情報公開が必要な理由を考えたら、至極当然な判決
裁判の経緯
私はアメリカンジョークのおもしろさがなかなか理解できないのですが、昨年の11月にFDAが行った「皆さんが知りたいというファイザー製ワクチンの承認時事情報は、2097年までに全て公開します!」というジョークについては、多くのアメリカ人にも理解できなかったようです。そして、もちろん、最高裁判所も!
ことの経緯は以下の通りです。
イェール大学のハーベイ・リッシュ教授とカリフォルニア大学のアーロン・ケリアティ博士、そして、ピーター・マカロー博士ら、”透明性のための公衆衛生と医療専門家”が、情報公開法をもとに、FDAにファイザー社ワクチンの承認時データの公開を求める訴訟を起こしていました。公開自体は行うとしたものの、FDAはデータが大量であること、他にも仕事があることを理由に、「毎月500ページだけ公開したい」と裁判所に希望を伝えていました。途中で、公開すべきデータが見つかった(もう少し黒塗りする必要があるデータがたくさんある)を理由に、公開の最終期限は2097年になるという、笑えないジョークを言ってきたFDAに対し、訴訟団体だけでなく、”(ほぼ)全アメリカが怒った”ーーというのがこれまでの経緯で、裁判所の判決が待たれていました。
ファイザー社をはじめとする、新型コロナのワクチンは、莫大なアメリカの国民の税金を使って開発されたものです。「情報を公開することで企業秘密がそこなわれる。それを防止するための黒塗りが必要で、時間がかかるので、2097年まで待ってくれ」というのは、本当に”ブラックジョーク”としかいえません。ワクチン接種した人も、しなかった人も、今、生きている人で2097年まで生きている人は一体どれくらいいるのでしょうか?
FDAの承認というのは、アメリカ国内だけでなく、世界中に影響を与えます。
当然といえば、当然の判決だと思うのですが、最高裁判事はFDAに対し、情報公開の作業ペースをスピードアップさせる(月5万5,000ページ公開)判決を下しました。現在、公開予定されているページ数で計算すると、8カ月かかる見込みです。それでも、そのワクチンの義務化についての議論の結論が出ようとしていることを考えると、8カ月後でも遅いと思うのですが。
記事によると、"ファイザー社が提出を開始したのが2021年5月7日で、ワクチンが認可されたのが2021年8月23日。つまり、最初の提出から認可まで合計108日でした。
FDAの判決(詳細)
今回の判決はFDAに対しては、厳しいものとなりました。その理由をマーク・ピットマン判事は、「政府機関の過度の秘密主義は 、陰謀論を助長し、政府に対する国民の信頼を低下させる 」というアリゾナ州選出の共和党で2008年の共和党大統領候補だった故ジョン・マケイン上院議員の言葉を引用し、説明しています。
下記は判決文の抄訳です。
結局のところ、判決は下記の通りです。
正確にいうと、判決文の中では、最終期限が定められおらず、作業スペースについて言及されています。これは、情報公開に必要なページ数について、FDAが途中で追加資料があること(作業時間がもっと必要である)に言及したからだと考えられます。今後、同じような”資料が他にも見つかったので、時間を伸ばして欲しい”要請を予め阻止するために、あえて1カ月当たりの作業ペースという形での判決だったのではないかと思います。
何はともあれ、アメリカで異常な事態が続いている中で、今回、当たり前の判決が出たことは、少しほっとできる出来事でした。