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祈りにも似た自己療養

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書くことで、自分の輪郭を保とうとする私がいます。
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#ことば

瑞々しい感覚を忘れたくはないな、という話。

. 瑞々しい感覚を、忘れたくはないな、という話。 朝スキッと起きれた日があったこと、誰かと語らいながらゆっくりとあじわって食事をするということ、疲れた体を湯船に浸せるだけのこころの余裕、太陽が傾いていくだけの様を綺麗だと思えること、目配せの意味が分かった瞬間。 ―瑞々しさの尺度をどこに置くかは、その日のわたしの気分次第なんだけど。 乾いてない感覚をどこかに持っていたいな、と思う。(“持つ”というより、“見つける”の方が正しい気もする。)その感覚は近くにあっても、遠くにあるん

空気のような愛を、

子どもの頃のお気に入りの遊びは、開け放した窓から吹き込む風に膨らむカーテンの裾に、ぺたんと座り込むこと。 レースのカーテンが私のからだを撫でるのが気持ち良くって、好きだった。吹き込む風が寄せては引いて、当時行ったことのなかった海を想った。6歳のちいさな肺いっぱいに風を吸い込んではそれを吐き、レースの影を手で掬い、風のにおいで鼻腔を満たし、木漏れ日がきらきらさんざめくのを眺め、時折カーテンのお腹をくぐり抜けて外に出て庭の芝生の緑に触れた。 私の持つなかで、いちばん透明な記憶であ

虚(がらんどう)な言葉の話 

私たちは言葉を並べて意思疎通をし、 相手のことを知り、 自分の中の感情になまえを付け、 心に溜まるモノ、意思と意志、感情、思慮、思考、、、、、それら全てを言葉によって消化しています。 辞書を捲れば、言葉が意味を従えて並んでいるように、私とあなたの間にある言葉たちは、それぞれ共通の、全く同じ意味を抱えてそこにあります。 私の「嬉しい」とあなたの「嬉しい」 私の「悲しい」とあなたの「悲しい」 私の「綺麗」とあなたの「綺麗」 ほら、書いてみたら全く一緒だ、 寸分違わず同じ

年越しと私、撮る理由。

毎年毎年、年を越しても何も変わらない自分に苛つくから冬休みは好きじゃない。 卒業したり入学したり、進級したり部活を辞めたり、環境が変わったところで (自分で無理やり変えたところで) 自分は何も変わらなくて、そういう自分が大嫌いなまま、もう18になるだなんて信じたくない。 時間なんて止まればいいのに。 そんなことを思っていたら、写真を好きになった理由が分かった気がしました。 この世界は美しいもので溢れているのに、わたしの心はスプーンひと匙分の感情しか乗せきれま