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「はじめての王朝文化辞典」読了

今年の大河ドラマ「光る君へ」を楽しみに見ている。
その理解の一助になるかなと思って買った本、チビチビ読み進めてようやく読了。
一応大学は国文科だったのだけど、中世女流文学にはそれほど興味がなかったので、今更ながらいろいろ興味深かった。

記録に残っているのは皇族、貴族の生活だから、これが平安時代の人々の暮らし、と思ってしまうのは違うのだろうとは思うが。
とにかく、何事につけても美しい物事に囲まれて暮らそうという感性の豊かさに感嘆する。
大陸から渡ってきた文化から派生しているのであっても、それを元に日本で熟成された文化なのだなと、改めて日本と言う国が好きになるし、日本に生まれたことを幸せに思った。

昭和生まれの身としては、自分が生まれ育った時代にはこういう感性は確かにちゃんと残っていた、引き継がれてきていたと思えるけど、令和の今はずいぶん失われてしまっているような気がしてしまう、というのはただ単に自分が年を取ったからなのだろうか。
今の若者にもこういう日本独自の文化的な美しさを感じる人はいるのだろうか。

作者の文体(語り口というのか)が面白い。
始めのうち、大学の講義文をテキスト化したものなのかな、と思った。
数行ごとに「長いですね、疲れましたか」なんていう文が出てくるのに、最初のうちは慣れなかったけど、読み進めるうちに心地よくなってきたから不思議。
各項目の解説の合間に、各作品からの引用や作品解説がされているのでとてもリアルにわかりやすい。
学生時代、ただただ原文を文法を元に読み解くような読み方をしていた時は、なかなか作品を味わうというところまではたどり着けなかった。
源氏物語だって結局マンガ(あさきゆめみし)で理解したのだったし。

源氏物語と言えば現代語訳が各種出ていて、与謝野晶子、谷崎潤一郎、円地綾子、田辺聖子、瀬戸内寂聴、あたりは読みかじったことがあるけど、どうしても途中で光源氏に嫌気がさしてしまって読み切れなかったのだった。
でもこの本で、各作品のほんの抜粋の解説を読むだけでも、当時の男女の関係、感覚、というのが実感として理解できるところがあったのは、特に収穫だったと思う。

個人的に一番興味深かったのは、最後に出てくる「夢」の部分。
私は割とはっきりした夢を見がちな体質(?)で、怖い夢にうなされることも多いのだが、そういうある意味普遍的な人間の動物的な部分は時が経っても何も変わら居ないんだなと、1000年前の人たちに親近感を感じたのだった。
つい先日もものすごく魘されて、あまりに酷かったらしく夫が小皿に盛り塩をして枕もとに置いてくれた。
今度魘されたら、「夢違え」の呪文を唱えてみようと思う。





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