォルニア大学のアーロン・ケリアティ博士、そして、ピーター・マカロー博士ら、”透明性のための公衆衛生と医療専門家”が、情報公開法をもとに、FDAにファイザー社ワクチンの承認時データの公開を求める訴訟を起こしていました。公開自体は行うとしたものの、FDAはデータが大量であること、他にも仕事があることを理由に、「毎月500ページだけ公開したい」と裁判所に希望を伝えていました。途中で、公開すべきデータが見つかった(もう少し黒塗りする必要があるデータがたくさんある)を理由に、公開の最終期限は2097年になるという、笑えないジョークを言ってきたFDAに対し、訴訟団体だけでなく、”(ほぼ)全アメリカが怒った”ーーというのがこれまでの経緯で、裁判所の判決が待たれていました。

ちょ、待てよ。FDAが、ワクチンデータに関する情報公開請求の処理に55年かかるって。
(本文)情報公開法の要請が迅速に行われることはほとんどないが、ある科学者グループが連邦政府に対して、ファイザー社のCOVID-19ワクチンを認可する際に依拠したデータの共有を求めたところ、典型的な官僚的牛歩戦術による回答があった。

上記ロイター記事より抜粋


ファイザー社をはじめとする、新型コロナのワクチンは、莫大なアメリカの国民の税金を使って開発されたものです。「情報を公開することで企業秘密がそこなわれる。それを防止するための黒塗りが必要で、時間がかかるので、2097年まで待ってくれ」というのは、本当に”ブラックジョーク”としかいえません。ワクチン接種した人も、しなかった人も、今、生きている人で2097年まで生きている人は一体どれくらいいるのでしょうか?

FDAの承認というのは、アメリカ国内だけでなく、世界中に影響を与えます。

当然といえば、当然の判決だと思うのですが、最高裁判事はFDAに対し、情報公開の作業ペースをスピードアップさせる(月5万5,000ページ公開)判決を下しました。現在、公開予定されているページ数で計算すると、8カ月かかる見込みです。それでも、そのワクチンの義務化についての議論の結論が出ようとしていることを考えると、8カ月後でも遅いと思うのですが。

記事によると、"ファイザー社が提出を開始したのが2021年5月7日で、ワクチンが認可されたのが2021年8月23日。つまり、最初の提出から認可まで合計108日でした。

FDAの判決(詳細)


今回の判決はFDAに対しては、厳しいものとなりました。その理由をマーク・ピットマン判事は、「政府機関の過度の秘密主義は 、陰謀論を助長し、政府に対する国民の信頼を低下させる 」というアリゾナ州選出の共和党で2008年の共和党大統領候補だった故ジョン・マケイン上院議員の言葉を引用し、説明しています。

下記は判決文の抄訳です。

命令 本件は、情報公開法(「FOIA」)に関わるものである。具体的には、「21 C.F.R. § 601.51(e) に列挙されているファイザーワクチンに関するすべてのデータおよび情報(ワクチン有害事象報告システムに関する一般公開された報告書を除く)」を求める原告の 、食品医薬品局(以下「FDA」)に対するFOIA 要求が問題になっている。両当事者は、相互に受け入れられる公開タイムラインに合意することができず、代わりに、当裁判所の検討のために両者の希望する公開タイムラインを提出しました。 そこで、当裁判所は、適切な制作スケジュールを決定するために、両当事者との会議を開催しました(注:驚くべきことに、FDAはスケジュール会議に省庁代表を派遣しなかった)。
「オープンガバメント(開かれた政府)は、アメリカの基礎的な問題であり、共和党や民主党の問題ではない。ジョン・マケインが書いたように、「人々に情報を普及させない、もしくは情報を獲得する手立てがない人民政府は、茶番劇や悲劇(もしくはその両方)へのプロローグに過ぎない。知識は永遠に無知を支配するだろう。そして、統治者になろうとする人たちは、知識が与える力で自分自身を武装しなければならない」。ジョン・F・ケネディも同様に、「開かれた市場で国民に真実と虚偽を判断させることを恐れる国家は、国民を恐れる国家である」としている。特に今回のケースを判断する上で相応しいのは、ジョン・マケインが指摘した「過度の行政上の秘密主義は、陰謀論を助長し、政府に対する国民の信頼を低下させる 」だ。
これらのことを鑑みると、情報公開法(FOIA)の基本的な目的は、情報を持った市民を確保することであり、それは民主主義社会の機能にとって不可欠である。  FOIAは、行政の秘密のベールを突き破り、機関の行動を公衆の監視の光にさらすために制定されたのである。 また、議会は長い間、『情報はしばしばタイムリーである場合にのみ有用』であり、それゆえ『当局による過剰な対応の遅れはしばしば拒否に等しい』と認識してきた。必要な場合、裁判所は 、衡平法上の権限を用いて、裁判所が課すタイムラインに従って文書を処理するよう機関に要求することができる。
当裁判所は、このFOIA要請がFDAに"不当に負担のかかる”課題であることを認識しています。しかし、タイムライン会議で表明されたように、FDAにおいては、パンデミックやファイザーワクチン、すべてのアメリカ人にワクチン接種させること、そして、これがアメリカのために突貫工事で作られたものではないことをアメリカ国民が保証されることよりも、重要な問題はないでしょう。
従って、当裁判所は、この情報公開請求は公共的に最も重要なものであると結論付けました。陳腐な情報にはほとんど価値がないのです。従って、当裁判所はこの真理に同意し、原告の要請を迅速に完了させることは、実行可能であるばかりでなく、必要であると結論付けました。そのため、裁判所はさらに、この要請の処理における前例のない緊急性の必要性と、作成の負担に関するFDAの懸念とのバランスを適切にとるための作成率について以下に詳述し、結論づけました。

判決文

結局のところ、判決は下記の通りです。

したがって、両当事者の議論、支持の提出物、および適用法を考慮した結果、当裁判所は以下を命ずる。
1.FDAは、自らの提案で明示した「12,000ページ以上」を、2022年1月31日までに作成しなければならない。
2.  FDAは、残りの文書を30日ごとに55,000ページの割合で作成し、最初の作成期限は2022年3月1日かそれ以前で、作成が完了するまでこれを繰り返すこと。
3. FDAが回答記録またはその一部について特権、免除、除外を主張する範囲において、FDAは、本注文書が要求する各提出と同時に、特権、免除、除外が主張されている部分のみを編集した記録版を作成するものとする。
4. 両当事者は、2022 年 4 月 1 日までに、及びその後 90 日ごとに、進捗状況を詳述した共同状況報告書を提出するものとする(注:当裁判所は、FDAが原告の迅速処理の要求を正しく拒否したかどうかについては今回、判断していません。両当事者が略式判決を求める動議を提出する場合、裁判所はこの問題を取り上げることになります)。

判決文


正確にいうと、判決文の中では、最終期限が定められおらず、作業スペースについて言及されています。これは、情報公開に必要なページ数について、FDAが途中で追加資料があること(作業時間がもっと必要である)に言及したからだと考えられます。今後、同じような”資料が他にも見つかったので、時間を伸ばして欲しい”要請を予め阻止するために、あえて1カ月当たりの作業ペースという形での判決だったのではないかと思います。

何はともあれ、アメリカで異常な事態が続いている中で、今回、当たり前の判決が出たことは、少しほっとできる出来事でした。

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