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社叢のいま

日本の都市の古き佳き場所は、一叢の木立とともに残っている。
新幹線の車窓から見る近江平野が面白い。伝統的な家が連なる集落にはその中に必ずひときわ高くそびえる流麗な屋根を持つ寺が見える。それに対して、田野の中には島のような小さな森に覆われて神社が佇んでいる。
仏と神。日本社会の中で、人々の意識や生活の面での役割とかそれぞれの位置づけの違いが、新幹線の車窓という少し離れたところから俯瞰して見ると、ランドスケープとして理解できる。
しばらくすると、新幹線は大河をいくつか渡り、ほどなく大都会名古屋に着く。無機的で巨大なビル。何もかもが人工的・直線的なデザインに囲まれた空間で、人々は無表情に電車を待つ。ここでは神仏の在り処もその役割も見えてこないだろう。社叢に代わり平地のランドマークとなっている巨大ビルの中核に鎮座しているのはいったいどんなものか。それが資本主義社会の神々なのかもしれない。
                   2022.9.22 上京中の車中にて

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