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エロゲーはどこを向いて生きて行くのか

大手ブランド「戯画」の終了宣言

つい先日、生々流転が如く入れ替わりの激しいエロゲーブランドの中でも大手も大手超大手、エロゲーをかじったオタクならその名を知らぬ者はいないと言っても過言ではないブランド「戯画」が、商品の開発・販売・サポートの一切を終了し、29年の歴史に終止符を打ちました。(新しいBALDRを作るらしいがそれはそれ)
有名どころだとV.G.シリーズとか、BALDRシリーズとか、キスシリーズとか、パルフェとか出してます。個人的にはキミの瞳にヒットミーも好きでした。
エロゲーの曲が好きな人はKOTOKO氏を追っていると必ず戯画に辿り着くと思います。

実際、戯画は29年の間に出した作品すべてがヒット作かと言われると首肯しかねるところはあって、何ならアタリハズレのムラが大きいブランドではあったんですが(ハズレ作品は戯画マインとして長年ネタにされてきた、何なら公式もネタにした)、やっぱり大手IPをいくつも抱えているブランドなだけあってその終了の報を見たときには思わず目を疑いました。

頭の中の櫻井翔が「ウソだろ……」って言ってた

VtuberをOP歌手に起用してみたりだとか、自社Vtuberを立ち上げてみたりだとか、まぁ正直に言うと迷走していたなぁと思うのはご愛嬌。
配信を追ってるVオタクってエロゲーやる時間捻出できなさそうだし。

ちょっと話が逸れましたが、今回の戯画ブランド終了を通して思ったこと。

エロゲー業界って10年後どうなってるんだろう。

※以下の文は明確なデータを根拠として述べているものではありません。すべて個人的観点に基づくものです。

圧倒的に時代と合わないコンテンツ形態

はっきり言いますが、エロゲーは令和のコンテンツとして適していません。
あまりにもコスト/タイムパフォーマンスが悪いからです。

ちょっと小難しい話に入ります。
元来、人は「得」よりも「損」を重視して立ち回る生き物です。
これは損失回避性などと呼ばれていますが、SNSの普及(スマートフォンの普及)によって簡単に損得勘定の判断材料にアクセスできるようになった昨今は、これが特に顕著に表れているように思います。
例えば、外食先の口コミを見る、通販で買うもののレビューを見る、などでしょうか。これらは「損」を回避するために取られている行動です。

これを踏まえて。
今、コンテンツの消費速度はとても速いものになっています。
これに言及すると「消費速度ガー」って言いたいだけだろ、みたいになるのもイヤなんですが、実際コンテンツの需要・供給はそっち方面へ傾いていると感じています。(違法性はともかく)ファスト映画の流行がその最たる例でしょうか。あとは配信の切り抜き文化もそうかな。
何故か?
みんな、「損」をしたくないからです。

SNS、ファスト映画、TikTokなど。これら最近の流行には、共通項として「短時間で膨大な量の情報を得られる」というものがあります。しかも無料で。
そんなことをして何になるんだ、って思うかもしれませんが、限られた時間の中で体験の量を増やすのって、結構脳が満足しちゃうんですよね。
得られる情報量の差異が些末なら、短時間で情報を得た方がいいじゃんと。
2時間かけて映画を1本見るなら、10分で終わるファスト映画をその時間分見るよと。

一見すると効率的ですよね。
時間をかけて少量のコンテンツを摂取するよりも、短時間に大量のコンテンツをドカ食いする方が時間的に「得」だとしているわけです。
これは体験の「質」よりも「量」を優先した結果で、いかにも現代人らしいと言えます。(実際は精神的に陳腐になるのでやめた方がいいです。=人に処理できる情報量は限られているので、膨大な情報に飲み込まれるとその表面をなぞることで精いっぱいになります。そうなると、受け売りでしか物事を語れなくなる再生産人間になる恐れがあります。たぶん。)

