今年買ってよかった百合2019

百合のオタクなので百合に限って今年買ってよかったものを書きます。
致命的なネタバレはないように気をつけていますが、どうしても避けられない部分もあるので未見の方はお気をつけください。

漫画

・スローループ
まんがタイムきららフォワードで連載されており、現在2巻まで発売されている、親同士の再婚で姉妹になった二人の、釣りと家族を巡る物語です。要素要素は割とスタンダードというか、斬新というわけではない(フライフィッシングという題材は珍しいですが)です。ではその魅力を形作るものは何かというと、私は全てにおいて丁寧であることだと思っています。
「ディテールの濃いきらら」の流れを汲む釣り描写はもちろんのこと、人間関係についてもそうなのです。
親が再婚して姉妹になった、一人で趣味に打ち込んできたひよりと、それに興味を持って明るく引っ張っていく小春。ここから連想される、ひよりが小春に救われる話、とはならない。
小春も新しい家庭の居心地の悪さを感じているし、二人の間にある壁に寂しく感じたりする。それでも、可能な範囲で歩み寄って関係を作っていく。あくまで相互に、できることをやって自分たちなりの「家族」を形成するんですね。
それから、ひよりの幼馴染である吉永恋、この設定を見ただけでオタクは「突然現れた姉妹にポジションを奪われる親友」を想像すると思います。
しかしこの恋ちゃん割と飄々としていて、むしろ昔のことを持ち出されて小春の方が妬く、みたいなパターンが多い。
ひよりのことを思っていないわけではなく、ひよりの中の自分の立ち位置を理解しているわけなんです。ただ物語開始当初はひよりに踏み込めないと感じており、そしてひよりの中の自分の存在、を見つけるきっかけを与えたのが、まさに小春の言葉だったんですね。
こうして巡る三人の関係は、綺麗な正三角形ではなくても、そのひとつひとつの辺が丁寧に描かれているゆえに愛すべきものになっています。

ひよりと小春には親を亡くしているという重い設定があります。ストーリー自体は明るい話が中心なんですが、寂しさを抱えた人間たちによる物語です。それが好きなもの、人への向き合い方を決めていくあの子たちへの優しい視点につながっているのが、この作品の軸なのかもしれません。

・社畜さんと家出少女
まんがタイムきららMAXで連載されている作品です。
きららレーベルといえば「日常もの」だというイメージがあると思いますが、実際この作品も日常を描いています。それが薄氷の上だとしても。
タイトルの通り、ナルさん(社会人・社畜)とユキ(高校生・家出少女)の二人の暮らしを描く漫画です。きららでは比較的少数派の、メインキャラががっつり二人というタイプ。
奇妙な組み合わせだけど、二人で助け合って楽しく暮らしている。基本的には「社畜」という存在の奇行と悲哀を描いたコメディ……ですが。
その背後には辛い境遇が潜んでいます。
社会が守ってくれない、むしろ社会制度に苦しめられている。居場所になるべき単位が、住みづらい場所だった。
そんなユキを、ナルさんは匿うことを選びます。
普段アホなことしてるとはいえナルさんも常識ある大人なわけで、それが「ユキちゃんの居場所を作るため」と罪悪に手を染めたこと、その決意の重さ、ユキの15年生きてきて初めて得た自分の居場所の切実さ。
そんなシリアス全開っぽいバックグラウンドを持っているふたりの、ふたりで過ごす、安心できる「日常」をあくまで描いている点が、この作品に奥行きを与えています。忘れられているわけではなく、自分たちを苛む存在の影、ナルさんの責任感、ユキの負い目が見え隠れします。
本当に幸せになってほしい。

