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究極のブランドは、感情をついてくる。顧客の「感情づくり」というブランディングのはじめ方

こんにちは。ノンバーバル代表の冨士です。

毎度ですが、簡単に自己紹介。
私は、ブランディングデザインの専門会社を経営し、13年間ブランデイングディレクターとして、事業経営や商品・サービスのブランディングにはじまり、日々、企業のブランディングデザインのお仕事をしています。

今回のテーマは...
『 究極のブランドは、感情をついてくる。顧客の「感情づくり」というブランディングのはじめ方』のお話をします。

正直、どんなテーマで話そうかと迷っていました。
ブランディングのはじめ方」というテーマでは、もうすでに優秀なブランディングに関わる方々がよくお話をしていますので、ここでは少しだけ脳科学や行動心理学などで、実証されている研究データと私のブランド体験も交えながら、できるだけわかりやすく砕いて、お話をしますね。
では、さっそく。

「その、香水のせいだよ。」

私は今のブランディング会社(NONVERBAL®︎,Inc. )を起業した時、自分の会社の理念(何を概念として事業をするべきかということを)どうしようかなぁ〜...なんて、軽〜く、考えていた頃のお話から入りたいと思います。

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当時、あしばやに大阪梅田駅の地下街を歩いていた私は、ふわっ!と漂ってきた甘〜い香りに、突然に懐かしさとともに心を奪われました。その一瞬で中学時代に好きだった人の姿がフラッシュバック。失恋したほろ苦い思い出とともに...。失恋の話はどーでもいい話ですが、私はその香りに後ろ髪を引かれるかのように振り返って、あたりを見渡しましたが、どこからその香りが漂ってきたのか、結局分からず...。しかし、その脳裏に焼きつく香りは、無意識にも昔の私の記憶や感情をまんまと蘇らせたのです。

そういえば、2020年に爆発的にヒットした瑛人さんの曲「香水」にもあるような出来事ですね。このような体験、誰しもが経験したことがあるのではないかと思います。私自身もこれが初めてではなかったのですが、この私の頭の中に描かれる想起は、人の感情や行動を引き起こす?この効果って何...?と気になりはじめました。

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それから調べていくと、
実は、これが「プルースト効果」ということをその時に知りました。

このプルースト効果を引き起こした嗅覚は、これから私の事業であるブランディングやデザインで、めちゃくちゃ大切なんじゃね?と。

私はこの体験を通して「これだ!」と、人の五感とブランドに関しての研究をもとにデザインの事業を実施していくことになりました。

少々専門的な解説も加えますが、
嗅覚(香り)」は、
【鼻→嗅上皮→嗅細胞→嗅球→大脳(辺縁系)】の順で脳へ到達します。

大脳(辺縁系)は喜怒哀楽などの感情、本能的な行動を司る脳。嗅覚はこの大脳と直接結びついており、これは五感の中で唯一「嗅覚」だけが持つ特徴でもあります。

感情ブランディングの大切さ


それからというもの、
その他の視覚、聴覚、嗅覚、触覚、味覚の器官の感覚と脳との連結関係、
そして脳から心へ送る信号などの研究データも学ぶきっかけになりました。

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あまり、難しい言葉では伝わりにくいので
私の会社の事業コンセプトとして生まれた言葉が…これです。

「五感でつくる。モノづくりよりも、コトづくり。」という理念。

ブランドをデザインするとき、「脳裏に焼きついて離れない。」という状態がどのようにしてが作られるのかということを日々、この理念から考えるようになりました。

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人の「認知」は、主に視覚で83%が依存
し、
人の「感情」は、主に嗅覚で75%が依存している事実。

これって、面白くないですか?