で、一度そういう「短時間で膨大な量の情報を得られる」経験をしてしまうと、もう簡単には戻れなくなります。
胸に手を当てて考えて下さい。
ふとYouTubeの動画に出てきた広告、たとえ5秒でもすぐにスキップを押しますよね。それがスキップ不可だとめちゃくちゃイライラしますよね。
でもそれ、よく見てみるとたかが10秒だったりしませんか?
たかが10秒のためにイライラしてるって思うと虚しくなりませんか?
見たくないものを見せられているという理由もありますが、如何に現代人が「無駄な時間」を省くために躍起になっているのか、その一端がお分かりいただけたかと思います。

エロゲーの話に戻ります。
本項の冒頭でも言いましたが、エロゲーは令和のコンテンツとしてはあまりにも前時代的すぎます。
1万円前後が当たり前で(=コスパの悪さ、ロープライスでも2500円苦くらいするね)、紙芝居のようなトーク劇とエロシーンを40時間かけてプレイする(=タイパの悪さ)コンテンツです。
上記で挙げたものすべてに反していませんか、これ。

そのうえ、無料かつ短時間であらゆるものを摂取できる令和に生きていて、わざわざエロゲー界隈に足を踏み入れる「よっぽどの理由」がないんですよね。
ある程度の「損」も体験だとして体験の「質」を重視する場合、エロゲーは割と良いコンテンツだと胸を張ってオススメできるのですが、世間様はそっちを向いていないのでどうしようもないです。

エロゲー全盛期とされている2000年代初頭は、今みたいにSNSや動画共有サイトが一般的ではありませんでした。そのころは匿名掲示板や仲間内の口コミなどの閉塞的・アングラな部分が情報交換の場でありさほどゾーニングを要しなかったので、まだエロゲーにも勝ち目(?)はあったんですが、SNSが普及してインフルエンサーが台頭するともう無理です。エロゲーはその性質上、表立って広告できません。エロなので。
(ぬきたしみたいにバズる要素があれば太刀打ちできるんでしょうか。まぁあれはバズるくらい振り切ったおバカな設定の上でちゃんと物語を成立させたところがすごいんですけど……)

エロゲーに限った話ではないんですが、皆さんは日々を生きる中で必要な無駄までも削ぎ落としていませんか。コンテンツの消費量を求めるあまり、思い入れのあるコンテンツを増やしづらくなっていることに気づいていますか。
散文的にコンテンツに飲まれるのではなく、たまには何か1つ、酸いも甘いもすべて味わい尽くすのも良いかと思います。
とか言ってる私もYouTubeのShortsで1時間溶かす人間なので、説得力が無いんですが。自戒の意味も込めて。

エロゲー業界の10年後

上記で挙げたことだけがエロゲー衰退の理由だとは思いません。
思いついてないだけで、他にもいろいろあるんじゃないかなと思います。

10年って適当に言ってるだけなので2045年問題とかそういうのではないんですが、大手ですら店じまいする界隈で、果たして10年後にどこが生き残っているかなという感じ。

問題提起するだけして解決策は考えてないんですが、やっぱり値段と時間がミスマッチなのでそこをどうにかするか、新規ユーザー獲得を半ば諦めて既得ユーザーの囲い込みを促進するか、くらいしか思いつきません。
あとはエロゲーそのものを諦めて、より市場の大きい一般作品へ移行するとかですかね。広告打てますし。エロゲーブランドじゃなくなっちゃいますが。

令和的なコンテンツへと変貌を遂げるのか。
今のスタイルを貫き通すのか。
それとも、このまま朽ちゆくだけなのか。

是非とも、生き残る術を模索してほしいものです。
ではでは。

本稿とは関係ない話

・ファスト映画って概念を知った時、ハチャメチャに驚いた。映画のエンドロールも楽しむ人間なので。人間堕ちるところまで堕ちたなって思いました。

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