・バリキャリと新卒
敏腕営業新納と、レズビアンヘルスで彼女を客に取っていた森野。森野が入社したのは新納の勤める商社だった……ところから始まる二人の物語です。
インターネットのオタクだったら「ネットの悪いところの煮こごり」が印象に残っているかもしれません。(このワードセンスも推せるポイントのひとつ)
社会人を題材にした百合は一定の地位を得ていると思いますが、個人的にはそこがメインの作品にはあまりハマれずに来ていました。そんな中でぶっ刺さったのがこの作品。その良さは、「妥協のなさ」と思っています。
社会と付き合う上で、妥協とともに生きている人は多いでしょう。その方が楽だし。自分が正しいとわかっていても、戦うのにはエネルギーが要ります。
でも、この作品は妥協をしない。物分かりが良くなることが社会人としての成長で大人としての成熟、そんな考えに中指を立てる。
商社で働くふたりを襲うのは、悪意ではなく、男社会に蔓延する無神経さであり、彼らが「普通」に生きてきて身についたバイアスです。あるいは男社会をサバイブしてきた自分の経験に基づく意識ですらあります。それは現代にも存在する、対処の難しい脅威です。
いろいろな、環境とか立場とかを描いた上で最後に自分に正直な選択をする、より正確に言うなら正直に生きるための選択をするのが本当に誠実で良い作品でした。
この作品で描かれているのは、「大人」百合です。その本質は年齢ではなく、まして「現実」をわきまえているからでもなく、自分たちで自らの大切なものを判断し、それを守るために努力することができる点にあります。

・ゆりでなる♡えすぽわーる
百合オタクの駒鳥とその友人の雨海の二人が、空想の中に救いを求めて「百合スケブ」を作る話です。
この漫画の魅力はいくらでもあり、ビジュアルであったり、ワードセンスであったり、百合のオタクである駒鳥の気持ちの良い限界っぷりだったりします。
ただ一番を挙げるとしたら、とにかく構成がすごい。
前編(駒鳥がスケブに描いた内容)で「百合好きの求めている百合」を提示します。絵柄に似合う甘い百合で、これ自体も普通に読んでて楽しい(「普通に」なのがミソ)。
後編(スケブの対象だった子たちの実態)では、そんな綺麗な関係ではないことが明かされます。しかし、それもまた百合です。これは広義の百合、女性同士の間に生まれる感情全般を包括するジャンルとして、ファンの間で使われる百合です。この二重構造の深み……だけでも終わらない。
この後編のままならない関係性が、さらに物語の軸である駒鳥・雨海とその周辺に返ってくるのが連載作品としての面白さを跳ね上げます。
駒鳥(と雨海)は理不尽に晒されています。それはいずれ訪れる結婚だけではなく、周囲の言動は日常的に彼女らを傷つけます。それに対して、それぞれのやり方で理不尽に対抗しようとします。あくまで、それぞれです。味方になってくれるかもしれない人はいても、結託することはできない。この断絶が、後編で描かれている関係の相似として炙り出される。
そもそものスタート地点が望まない相手との結婚を控えた駒鳥が「心が死んでも想像の中は自由」という考えのもと百合スケブを作ることなわけで、ひたすらに内省的です。
正直なところ、状況は絶望的でどうにもうまくいく道筋は見えてこない。それでも行動する、意志を形にする姿は、気高く輝いている。個のぶつかり合いとして人間関係を描いているところが、魅力かもしれません。
わかりやすい「百合」のパッケージの中で、根っこにあるのが断絶・不均衡・非対称性というギャップ。そして彼女たちの頼りない、理不尽への反撃という生き方。
関係性がどう希望<Espoir>に向かっていくのか。とにかく先が気になります。

小説

・アステリズムに花束を
これまで局所的にムーブメントのあった百合SF、待望のアンソロジー化。特に印象に残った作品について紹介します。

「幽世知能」
最初に読んだのはSFマガジン百合特集の回だったんですが、正直意表を突かれました。
草野原々氏の作品、間違いなく百合ではあるけれど関係性自体を楽しむというよりは、感情のデカさに比例して存在のスケールがデカくなっていく表現のアクロバティックさを楽しむような印象がありました。
でもこの作品はビジュアルやら理論やらから描き出される、紐解かれていく感情自体に魅力があります。正直私の「カップリング」としての好みならこの作品の二人はアンソロジーの中でも上位です。それでいて、謎のスケール感は健在。素直に「すごく良い作品だった」と言えます。

「彼岸花」
物語以前に、まず文章が百合。「お姉様」との交換日記帖という形で、百合じゃないというのは無理がある。そして、そこに浮かぶ女学校の生活は、間違いなくSFのそれです。
まとわりつく血の匂いは、SF的に引き込まれる異質な世界設定を描き出しており、さらにこの二人の間の断絶を浮き彫りにするものでもあります。
失う経験を経た二人が、取り戻せないと知りながら求め合う関係性と、その二人を取り巻く世界がひたすらに美しい。

