見出し画像

2.数字を積むと言うこと

 某有名ITベンチャーで、得るものがなかったといえば嘘になる。

 それまでのおれは、世の中にないもの、面白い物を作ることばかりに集中していたので、売上数字に関わることに関しては、あまり興味がもてなかった。

 それでも、ガラケー時代のケータイコンテンツを多い時で5つ以上、立ち上げたり運用したりしていたので、予実管理程度はやっていた。

 実績から、将来の予測を立て、施策を考え、売上目標を設定、予実を管理しながら、目標に対して調整を行う。

 今にして思えばごく当たり前の話だが、当時は自分も、周囲の連中も、それがうまくできていたわけでなく、全員が、知ったかぶりと手探りで模索していたと思う。

 おれのいた会社は、営業畑の社長が作ったIT企業だけあって、アルバイトまで計算機片手にミーティングに参加する。

「沖田さんのプロジェクトが、これくらいの売上にならないと、私たちの時給が上がらないんです」

 なんてことを、計算機片手に言われたこともあった。

 毎日売上に追われ、日毎に計画数値を変更し、施策を考え実施する生活を繰り返していれば、それなりに強くなっていく。

 エクセルに強くなったのも、その頃だ。

 施策に応じて将来のシミュレーション数値が数式で簡単に出せるよう工夫が出来るようになってくると、途端に面白くなってくる。

 退職が決まり、お目付役として付いた役員に、今後の損益シミュレーションを見せると、

「この数式はどこの数値を参照しているのか?」

「どういう計算で成り立っているのかと」

 しつこく聞かれる。

 始めは、細かくチェックされているものだとばかり思っていたが、そのうちそうでないことが分かった。

 これまでのシミュレーションより遙かに精度高かったらしく、その方法を辞めるまでに知りたかったらしい。

 さんざんうるさく、シミュレーションの大切さ言ってきた役員でさえ、実のところは良くわかっていなかったのだ。

 こういったことは、どの会社に行ってもけっこうある。

 最近では、予実管理や損益シミュレーション、自社のキャッシュフローの予定推移さえ把握していない経営者もいた。

 Webやオンラインコンテンツに関わる数式はとてもシンプルだ。

 送客数×登録率×購入率×客単価=売上

 この、各項目自体を、更に細かくブレイクダウンしていくことも出来る。

 例えば、 

 送客数 = 検索表示回数×CTR(クリック率)

 客単価 = 平均購入数×平均商品単価

 といった具合だ。

 施策は、この各項目を上げるために行う。

 登録率が低ければ、ランディングページや登録フローの改善等を行えば良い。

 基本的な商品性が低ければもちろん登録率は上がらない。

 その場合、継続率、デイリーのアクティブ率等をチェックして、サービスの本質を改善していけば良い。

 バブル上司の

 「俺はそう思うんだ。だからやれ」

 的な、アホ言動に振り回されなくて済む。

 計画を立てても、その通りに行くことはまずないのだが、やはり計画を立て、目標数値を設定して、それをクリアすることを目指すことは、せっかく思いを込めて作り上げた商品やサービスを、多くの人に普及することにも繋がると思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?