若おかみは小学生!を見てきた
若おかみは小学生!を見ました。
最高に良い映画で児童文学でジュブナイルだった…(泣いてる)
※このエントリは、映画「若おかみは小学生!」のネタバレを多分に含みます
開始数分の反省
なんか勝手な先入観で、こういうタイプのアニメは性善説的な世界が基本になっているよな〜と己の倫理観を高めて臨んでいったんですけど、開始数分で完全にそれは違うよパンチが飛んできて殴られましたよね…
いやなにってあれなんですよ。「両親を失った子」ってもうアイコンとして「かわいそうな子」っていう属性がつくじゃないですか。私はいままで見てきたあれこれを参照して、これはそんな「かわいそうな子」が、悲しい過去を乗り越える成長譚なんだろうな!みたいなことを思いながら見ていたんですね。
そんな生優しいものじゃなかったです。生言ってすいやせんしたァッッ!!
実際繰り広げられた物語は、全然おっこちゃんを「かわいそうな子」としては描いてなくて、「両親を失った子がその事実を乗り越える」じゃなくて、「若おかみが若おかみとして成長する」話だったっていう…思ったより全然「若おかみは小学生!」でしたね。生言ってすいやせんしたァッッ!!
「かわいそうな子」ってわざわざ「」づけしているのは、「かわいそうな子」という描き方には少なからず第三者的な立場の押しつけが入っていると思っているからなんですね。本人が自分をかわいそうと思っているかと、別の人間(例えば製作者や視聴者)がかわいそうと思っているかって別じゃないですか。後者の視点が強いの、個人的に若干苦手意識があってですね…
でも、そういうある種の押しつけを、この作品からは感じなかったんです。そこがすごく好きで、また、何かの力を抜いた状態で見れたような気がしました。救われたというほど強い何かではないんですが、倫理観のない人間(主語巨大化)、倫理観の高い人間を常に警戒して生きているので…(?)
で、この作品の主軸は、おっこがと周り(妖怪含む)が影響しあい、おっこが自分自身の力で成長していくことにこそあったんです。その成長を見守る視点、というか、描き方の距離感がですね、めちゃくちゃ心地よかったんですよ。
ベースが性善説に寄りすぎていない感じがするというか…フェアでクレバーというか…明らかな両親が直接登場して「ずっとそばにいるからね、おっこ」とか言わない…そういう…そういう安易な救いを用意しない…そういう感じ…。
おっこに対する視線が性善説でも性悪説でもなくて、もっとニュートラルなところにあるのに、私は凄まじいまでの居心地のよさを感じました。
もう一回…生言ってすいやせんしたァッッ!!(使い方微妙にあってない気がする)
ていうかすごくない?この映画
途中から何かをダメにされてて微妙に正気で見れてなかったんだけど、もしかしてこの映画、ストーリーの組み立て方に無駄がなさすぎてないです?
あの、上でおっこが成長する軸、と簡単に言いましたが、多分これには若おかみとしての自覚と、親からの自立というニアリーイコールな2つの要素が含まれてて、それらを象徴する要素が相互に干渉しながら進んでいくのがこの作品の美しさだと思うんですね。抽象化しすぎてて何を言ってるのか全然わからなくなってる気がする。説明します。
まず若おかみとしての自覚=春の屋の人たち(スタッフやお客さん)に支えられながら、若おかみとしてがんばる!で、
親からの自立…は、まず、この作品上で親がどういうものであるかの定義が必要だと思うんですよ。
この作品における親…つまりおっこの両親は、絵に描いたような(絵に描いてある)いい両親と描かれています。彼らは無条件に無償の愛をおっこに向ける存在として描かれており、そして、事故によって急に失われる存在でもあります。おっこは急に、無条件で自身を肯定してくれる(無償の愛をくれる)存在であり、依存先(年齢を考えると当然ではある)を失います。
つまり、親っていうのは、本来すぐ側にあるべきだったのになくなってしまった、おっこの存在を全肯定してくれる存在です。
親からの自立は、本来時間をかけてゆっくりとなされるもののはずですが、おっこの場合、急に失われてしまいました。当然急に自立できるはずもなく、そして、倒れることもできなかった。後述しますが、倒れることは、本来寄り掛かるべき親がなくなってしまったということを、おっこ自身が認めることになってしまうと同義なんですよ。だからおっこは倒れてしまった木を認めることができないんですよね。そうじゃないと倒れちゃうから…
で、彼女は事件のあと、自分のそばにいてくれる存在とであいます。うりぼうたちです。
このうりぼうズがですね〜〜〜〜。まるで両親と入れ替わったかのように出演してくるんですよね〜〜。
そもそもおっこの「両親を失った悲しみ」の描きバランスが素晴らしく好きでですね。おっこの精神状態は、事実を認めているような認めていないようなの線引きの上を、綱渡りで歩いているようなもので、そしてその「おっこの受け取り方」をベースに、映画もが描かれているんですよ。
幸せそうなシーンwith両親 というシーンの直後にこれは夢の中!っていうカットが入ったり、その夢の中で「な〜んだ、生きてたんだ」とか言ってた直後にうりぼうたちとのドタバタが入ったり…。ドタバタはギャグ調だし楽しいシーンなんだけど、そういう楽しさに見る側もが流れちゃいそうな感覚が、おっことリンクするんですよ。ウ…
この辺での両親の描き方は、死んでもすぐそばにいる存在として描かれ続けてるんですよね。死んでいるのに生きているかのような存在…
で、でですよ。すごく近くに、なんか似た感じで描かれてる存在が居るんですよね〜〜〜〜〜。ええ…うりぼうたちです。彼らが、なんかずっと両親と同じような描かれ方をしてるんですよね〜〜〜〜〜(マジにすごいつらい)
ここのリンクがなんか、めちゃくちゃ作劇として綺麗ではあるんですけど、勘の良いガキの一人である私はめちゃくちゃに辛かったです。だってそんなの、結末が…結末が抗えないじゃんさ〜〜〜〜〜〜ッッ
私の呻きをよそに、おっこは成長せざるを得ない局面に立たせられます。つーか普通にめちゃくちゃ辛くないかこの立場。明確に誰も悪くはないんだけど、しわ寄せが結局おっこに行っちゃってるのはフェアじゃないじゃんよ……おっこ…おれがついてるからな……………(?)
