モネの埴輪顔

モネの絵の中で1番好きなのは、家族を描いた絵だ。モネがまだ若く貧しかった頃、描かれた風景の中に妻のカミーユと長男のジャンが登場する絵がいく枚もある。それらを見るのがとても好きだ。明治生命のCMを見ているみたいで。愛するものへの眼差しが絵に詰まっているのだ。

モネの描く家族絵は(カミーユとジャンが描かれた時期は)埴輪顔が結構多い。空洞みたいな虚ろな眼。ポカンと開いた口。肩の力が抜けた飾らない家族の生の姿だ。

ちょっと寂しそうな姿の彼らは、この後、キャンバス越しのモネの視線に気づいて「ああ、パパ!」って目を輝かせ、笑顔になるのだろう。この後お日様みたいに笑いながら手を振ったかな、パパに走り寄り、抱きしめに来たのかな。

一瞬を切り取った絵でありながら、映像が思い浮かぶ特別な仕掛けのこれらの絵画は夫であり父であったクロード・モネの家族への愛情が伝わってくるようで、この心細い顔をした家族絵が私は特別に気に入っている。

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