6月30日 20時間後

しきはり
し、き、は、りカラスがよく鳴く

1週間くらい前にみた夢の
黒髪の男の、腕にある痣のような
火傷のあとをよく憶えている。
赤に足りず桃より過ぎるあいらしい、朝焼け色だ。
私は憧れていたから、側に立っても男の
顔を見ることができなくて、その火傷のあとがある
腕ばかりずっと見ていた。
その男は、走るのが速い、火を使う。
よく憶えていたり、思い出したりしている。
たくましい腕の火傷の、健康な肌とのきっぱりした
境界線のうつくしさ。

生きてまですることか?
そうしてまで生きたいか?
死んだこともないのに、死ぬのが怖かったり
死にたかったりするのは
遺伝子のえいきょうだろうか? dnaの。
食わず嫌いは、よくない。けど
食わず好きも、よくない。

午前3時のランニング、小学校の、
2階の一室の電気が点いていた。
まあ、消し忘れだろうけど、
もしも消し忘れじゃない場合、どういうことだろうと
想像した。
午前3時の学校で、人目を避けて一室の
電気を点灯させた人は、今そこで
何をしているのだろうと……。

午前4時ごろに3つ目の公園を通り過ぎると、
いつも体を鍛えている人がいる。
シャドーボクシングの風を切る音が、
随分離れたこの歩道まで届いている。

午前3時ごろに消灯をする1階にあるこの部屋は、
いつも大窓が全開で、部屋の中が見えないように
窓の下半分に毛布を貼り掛けている。
何かの理由でエアコンを使っていないのだろうけど、
住人の見ているテレビの音や、
それに合わせて歌っている声がいつも聞こえている。
掛けられた毛布で、姿は見えない。

午前3時ごろにランニングを終える日、
住んでいるマンションの2階の通路が、
いつもシャンプーのにおいで満ちている。
2階に住んでいる人の中に、随分遅くに入浴する
習慣のある人がいる。
寝る前なのかな。

就寝し、後、目覚めたとき、毎日その瞬間から
待っていたとばかりに頭の中に
思考と言葉があふれかえる。
ここに書くような、一生考えなくてもいいような
個人的で余り有る実り無いどうでもいいことだ。
本当にさっき書いたような、夢の男の痣の色の
詳細や、ランニングした時に見た光景の
意味をいたずらに考えたり、常識を暇潰しに疑うような
ことだ。
そして20時間後また就寝するまで、
ずっと頭の中はうるさい。
余り有る実り無いことを、それなりに白熱
して話している。
おまえたちが。
その話を横でずっと聞いている。
生まれてからずっと何十年も。

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