そしてさらには、
日本人の感受性は、欧米の国民に比べて30%も高いっ!ようです。
(たしかに日本には、繊細な表現が多いですよね^^)

また、世界の時価総額ランキング。平成元年(1989年)以来、世界ランキングの上位だった日本企業のブランドがここ近年30年くらいで欧米企業のブランドにどんどん塗り替えられてる事実...。私は、この二つの事実から、日本のマーケットでブランディングをしていく可能性って...ものすごくあるんじゃね!(本日二度目)ってなったわけです。

つまり、これからますます日本のブランディング需要は高くなり、
日本のブランド価値をさらに磨き、価値を向上させていくことでインバウンドの国内消費を増やし、アウトバウンドとして日本の企業が世界でさらに活躍する役目になるのではないかと思い、胸にトキメキが宿った瞬間でした。

では、

 どのようにすれば、日本のブランド価値を向上させることができるか?
 再び、世界に日本のブランドを轟かせることができるのか?

ヒントは...

(顧客の)知覚品質の設計デザイン にあります。

これには、ブランド戦略家のマーチン・リンストロームも
興味深いコメントを残しています。

フォーチュン・グローバル500※ のブランドのほとんどが「視覚」「聴覚」の2つの次元にしか焦点を当てておらず、その他の感覚含むブランド・プラットフォームの構築がまだまだ、なされていない。

※ フォーチュン・グローバル500
フォーチュン誌が毎年1回発表する世界中の企業を対象とした総収益ランキングのこと。

この論文より顧客の知覚品質である「知覚」部分を分析し、五感をコンバーティブル(融合させ)拡大することで、まだまだブランディングの未来に可能性があることを物語っています。

五感ブランドの恐ろしいほどの破壊力


「視覚」だけのデザインにとどまった知覚品質だけでは印象としても弱く、
五感を通した設計デザインがいかに重要なのかをわかりやすく、私のブランド体験よりお話をします。

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みなさんは、次のような感覚体験をしたことはありませんか?

<五感ブランド体験>
駅のホームへ向かう途中、何やら芳醇なバターの香りが漂ってくる...
目を向けるとそこには、キレイに並んだワッフル。
バター香が強烈に鼻から通り、大脳にインパクトを与え、
口の奥で唾液を噛み締めている自分がいた。
その瞬間、帰り際の私の頭の中には「会社」「仲間」「お土産」などの
想起をまんまと、香りの嗅覚によって捕らえられた
のだ。
目線を看板にやると...マネケンのワッフルだ。
さてさて、持ち帰る用と一つは、自分用にと。
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帰路の途中、その芳醇なバターの香りを確かめるべく、
口に頬張ると「シャリッ」と独特なあの食感。
甘い「味覚」に「(口の中の)触覚」が織りなしていく。

まさにこの体験こそ、五感ブランドの体験

視覚や嗅覚と限定されたものではなく、
複合された「(顧客の)ブランド知覚品質」を表現している。

私はその体験を体感で覚えているので、「その香り」だけで「マネケン」が頭に浮かび、連想で味さえも口の中でイメージできてしまう。

この前なんか牛乳を飲んだだけで「マネケン」のワッフルを口の中で、イメージできてしまった...(驚)牛乳にしみるワッフル。そこに存在しないものを勝手に口の中でマリアージュしてしまうほどに...。

これが、五感ブランドの恐ろしいほどの威力である。


身の回りにある五感設計された事例


生活者が強〜く、ロイヤルティ(愛着)を感じているものには、
そのような五感をコンバーティブルに融合させては(顧客の)知覚品質の設計デザインがされていることが多い。

例えば...(自分が愛着を持っている)
映画の音響、ホテルやカフェの香り、グラノーラの食感、新車の香りなど。

もし、それらが下記のようになっていたら、どうだろうか?