この劇薬のようになされた親の死を認めることは、うりぼうたちが見えなくなるのと同じタイミングでした。おっこは彼らが近くにいるのに、それに気づかず「あたしを一人にしないで……!」と言います。
ええ、でも、おっこの近くにはいるんですよね……。
見えてなくても……お前のすぐそばでお前を応援している存在が…すぐ近くにいる!!いるんだおっこーーーーーーッッ!!!!!!!!!おれも居る!!!!!!!!!!!!!!!!!
グローリー・水領が占い師パワーで駆けつけたり、おっこのがんばりを応援してくれる人たちも来たりして、そうやっておっこは若おかみとして自立する……つまり、成長するんです。
お前のそばには変わらず、そばにいて応援してくれる奴らがいるんだ……………お前は一人ではない……ッッッ!!!!!!
という、はちゃめちゃにジュブナイルなストーリーを、それまでの両親の出し方、うりぼうたちの出し方で表現するこの無駄ない演出が…………あまりに………あまりにすごくてやばいかったです……
実は最初からもうなんか映像パワーとかがすごくて、タイトルロゴが出る前からウワアアアア!!!!!!!!!ってなってたんですよね
うりぼうたちの出演頻度と両親の出演頻度が等しく下がっているとか(最後らへんで気づいた)、各所で言われてるメガネの表現とか、背景美術の空気感とかあまりに色々すごすぎて枚挙にいとまがないです。やっぱなんかすごくない?この映画
他細かな好きポイント
ファンタジーがファンタジーになりすぎないように調整されていたのが、すごく好きでしたね。
基本幽霊で、妖怪(鬼?)っぽいのもいるんですけど、あくまで現実ベースが保たれるバランス感が、非常によかったです。
「なぜ春の屋にやっかいな客ばかりやってくるのか」というそもそもの疑問に対してさっくりと鈴鬼で説明をつけていたり……(この辺はもしかしたら、原作からそうだったかもしれません?)
神さまが〜〜みたいな話を冒頭にもってきているからこその、幽霊の存在とかが浮きすぎないバランスになっているとか、それをあまりにもすごい背景と作画が説得力を出している様とか……あまりにも無駄がなくてすごいシャブでした。
あと神楽ではじまり神楽で終わるのもなんかほんともう美しすぎてヤバですね。神楽って招魂と鎮魂でもあるんですよね……? 完璧じゃん………………………
そんなこんなで本当によかったです若おかみ!!
ところで怪盗クイーンの映画化はいつですか?
(以下とりとめのない備忘録感想メモ)
・冒頭のおっこin花の湯あたりのカット好きすぎた意味わからん
・幸せ家族カット恣意的で引っかかったけど子供向けだしこれくらいやった方がいいんだろうな(窓の演出最高だった)
・グローリー・水領いいお姉さんすぎる もっとファッションショーして!!
・うりぼう真の男じゃねえか 知ってた
・鬼と幽霊の違いが明確にあるっぽいの好き(物食べれるれないとか成仏するしないとか)
・幽霊達のせいなのにだいたいおっこが悪い感じになっていて、そりゃそうなんだけどなんかかわいそうでは……?でもまあそうなるよね
・グローリー・水領とのデート時のトラックひえっ……ってなった
・↑のあとのテトラポッドのカットも好きすぎる意味わからん
・友達……泣くからやめろ……グローリー・水領の気持ちがめちゃめちゃわかってしまう…………
・パパとママ常にいちゃいちゃしてるの笑う
・山寺宏一が出て来たときに「山寺宏一だ!!!!!」って思ったの私だけではないはずだ 思った奴 手を上げろ
・山寺宏一の息子をなんとかしたい
・顔のいい少年の改心はええけど君のその気持ちはわかるよ……
・ライターパパのライターっぽさありすぎてニコニコしてしまった
・グローリー・水領………………
・ピンフリちゃんがただ嫌な奴じゃないのがいい これからいい友達になってくれ
・ピンフリちゃんに対するクラスの反応がリアルで胃が痛くなった
・スズキがめちゃめちゃいい味出してる 推し
・幽霊ズは必ずしも成仏する必要はなかった?と思いつつ、二人の未練をおっこが肩代わりする形になったので成仏してもいいんだろうと自己解決した 話的にわかりやすいし
・山寺宏一はちゃめちゃにつらいよな つらい
・若いときのばあちゃんあまりに可愛すぎる
・ラストシーン終わった直後むせながら泣いてる人いて笑ってしまった 気持ちはわかる
・曲がいい……
・エンドロールのコンテ絵(?)から世界名作劇場の香りを感じて私も成仏した 好きすぎる……画集が欲しい
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