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受験生の親、学校選びのひとり言 - 元インター職員のつぶやき⑮

進路説明会に参加して

思春期真っ盛り、そして受験生となった息子の母として、避けられないことの一つが「学校見学」。去年も数校お邪魔したけど、息子本人のエンジンがかかっていなかった。

先日は息子が通う学校で、保護者を含めての進路説明会があった。行くまでは面倒くさいと思っていたけど、参加したら「行って良かった」と思えることがあった。まず会場である体育館に入ったら、生徒と保護者が隣同士で座ることになっていた。生徒も保護者も当日になって知らされたので、サプライズ感あり。説明会の間、先生方の話を聞いている時の我が子の様子や、他の家庭の様子も見られたことでどこか安心感があった。
印象に残ったことのひとつとして、学年主任が「志望校は生徒の皆さんが、主体となって決めてください。保護者の方が主体になって色んな学校を調べるのではなくて、自分が受験する、もしくは受験したいと思う学校は自分で調べてください。そしてなるべく多くの学校見学に、足を運んでください」と言ったことだ。この数か月、息子からは「どうせママが色々調べるんだよね」という主体性の無さを感じていた。その主体性の無さが、わたしをイラつかせるのだ。「ママは小さい頃から英語や異文化に興味があって、コツコツとやってきたのよ。インターネットが無い時代だったから、一生懸命調べたんだよ。」と言っても、馬の耳に念仏というリアクションの息子。性格や育てきた環境が違うにしても、イライラは否定出来ない。

学校見学のプロセスを受験生の親として経験してみて、学校選びのポイントを自分なりに考えるようになった。そしてわたしがインターナショナルスクールに勤務していた時に、「インタナショナルスクールでの学校選びのポイントは何ですか?チェックポイントはどういったところですか?」とよく質問されていた感覚を思い出した。家庭によって、インタナショナルスクールに求める要素が微妙に違ってくる。わたしの回答は「学校に行くのは親でなく子供だから、子供にとって安全な設備が整っているのか。高い学費を高校卒業まで払う覚悟はあるのか?親も学校行事に関わることが沢山あるので、異文化を積極的に受け入れる精神的な準備はあるのか?」だった。日本的な概念で子供をインタナショナルスクールに入れて、こんなはずじゃなかったと嘆く保護者の話も聞いていたからだ。

立ち退き閉鎖になったプリスクールのニュース

少し前に、港区の某インタナショナルプリスクールが立ち退き閉鎖となったというニュースが話題になった。まずわたしの頭に浮かんだのは、「どういうことなの?」という感想だった。調べてみると学校のトップが教育現場(特に幼児教育)での経験が皆無だったことには目を疑った。老舗組インター(わたしが働いていた調布市の学校も含め、創立して100年以上)のトップである学長は、教員経験を積んできた人たちだ。実際に教員として、生徒や保護者として接してきた経験は机上の空論でない。学校に対する信頼感に繋がってくる。
この立ち退き閉鎖となったプリスクールに対しては、「キャットストリートとか西麻布とかビバリーヒルズに、いわゆるキラキラな場所だけに学校を設立する意味はどうして?」「教員のプロフィールが無いのはどうして?(すぐに教員が辞めている?)と疑問が尽きない。わたしの学校選びのポイントとしているのは、「①学校のトップの教員経験②(私立校の場合)家族経営か否か③学校とPTAの関わり④会計報告が毎年明確か」という点。これらの情報は、インターネットいくらでも見つかる。
もしプレスクールを含めてインタナショナルスクールを選ぶなら、日本語の口コミだけでなく、英語での学校口コミもチェックする。学校はいくらでも、自分たちの長所をアピールする。けれどもこの世に欠点がない、完璧なものはない。学校もそう。親なら誰でも、大切な我が子を入学させてから「学校選びに失敗した」なんて悲しい経験は避けたいはずだ。

インタナショナルスクールの高校では

以前働いていたインターは、6~7割の生徒がアメリカの大学に進学している。10年生(日本でいう高1)には、「夏休み中に出来るだけ、多くの大学のオープンキャンパスに参加しなさい。」という進路説明会が何度かあった。11年生の学年度になると、進路説明会は何度となく開かれる。12年生(高3)になってから、慌てて学校選びをすることは多くの面でマイナスとなる。インターネットから感じる雰囲気だけでなく、実際に学校に足を運んでみないとわからないことが沢山ある、ということ。そして学費面を考慮して、必ず保護者とよく話し合って志望校を決めなさい」という話が何度もあった。あまり日本の学校とは変わらない感じ。違いを感じたのは、保護者が学校に足を運び、ガイダンス・カウンセラーと我が子を交えて何度も話していることだった。きちんとしたインタナショナルスクールなら、常駐のガイダンス・カウンセラーがいる。生徒の人数にもよるけど、私が働いていたインターは初等部と中等部にそれぞれ2人、高等部に3人いた。みんな「聞き上手」で落ち着いた印象の人物だった。
そうそうアメリカの大学は、学費に独自のルールがある。例えばワシントン州にある大学だったら、ワシントン州に住民登録をしていているか否かで学費が違ってくる。州立だけでなく、私立大学もそうだと聞いた時は耳を疑った。そしてインタナショナルスクールに行っていて、ネイティブ並みに英語がわかっていても、日本人の生徒がアメリカの大学に受かってとしても、学費は一瞬絶句するようなえげつない金額なのだ。

どうせ受かりっこないでしょ、で受験させた?

当時わたしは秘書の中で一番若かったこともあってか、高校生たちはわたしと話すことに抵抗感が少なかったようだ。大学の合否通知が届く春になると、12年生がイライラしている場面に出くわした。声をかけてみると、理由は様々だったけど印象に残っているのは、「せっかく受かったのに、親から学費が高すぎる、どうせ受かりっこないと思って受験させたんだよって言われた」という言葉だった。「なんで親はそういう大学に受験させたの?」と聞いてみると「親は受験させなかったら、あとあとまでずっと受験させてくれなかったと文句を言われる。それなら受験させて、実力不足を分からせた方がいい、諦めがつくと思ったんです。」という答えだった。
「受験していいって親からOKもらったら、頑張るじゃん。小論文(アメリカの大学の入学選考には、小論文が必ずと言っていいほど含まれる)だって、すごく頑張って書くよね。」と私が言うと、「そう思いますよね!ほら、わかっていないのは、うちの親だけ!」と怒りを露わにしていた。親の気持ちもわからなくない、けれども「どうせ受かりっこない」という投げやりな気持ちで受験させることは、子供の気持ちを多かれ少なかれ傷つけることになる。その後の親子関係も悪影響を及ぼしてしまう。

自分だけの人生を切り開いてほしい

学校見学の予定を入れている今年の夏休み。いつもとは違う夏休みになることは、明らかだ。わたしが息子に望むのは「あの時頑張っていれば、もっと調べていれば」という後悔が少なくあってほしい。後悔が無い人生を送っている人は少ないだろうけど、自分の行動や思考次第で、後悔が少ない人生を送ることは出来ると思っている。
息子よ、春に笑うか泣くかは、あなた次第。1年後、3年後に「オレ、この学校を選んで良かった」と言えるように、チャレンジしてみなさい。そして、自分だけの人生を切り開きなさい。ママはいつでも、あなたの味方だからね。



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