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1歳のときの気持ちに気付かせてくれた絵本

チューチューこいぬ|長新太 BL出版(1992年)

かあさんとはぐれてしまった子犬たち。
鳥、魚、月、男の人、人形……
いろいろな所へおっぱいをもらいに行くのだけど、おっぱいはでません。
さて、子犬たちはかあさんと会えるのか⁈
おっぱいは飲めるのかな。


この絵本を初めて読んだのは、2008年頃だったと思います。博多バスターミナルにある紀伊國屋書店福岡本店で。立ち読みでした。
立ち読みしながら、笑えて笑えてしかたなくて、でも読み終える頃には、どこからともなく涙がわいてきて、笑いながらぽろぽろぽろぽろと涙を流していました。

なんだろう。そのとき、この涙の訳は分からず、しばらく過ごしていました。

友人宅に遊びに行ったときのことです。友人は、もうすぐ3歳になる長男におっぱいをあげていました。「この子がおっぱいを飲みたいというまであげようと思う」と話していました。
「そっか、そっか、最近の子育てはそうったいね。うちの母とか『あたしはあんたば1歳で断乳させたし、おむつも1歳で取ったけんね』って自慢げに話しようけどね。昭和40年代の子育てとは違うね」
友人親子の姿が微笑ましく、ハッピーな気持ちになったのと同時に、なんとも言えない気持ちが私の中に残りました。

友人宅からの帰り道、その日あったことを思い返していました。そして、気付きました。

「あー。あたし、もっとおっぱい飲みたかったったい。だけん。『チューチューこいぬ』ば読んで涙が出たっちゃん」

本当に本当に、長新太は偉大なり。
長さんは、どんなお気持ちでこの作品を書かれた(描かれた)のかなぁ。
長さんも、もっとおっぱい飲みたかったのかなぁ。

2009年8月5日、このことを詩人・絵詞作家の内田麟太郎さんにお話しする機会に恵まれました。地元のFMラジオ局主催の絵本イベント会場でした。
内田さんが「この話、本に書けば」とおっしゃってくださいました。でも、どうやって書いていいのか分からず、15年経って、ここで初めて文字にしました。

『絵本があってよかったな』(架空社 2006年)
内田麟太郎さんが書かれた自伝的エッセーのタイトルです。



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