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百聞は一見に如かず~人生初の刀ステ~

これから見たもの読んだものはできる限り感想を綴っていこうと決意しました。投稿はネタバレでしかないのですみません…。


名刀を擬人化したゲーム「刀剣乱舞」が5年前にリリースされ、”刀剣女子”と呼ばれた若い女性たちが、全国各地の展覧会開催の火付け役になりました。当時は全くといって興味がなかった私が、5月25日から舞台作品が一挙配信になると友人に知らされて観ることになったのですが、めちゃめちゃ面白いですね!
配信されたのは、「虚伝 燃ゆる本能寺(初演)」「虚伝 燃ゆる本能寺(再演)」「義伝 暁の独眼竜」「外伝 此の夜らの小田原」「ジョ伝 三つら星刀語り」「悲伝 結いの目の不如帰 大千秋楽ver.」「慈伝 日日の葉よ散るらむ 大千秋楽ver.」の7作品。
まあほんとよくできた脚本と演出…。実は虚伝の再演だけ初演と同じ内容だと思っていて見逃して、悲伝の展開を知って死ぬほど後悔しました。三日月宗近だけが時間をループし、これまでの言動すべてに意味がある、それがよくわかる公演だったんでしょうね。膝を打ちましたよ…。

(このビジュアルが好き…)

ゲームもしたことがない、戦国時代にも詳しくない、刀にほとんど興味がないゼロベースで見始めたので、最初は「本丸」やら「近侍」やら「審神者(さにわ)」の音と単語がリンクしないことも多々。「刀の名前、難しすぎない?」「これみんな覚えられるの?」「???」みたいな状態だったのに―気づけば涙。歴史の改変を目論む敵と、前の主、自分たちの使命の三角関係がえぐいほど泣けました。
虚伝の初演で、信長が蘭丸に与えた不動行光が、前の主を救おうと歴史に抗うシーン。普通に考えて、主を助けられるまたとない機会を棒に振るわけにはいかないですよね。でも、彼らの使命は歴史修正主義者から歴史を守ること。慈伝まで見ると、単純に歴史を守ることから「なぜ歴史を守らなければならないのか?」の問いに変わっていくのでしょうけど、彼らの葛藤が、境遇が、人の心を動かさないわけがないんです。

虚伝でいいのが、不動行光役の椎名鯛造さんの迫真迫る演技。大粒の汗がこれほどか…!というほど滴り落ちる。彼は過去に「戦国BASARA-MOONLIGHT PARTY-」(2012年7月13日 - 9月21日、毎日放送)で森蘭丸役をやっていたみたいで(wiki調べ)、今度は蘭丸の刀として戻ってくるなんて、そんな人生考えられます??役はオーディションで決まったんでしょうか。なんという運命…。この刀剣乱舞という作品が、現実の世界にまで飛び出してきている、彼の人生を書き換えていっているような気がしてなりません。すべては結果論ですが…。(この初演のあとに、『斬劇 戦国BASARA4 皇 本能寺の変』にも出演し、そのあとに再演がやってくる。彼、円環してません?大丈夫ですか?)殺陣の場面も本当に素晴らしい。みんなよくできますね。キャラにも忠実でこの後の作品は特に、山姥切国広の荒牧さんの美しさに翻弄されました。ゲームの近侍は歌仙兼定を選びましたが…。…と、気づけばゲームも始めてしまうほどに。

なぜここまで刀ステ(刀剣乱舞)にはまったのか。これまで2.5次元を好きな人は、好きな役者が出ていることや、好きな作品が舞台化しているから観に行くんだと心のどこかで思っていましたが、違ったんですね。原作を知らない私がはまったのは、いい意味で、単純に面白い作品だからです。6作品見た今でも熱狂的に好きな刀があるわけでも、他の作品も観てみたいという役者がいるわけでもない私ですが。あるのは、これからどういう展開になるのか、彼らはどうなってしまうのか、それを見届けたいという思い。こういう感情を抱かせてくれるのは、脚本演出がよくできていることと、一つの刀として全力で演じ切る役者陣、すべての人の力の結集としか言いようがありません。ほんと、この一週間を刀剣たちと駆け抜けました…。

話は「悲伝」に戻りますが、レビューを見ると多くの人が劇中の音楽(カノン)に触れていて、やっぱりこういう考察をさせてくれるあたりが末満さん、面白い。いろんな伏線を引いてくれて。絵画やクラシック音楽を聴いているような感覚。知らなくても楽しめるけど、知れば知るほど、噛めば噛むほど味が出る。
クラシック音楽に限らず、音楽には主題があり、それが形を変えて何度も現れるんですね。例えば有名なソナタ形式は、(序奏)・提示部・展開部・再現部・(コーダ)があり、提示部で出てきた主題が、形を変えて(展開部)、再現部で再び主題に戻るというもの。
メロディーにはメッセージが込められていて劇中で何度も流れると作品の一貫性を感じたり、時にはテーマが壊れる不穏な空気を感じたり…。
今回のカノンは、主題を複数の声部が模倣していく様式の曲。同じモチーフを繰り返すことが、円環を彷彿とさせるのでしょう。(友達は「エヴァじゃん」と言っていた…)。残念ながら私は初見でカノンまでは意識できなかったので、再度映像を見て考察を深めたいのですが、劇の最後に三日月宗近が新しく顕現したこと、エンディングが初めて聞いたときから好きだった虚伝のエンディング曲と同じだったことに異常に感動したのでした。本当に、三日月宗近の「結いの目」の話も、タイトルの「悲伝 結いの目の不如帰」のホトトギス(鵺に与えられた名前「時鳥」)の話も、よくできている…。

「物が語るから物語」…ふとした時に頭をよぎります。こんな時世で舞台の中止が相次いでますが、次回作は絶対に劇場で!



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