<こうなってたら、どう?>
 字幕だけでBGMのない映画
 外と香りの変わらないホテル
 コーヒーの香りが漂っていないカフェ
 ふにゃふにゃに湿ったようなグラノーラ
 新車の香りのしない新車

私の知覚品質レベルは、ダダさがり...。

しかしこれらすべては、ブランド知覚品質を向上させるために紐づいた体験価値そのもののデザイン。これは、(企業やメーカーがよく広告や販促でいう)製品の機能性の話などは全く関係ない話であることを理解していただきたい。

この感覚の重要性を誰しもが理解しているはずなのに
なぜ、商品・サービス開発などを行うときに、五感ブランディングの設計・デザインを無視できるのか(ちゃんと考えて、設計しないのか)。

売れない、売れ続けない理由の一つが
この五感設計、感覚のデザインをしていないから!
に他ならない。

Clubhouseでの五感ブランディング活用事例

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これらのことは、ブランド開発の時に限ってではない。

先日、私はClubhouseで知り合ったデザイナーさんと「ブランディングとデザインの現場トーク」というルームを立ち上げ、うちのスタッフの高橋くんも参加し、彼はファシリテーターをしてくれた。Clubhouseではよくあることだが、トークに熱が入ると、ルームを締めるタイミングがなかなか難しい。私含め、モデレーター二人が締め方のパスを出し合っていると、そんな空気感を読み取ってか、彼は突然に「蛍の光」を流し始めたのだ。その瞬間にルーム内に「もう、そろそろ終わり〜♪」という空気感が漂う。誰もが「そろそろ、終わりましょうか。」と言いにくいことを聴覚が代役してくれたわけです。まさに「蛍の光=帰る合図」という聴覚からの想起が世間にブランディングされている「蛍の光」を活用した事例であった。

想起できるブランドの設計式


前回の「ブランディングで大切な3つのこと」で話しましたが、

 顧客の認知と想起
 顧客の知覚品質と価値
 顧客の信頼と愛着

この3つに「ブランディングのつくり方」という流れを組めば、

想起できるブランド=(認知→知覚品質→愛着)×(顧客の五感デザイン)


となる設計、構築イメージです。

認知フェーズでも、知覚品質フェーズでも、愛着フェーズでも、どのフェーズでも顧客の五感覚を考査して設計していくことが重要です。

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そこに「刺激」というアイデアスパイスを混ぜ、差異化を生み出していくことで、すべてのレベルの向上を目指すことができます。つまりは、刺激的な認知であり、刺激的な知覚品質により向上した価値を生み出し、ある意味では癖になり、その想起連想をポジティブなものへ変えられたなら、それはあなたにとって忘れられない愛着へと変えていくブランドとなるでしょう。

これらの顧客の心理的行動こそ、ブランド化していく上で切っても切り離せない親密な関係であることが理解していただけたかと思います。

五感ブランディングの大切な4つのポイント

五感ブランディングを考えていく上で重要な考え方として、
この下記の点を踏まえて目的を達成することが大切なポイントです。

✅ 顧客の感情を取り込むことができているか
 顧客との知覚品質のギャップを埋められているか
 顧客を軸にしたブランドプラットフォームを構築できているか
 顧客を裏切らないために商標登録ができているか

これからブランドを構築しようと考えている人や自社の製品をリ・ブランドして再構築をしようとしている人はチェックしてみてください。

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これからのブランディングでは、
急速している情報爆発時代で飽和している中で、マーケティング・コミュニケーションである広告や販促などをこれ以上に増やしてもなかなか効果が薄く、紙や情報のゴミが増えるだけになりかねません。視覚のみのグラフィック要素だけではなく、「人の心(感情)」というものを真ん中においた新しい感覚を設計するビジョナライズがますます重要になってくるでしょう。

みなさま、おつかれさまです。
ここまで、長文を読んでいただきありがとうございました。



【 会社概要 】 NONVERBAL®︎,Inc.について
13年間で1500案件以上の企業のブランディングで信頼と実績を積み上げ、アジアや日本企業のブランディングデザインを専門事業として、活動しています。会社概要、実績資料、BtoB、BtoC、採用、商品やサービスブランディングに関するホワイトペーパーなどは下記リンクの当社サイト(下のリンク先)より無料にてダウンロードしていただけます。

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