「色のない緑」
最初の印象はまずSF、というか科学小説としての完成度の高さでした。現代の自然言語処理を土台にしていて、これがかなり緻密です。「ミコロフ整列可能」とか出てきますし。将来を常に悲観していたりとか、有名な例文が研究者の中でネタにされたりとか、アカデミック仕草が真に迫っているのも質感という意味で面白い。そして機械による言語理解の到達可能性に対する仮説を提示しているのも見識の高さを感じられます。
何より、私の大好きな「純粋で自分に正直にしか生きられない女に、小器用で能力もあって周囲に認められている女が憧れる」シチュエーションがあるのが最高。

「ツインスター・サイクロン・ランナウェイ」
まず、小川一水氏の百合が見られる喜び。今年完結した「天冥の標」でも多くの性の形を描いています。だから良い意味で「百合」という言葉の持つイメージ/バイアスに囚われていない、そして(結果的に?)このアンソロジーで最も「百合」らしい描写を含む一作となっています。最後を締めくくるこの作品が、爽やかな後味を形作っているのでしょう。
長編版が予定されているということで、そちらも楽しみです。

・なめらかな世界と、その敵
上で書いた「彼岸花」の作者、伴名練氏の初のSF短編集。
この一冊自体の評価はもう腐るほど出てくると思います。優れた作品が百合であれば嬉しい。
百合として見たときの私のお気に入りは表題作と「ホーリーアイアンメイデン」の2作。
百合において「特別な存在」というのは普遍的に、非常に強い心の動きです。あらゆる百合のオタクはこういった「特別」を求めていると言っても過言ではありません。
上記2作に共通するのが「一方が他方の特別な存在になる/なろうとする」という意志です。そして特別を獲得する手段、ここにSFというか非現実の要素が入ってくるわけですが、読むほどにその行動の重さがのしかかってくる。百合とSFの噛み合い方がすごい。
今年認知を広げた百合SF、それぞれのジャンルとして見てハイレベルで、かつその組み合わせの妙を最大限に楽しめる一冊。
これに関してはあんまり語るよりはとにかく“良い”から読んで!と言いたいです。

・雪が白いとき、かつそのときに限り
上で書いた「色のない緑」の陸秋槎氏による学園ミステリ。
この作品はすごくロジカルです。タイトルからしてそうですが、物語の進行に論理学的な背景を感じる。それでいて要所要所の描写が美しい。雪の降る様の美しさと残酷さだったり、学校という空間の息苦しさだったり、流れた血の色だったり。「美しい風景は百合」みたいな言説がありますが、この情景描写は百合作品としての大きな魅力になっているでしょう。
さて、上記の通りこれは論理で進む作品です。ミステリなので、もちろん事件の謎について推理するんですが、ホワイダニットにも重点を置いて推理する(5年前の事件との二重構造のため、こういう推理小説っぽい視点が自覚的に持ち出される)ことで、百合のオタクがやるような感情の考察が推理に含まれるのが面白い。逆を言うと、女女間の感情がミステリの謎になるような複雑さを持つものということ。ミステリ特有の予想外性があり、かつ少女の感情として生々しい。
謎が明かされるカタルシスと同居する、感情の暴露されるある種の怖さが、百合とミステリの組み合わせとしても新しい読書体験となりました。

映画

・さよならくちびる
解散を控えたデュオ「ハルレオ」と、その付き人の男・シマの3人が、ラストライブとなるツアーを旅するストーリーです。
私個人としてこの映画に惹かれたのは、最初は関係性よりもその空気感でした。ハルもレオもほとんど常に態度が悪い。シンガーでありながら喫煙や飲酒をしまくる。ライブハウスの裏の退廃的な雰囲気。長距離の車旅行。こういった単語にピンと来る人には、この映画の雰囲気はたまらないでしょう。曲も良い。
百合の話をすると、男を含む関係性なので好みは分かれると思います。私個人としては、シマの存在がハルレオの関係性に与えた影響がすごく魅力的に感じました。
彼自身ちゃんとした人(というと正確ではないが、ハルとレオはもっと変な人なので)で、二人の関係を尊重して対等であろうとしているので「百合に挟まれる男」では全然ないんですよね。むしろ百合に巻き込まれる男。マイベスト「百合作品に出てくる男」と言ってもいい。
さて、関係性について語ると、物語はハルレオの解散が決定しているところから始まります。つまりこの3人で作った関係がうまくいかなかったのは前提で、話が進むにつれその理由がわかっていきます。それも決定的な出来事が示されるわけではなくと、一緒に過ごす時間の端々を見るにつけ「これは続かないわ……」となってしまう。基本的にこの映画言葉で語るシーンが少ないんですが、演出的効果とともにディスコミュニケーションの現れにもなっているのが上手い。恋愛としての矢印はハルからレオに向くわけなんですが、レオの方の心情も並々ならぬものがあります。自分を拾い上げた存在への憧れだったり、アーティストとしての力への羨望だったり。そういう面を見ると、逆に素直に恋愛感情がベースにあるハルの方が無関心に見えたりもする。
こうして示される非対称性も、「うまくいかなかった理由」であり切なくも美しい。
ギスギスしてばかりだった「3人でいる空間」が、最後にはたまらなく愛おしくなる、そんな作品です。

