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4月21日

大人になると……なんて冠詞をつけてもいいかもしれないけれど、自分の中で宝物になるものにであう機会が減っていくように感じる。
高校生の時、理性や理屈で抗えないほど惹かれた作品があって、とっくに読み終えたその文庫本をいつでも鞄に入れていた。
学校や電車で取り出して、特にお気に入りのシーンは何度も目を通した。
いつでも手が届くところに無いと不安だった。
それはその時の宝物だったからだと思う。
(勿論今も本棚に並んでいる)
えてしてそうなるように、その本や物語というより今は、想いと共に携えていたその経験や記憶が宝物となって、よく思い出される。

そういうことがめっきり減った……という寂しい話ではなくて、だからこそ、あの頃のような宝物に出逢うと恋するように胸が何度でもとろけて嬉しいものだ。
1日の間にふと何度、思い出しているだろう。
とっくに読み終えたのにベッドサイドから退けられない本が何冊かあって、それが今の、また未来の宝物となるものだと覚える。
もの寂しくて堪えきれず恋人に連絡をしてしまう心によく似て、表紙を何度も開いてしまう。
開かずに堪えるときでも、我ながらもの欲しげにうらめしげに、背表紙をじっと見る。
感情の動く出逢いは嬉しいものだ。

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