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あなたの見守ったこの青い島を

7年ぶりに波照間島にかえってきました。

初めてひとり旅をして、はじめて宿の人と島を回って。はじめて船に乗って、熱が出てしまいそうなくらいに熱っぽかったあの旅があった島、波照間島に。

7年前のあの日は、ヒロさんと3日間をこの島で過ごして。

港だっけな。どこだったっけな。島を自転車でぐるぐる回っている時に声をかけてくれたのがヒロさんだった。
1年の半分を沖縄、もう半分を長野でスノボしながら過ごしている、と教えてもらったとき、そんな生活をしている人がいるの?と22歳だったわたしは本当に心の底から驚愕して。

一緒に夜、サトウキビ畑で満点の星空の下、ごろり横になって。あまりにもきれいで興奮を抑えられずに「ねえ。あのね星が降りそうなんだよ」って幼馴染にすぐに連絡した。

一緒にかき氷も食べたし、お別れの日は港に見送りにいった。
「石垣島にしばらくいるから、また戻ってきたら連絡してね」って声をかけてくれて、次の次の日、石垣島でおいしい石垣牛のステーキを食べた。

東京に帰ってからも、スノボを教えてくれたり、ご飯に出かけたり。
お兄ちゃんがいたらこんな感じだったかもなあと思いながら、ひとりで遊んで、ひとりで生きて、ひとりで旅する楽しさをたくさん教えてくれた。

そのあとお互い忙しくなって、数年ほど疎遠になって。

「ヒロさん、山に滑りにいったまま戻ってこなくなっちゃったんだ」
「遭難だと思う。春になっても、出てこなかったらしい」

共通の友人がそれだけひっそりわたしに伝えてくれた。
2年前、ヒロさんはわたしたちの前から姿を消してしまった。

でもなんだかふわふわと実感が湧かなくて。わたしは涙も流せずに、2年間を過ごしてしまった。なのに。

波照間島に足を踏み入れた瞬間、ぶわっと、思い出の波が押し寄せてきた。

どこまでも青い西浜が視界にはいった途端、胸の奥がツンと痛んで、涙がこぼれた。

ヒロさん、わたしは今、私たちが出会った波照間島にきています。
いろんな引き出しが開いてしまって、今更泣いたわたしを許してください。というか、「今更かよ」って笑ってください。

もうあなたがその目でこの青を捉えることは、ないけれど。

わたしは毎日この青を切り取りとろうと思います。ひたすらに。バカみたいに。

あなたのことを思い出しながら。


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