・ターミネーター:ニュー・フェイト
2019年には、ターミネーターが百合になる。
名作「ターミネーター2」の続編として制作された映画です。過去作とフォーマットは共通しており、ターミネーターに襲われるダニーを未来から現れたグレースが守るというストーリー。
守る側も対象も女性になることで、意外なほど強い百合作品になります。
「あなたを守るため」に現れたという関係は、「まどマギ」を例に出すまでもなく現代の百合において定番と言ってもいい。この映画は間違いなく、その百合の王道パターンのひとつをやりきった作品でした。
そんな王道の中でも、守られる側であるダニーの意志について丁寧に示してくれたのが、関係性を描く作品として素晴らしい。
グレースはダニーの安全を第一に考えて、彼女が危険に晒される作戦に反対しますが、ダニーはそれを拒否します(このパターンも定番ですね)。「ターミネーター2」でジョンが勇気を出して行動するのに近いですが、二人の関係性としてはもう少し踏み込んだものになっていて、未来のグレースにとってダニーがどんな存在であるかに繋がってくる。ダニーがどんな人間であるか、グレースが守ろうとする思いへと回収される様は本当に興奮しました。
バトル・アクション作品で百合をやる、そのど真ん中をやったのがターミネーターの続編。これが2019年に生きる喜びです。

アニメ

・Re:ステージ!ドリームデイズ♪
2019年7月から放送された、メディアミックスプロジェクト「Re:ステージ!」のアニメ版です。公式のキャッチフレーズは「仲間とともに夢を追いかける女子中学生たちのアイドルストーリー」。
「Re」とあるように、再起がひとつのテーマになっています。メインとなる6人組ユニットKiRaRe(キラリ)は、全員がどこかで挫折を味わった子たちです。リステには他に4つのユニットが存在しますが、アニメ12話のストーリーはほぼこのKiRaReが中心となって進みます。 KiRaReは6人組ですが、綺麗に2人ずつ、3組のカップルに分かれます。完全固定。個人的にはここが嬉しかったポイントです。
百合として見る上での魅力として、2つの点に注目します。
第一に、夢を共有することの重さ。
まだ若い、幼いと言ってもいい、彼女たちが再び得た夢は、人格に、生き方に結びつくほどのもので、それが全てだと錯覚してしまうほどのものです。
彼女らの再起には、パートナーの存在が必要不可欠でした(仲間全員がそれに寄与したとはいえ、特に大きな役割を果たした存在として)。夢に向かうパートナーとしての相手の大切さは、あまりに切実。なので仲を深めていくうちに大きな愛で結ばれる。
ここでだいぶ過程すっ飛ばしたなと思われるかもしれませんが、彼女たちにとって大きな違いはないのです。
たぶんリステのシナリオ、アイドルとしての仲間意識と恋愛感情に明確な境界線はないものとして描いていると思う。シリーズ構成で3組がそれぞれ「初恋」「バカップル」「熟年夫婦」と言っているくらいだし。
ここで第二のポイントについて語りたいと思います。それは中学生設定ゆえの距離感。
リステのキャラは中学生感が絶妙で、舞菜(1年生、おとなしい方)は私服を自分で選んでいなかったり、紗由が親との喧嘩で家出したり。1年生と3年生の子とで行動にかなり差が出てたりするのもそれっぽいです。
そして、愛情表現も中学生ならではのものです。例にとると、9話の舞菜と紗由。
舞菜は家を飛び出した紗由を家に泊め、お風呂に一緒に入り(その間にもガンガンにスキンシップしながら)、終いには一緒にベッドの中で「ずっと一緒」と言い合う。
それ以外にもかなりスキンシップが多かったり、あとはリステップ(アプリの方)のストーリーとかだと、かなり踏み込んだ表現で愛を語ることもある。
まさに中学生、恋愛に興味は持ち始めながら、社会的な責任とか立場とかは深く考えていないくらいだからこれができるんだと思います。
もしかしたら、勢いで言ってるかもしれない。だけどそこが良い、と思わせてくれる。将来になって考え直して、そう上手くいかないと思ったとしても、そのときの感情は間違いなく本物で価値あるもの。それに、「挫折したって何度でもやり直せる」のがこの作品のテーマ。そうなるともうこの子たち無敵です。
アニメが終わった今、メインの展開はリステップになりましたが、そちらでも濃厚な関係性が広がっています。アニメで認知度は広まったものの、まだまだ知られるべき場所に行き届いていない印象があります。……というところで、1月からの再放送。新番組だと思って追いつくチャンスがここにある。

