見出し画像

【レポート】てつがくカフェ「このまちに住むこと」

てつがくカフェ「このまちに住むこと」

10月1日。秋の気配が漂うけれど金木犀はまだ香らない、そんな日曜日の江東区はStudio04にて、「とある窓」の関連企画として”てつがくカフェ”を開きました。

テーマは「このまちに住むこと」。

「とある窓」は、「その窓からどんな風景が見えますか」という問いを携えたリサーチャーが、江東区に住む人々にインタビューし、各々が聞いた話・語り手と一緒に見た風景の写真を展示しています。

コミュニティスペース、飲食店、自室、自転車店などさまざまな「窓」をともに見つめながら、このまち(江東区)に住むようになった物語が語られていきます。時には、語り手の人生や思いが織り混ざります。

今回のてつがくカフェでは、対話の前にみんなで展示を見ましたが、「このまち」は江東区のことではなく、あくまで参加者一人ひとりの定義としました。

私たちはどうして、その土地を選んで住むのか。どういう時にその土地を「このまち」と感じるのか。「住む」と一口に言ってもさまざまな形があるのでは。集まった5人でゆっくり話しました。

てつがくカフェとは

ちなみに「てつがくカフェ」とは、私たちが普段あたり前だと思っていることや、最近気になることについて、集まった人と一緒に語り合い、考える場です。お茶を飲みながらゆっくり、自分の考えをあらためて言葉にしたり、相手の話を聞いたりして、対話によって自分の考えを深めていきます。

一般的には「哲学対話」と呼ばれますが、哲学の知識などは関係なく、少し立ち止まって考えたいなあ、誰か他の人の考えも聞いてみたいなあと思ったら誰でも参加できます。

主催者や開催場所によってやり方はさまざまですが、NOOKでは東北で実践してきたスタイル(自由に話す➡キーワードを出す➡問いを作る)で進めることが多いです。

「このまち」って?「住む」って?「ふるさと」?

まず最初に「このまちに住むこと」というテーマや、展示から喚起され考えたことなどを自由に話しました。つい最近、関西から東京に引っ越してきたという人は「まだ東京を”このまち”と感じられない。住み慣れると自分にとっての”このまち”と思うだろう」と言います。別の人は、以前住んでいた土地の思い出を語りながら「○○市といった行政的な区域と自分が感じる”まち”の範囲は異なる。ここでたくさん遊んだ、このお店に何度も来た、など思い出によって自分にとっての”このまち”はアメーバ状に変わる」と語りました。

それを受けて次の人が「”ここに住みたい”といった主体的な意志があると”このまち”と感じるのでは」と言いました。一方で、ファシリテーターの八木は「自分で選んだ今住んでいるまち(東京)より、生まれ育った地元(群馬)のほうが”このまち”と感じる」と反対の感覚を伝えました。さらに別の人が「自分は生まれ育った実家に今も住んでいるが、そこは”このまち”感はない。学校や職場は少し離れた場所にあるので、まちが生き生きしている時間にいないからかも?ただ、地元のお祭りを見ると幼いころに参加した思い出がよみがえったりして、”ここで育ったんだ”という実感がわく」と語りました。

どうやら、”このまち”と思う感覚は人によってかなり差がありますが、自分の意志・そこで過ごした時間・思い出の量などに関係しそうです。

インドで生まれ育ち、仕事のため江東区に越してきたという人は「ふるさとのインドと比べて江東区は全然違う。静かで木々が多い」と話しました。違うというものの、この土地に心地よさを感じている様子でした。”ふるさと”という言葉が出てきたところでNOOKの瀬尾から「東京出身の人にとって”ふるさと”の説明しにくさがある」と投げかけます。「陸前高田の人たちは、個人ではなく共同体として獲得する”このまち”の感覚があったように思う。そもそも”個人”という言葉の感覚が、東京出身の自分とは異なっていた」と話しました。例えば、まちの子ども誰もが遊んだことのある大きな石だとか、何か共有するものがある人どうしの感覚によって育まれるのが、高田の人たちにとっての”ふるさと”だったように思うと。すると私たちの間に「何が失われると”ふるさと”がなくなるのか」「共同体に必要なものって?」という疑問が生まれてきました。

それらの疑問に対し、ある人は「共同体に必要なのは、同じ価値観を共有しているかどうか」と語り、また別の人は「実家、バイト先、シェアハウスなど、誰かと一緒に過ごした記憶が蓄積した場所がなくなると、ふるさとがなくなる」と考えました。前半の対話に比べてだんだんと「記憶」「思い出」といった言葉が「自分だけのものではない」という考えが、なんとなく漂ってきました。

ここまでの話を受け次のステップとして、今回参加した5人(とNOOKメンバー)の間で関心が重なっている言葉や、気になっている「キーワード」を抽出しました。なぜそれがキーワードと感じるのかという理由も添えてもらうことで、私たちが今モヤモヤしていることが少しずつ、言葉として浮かび上がってきます。

・ふるさと
・共同体
・しずかな(音?)
・なつかしさ、愛着
・記憶(記憶を共有することの難しさ)
・意志(住み続けるってどういう判断でするのか)
・過ごしやすさ、しがらみ
・自治(このまちを何とかしたいと思う感覚?課題の共有?)
・生活圏(つながってもないけれど愛着がある場所?)
・友達、顔見知り

これらのキーワードを参考にしながら、3つ目のステップ「問いをつくる」にチャレンジしました。「このまちに住むこと」をさらに深く考えるために、私たち自身に投げかけるとしたら、どんな言葉になるのか。

・過ごしやすいと思うつながりって何だろう?
・どんな住み方があるんだろう?
・まちの記憶はどうしたら自分のものになるのだろう?
・”ふるさと”ってなんだろう?
・なにをもって”ふるさと”と言うのだろう?

最後に、この中でも特に気になるものを聞いてみると「どんな住み方があるんだろう?」という問いを、次回に持ち越すことにしました。

次回について


Studio04でのてつがくカフェは、今後も定期的に開催します。第2回は12月10日(日)、テーマは10月に出た問い「どんな住み方があるんだろう?」を受けて、「どんなふうに住みたい?」として実施しました。
私たちは、どこで、誰と、どんな形で住むことを心地よいと思うのか、どうしてそのように住みたいと思うのか、そもそも最近ではさまざまな「住む」のあり方があるらしい……

どんなやりとりがあったのか、またレポートにできればと思います。
てつがくカフェ、第3回は年明け2月頃に実施予定です。ぜひご参加頂けたら嬉しいです。

レポート:八木まどか(会社員)


**
書き手の励みになりますので、ハートやシェアもなにとぞよろしくお願いします~。NOOKアカウントのフォローもよろしくお願いします!
***

NOOK
Web

Instagram


twitter



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?