・キラッとプリ☆チャン(2ndシーズン)
キラッとプリ☆チャンはプリティーリズム、プリパラ に連なるプリティーシリーズの現行作品。動画配信者が題材で、「自分発信」をテーマとして2018年にスタートしました。現在は3rdシーズンの放送も決まっています。
2019年に購買行動を決めたもの、ということで続き物・続編は基本的に入れていないのですが、例外的にここは入れたいと思います。
ここまで作品を語ってくる上で、「百合は恋愛感情に限らない」「恋愛とそれ以外の感情の境界線がない」ケースについて触れてきました。アニメプリチャンは、1年目から友情を描いてきたコンテンツです。組み合わせによっては「明らかにそれ以上の感情だろう」と語れる部分もありますが、それはそうと。
1stシーズンだと、主人公チームのミラクルキラッツよりメルティックスター側に関係性として強く見える要素は多かったと思います。
キラッツ側は割とチーム結成も3人ライブまでもすんなり行っているのに対して、メルティックは幼い頃からの仲・一時の別れを選んだ理由……とドラマがあり、かつ信頼で結ばれたチームということで、百合のオタク的視点ではこちらの方が関係性として強い印象がありました(チャンは越境カップリングが強くもあるんですが、全体的な傾向として)。
そして2ndシーズンになり、レギュラーが増えたことで関係性は加速します。リングマリィを結成するアイドル金森まりあ・黒川すずと、バーチャルプリチャンアイドルのだいあ、そして同じ名前を持つ内気な少女の虹ノ咲だいあ。
リングマリィについては、「かわいい」にこだわる(そのこだわりは初見の人が想像する100倍くらい)のまりあと「かっこいい」アイドルを目指すすず。最初はまりあが一方的にすずに迫る関係だったのが、徐々にお互いを認めるようになってゆく。
ただ、相手の個性に自分を当てはめることはできないことも浮き彫りになる。
お互いを求めながらも、信念の違いのある二人が、チームを結成するまでのストーリーは、チーム曲「インディビジュアル・ジュエル」まで含めて見所です。そしてその後の話で一転カップルっぷりを見せつけてくれるのも最高。
そして虹ノ咲さんの方は、ちょうど節目となる話がこの12月に放送された現在進行形のエピソードです。
一般に百合のオタクは感情が大きいほど嬉しいものです。
虹ノ咲さんもオタク的感性を持っており、「友達」に大きなハードルを課している。彼女はある隠し事をしているのですが、そのことを気に病んでしまい、友達の資格がないと考えてしまう。
そこに現れるのが、キラッツの、その核である桃山みらいの友情。上では「淡白に見える」と書いていますが、それは相手に「求めない」友情でもある。この友情のあり方が虹ノ咲さんにとって救いとなる。これは1stシーズンから蒔かれた種がひとつの大きな花を咲かせた瞬間でした。
友情、関係性を描くアニメの中でこうした友情の形が描かれるのは、そこに悩む少女たちへのこれ以上ない暖かみの現れ。
このアニメが日曜の朝に放送され、支持を得ている事実は、百合のオタクとしての視点を超えて私の大きな希望となっています。

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