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輪っかのマーチ / Jimmy'z feat. 初音ミク 【AT1選note投稿祭】



はじめに

初めまして。乃々瀬(ののせ)と申します。普段はボカロでDJするハンドメイド作家をしています。(詳しくはTwitter @nono4eにてどうぞ)


今回主催をしていらっしゃるかんなぎ様(@knng_441 )へ

素敵な機会を頂き誠にありがとうございます!投稿祭当日までの参加が難しかったこと、申し訳ありませんが、せっかくの機会なので参加させてください。




1. wotaku、そしてJimmy'zについて

私が1選として挙げた「輪っかのマーチ」の作詞作曲者は、このnoteを読んでいらっしゃるみなさんもよく知る、wotakuさんです。
しかし、タイトルについている「Jimmy'z」については、みなさんなかなか知る機会がないのでは無いでしょうか。作品理解を深めるにあたり、まずはJimmy'zについてお話致します。



1-1.  wotakuとは

日本のボカロP。代表曲は「DOGMA」「シャンティ」「ジェヘナ」など。
2017年、_yuragiとの共作「斯くも素直なアンドロイド」にてボカロPとしての活動を開始し、のち2018年に個人アカウントにて「業病」を投稿し、その後「DOGMA」や「シャンティ」などのヒット作を連発し、今に至っています。


1-2.  Jimmy'zとは

ボカロPのwotaku、_yuragiがタッグを組み活動を行っていた音楽制作ユニットです。


「斯くも素直なアンドロイド」にて投稿を開始し、約26作品が発表され、ニコニコ動画、YouTubeにて投稿されています。

1-1.にて述べたように、Jimmy'zとしての投稿がwotakuのボカロP活動としての原点になっています。

2017年~2018年頃まで活動を行っており、どの作品でも、作詞作曲やマスタリング等の分担等が行われていたことが、楽曲概要欄の文から伺えます。

Jimmy'zとしてのTwitterアカウントも存在していますが、残念ながら現在では投稿の更新はありません。

https://twitter.com/jimmyz_official


2.  輪っかのマーチ とは

wotaku、Jimmy'zについて知って頂けたところで、本題に移ります。

先程述べたようにwotakuと_yuragiによる音楽制作ユニット、Jimmy'z。
その音楽制作ユニットから、2018年3月11日に発表された楽曲こそが、「輪っかのマーチ」なのです。

プロデュース
音楽制作ユニット Jimmy'z  (Twitter @jimmyz_official)
オリジナル曲マイリスト mylist/59075713
アレンジ・REMIXマイリスト mylist/60149453

作詞・作曲・編曲・映像
wotaku(from Jimmy'z)  (Twitter @wotaku_aaa)

ボカロプログラミング協力
_yuragi(from Jimmy'z) (Twitter @yuragi_MUSIC)

歌  初音ミク
演説  琴葉茜
コーラス  wotaku 初音ミク 鏡音レン 鏡音リン V flower さとうささら

概要欄より引用

クレジットより、作詞作曲から編曲、映像までwotakuさんが担当なさっているのが分かります。

個人的な感想にはなりますが、琴葉茜使っているのが意外で印象的でしたね。
演説部分は、拡声器のようなラジオ風の音声加工がされているので、概要欄を見るまで琴葉茜だと気づきませんでした。
wotakuさんは初音ミク、という印象が強かったため余計、琴葉茜を使うことに意外性を感じました。



3.  輪っかのマーチの何が好きなのか?

「輪っかのマーチ」についてお分かりいただいた所で、ここからが本番みたいな感じです。
私がなぜこの曲が好きなのか?という点について、2つの視点からお話していきます。


3-1.  ①イントロのインパクト、そして変拍子


好きな点として、まず、動画を開いた瞬間のインパクトが大きいことが挙げられます。 
そもそもサムネイルの時点でかなりインパクトのある作品だとは思いますが、聴き始めた瞬間のインパクトは、やはり聴覚でしか感じ取れないものなので、ここは外せません。

Q.インパクトが強いことだけが好きなのか?
A. 違います。

私がこのイントロについて特に好きな点は、タイトルにもある通り、変拍子です。
通常、音楽というものは4/4(4分の4拍子)で進行するのですが、このイントロは7/8(8分の7拍子)で始まります。


3-2.  拍子とは、変拍子とは

拍子について分からない方向けに説明します。
わかる方は3-3.まで飛ばしてください。


#4/4拍子について

皆さんが普段聞く音楽の大半は、4/4拍子を基本としています(そう思ってます)。4分音符を1拍とし、小節という枠の中に4つ入るので4/4という訳です。
4/4拍子の数え方は1,2,3,4。これを1塊にしてそれが連続します。
(1,2,3,4)(1,2,3,4)………これが連続するんですね。
テンポ(曲の速さ)に合わせて1,2,3,4と声に出してみたらわかると思います。


#4分音符と8分音符の関係
4分音符1個は、8分音符2個分です。
は???と思いますよね。算数で説明します。

1/2 + 1/2 = 2/2 = 1

これが音符でも同じようなシステムになっています。
4/4拍子は、4分音符×4であると同時に、8分音符×8でもあります。
4分音符が1cmとしたら、8分音符は0.5cm(5mm)。
8分音符が2個になったら1cmですよね。そういうことです。


#7/8拍子について

では、輪っかのマーチの場合を見てみましょう。イントロを再生して、先程のように1,2,3,4と数えてみてください。手拍子してもいいかもしれません。
やってみましたか?どうでしょう。

合わないんですよね。

厳密に言うと、あからさまに合わないのではなく、1小節ごとのフレーズの頭拍に1が来なくなって、ちょっとずつズレていきます。1,2,3,4を同じ間隔で言い続けてると、少しずつズレていくんです。
これが変拍子です。
1,2,3,4で綺麗に説明できないものをここでは変拍子として扱います。


#輪っかのマーチの数え方
Q.音符のことはいいけど、じゃあこのイントロの7/8拍子はどう数えるの?
A. 1,2,123。もしくは1234567(脳筋数え方)です。

7/8拍子は、8分音符が7つあることで構成されています。
脳筋数え方の場合は頑張って1234567と言えばOKです。

1,2 123の場合を説明します。さっきの長さで例えると…
0.5cm(5mm)×7  =  3.5cm   →  3cm + 0.5cmになります。
理論上、4分音符3つと8分音符1つなわけです。

あれ??と思いましたか?じゃあA.で書いたことと違うじゃん!と。

ここが音楽の面白いところです。

この曲の場合は、3+0.5ではなく、2+0.5×3です。
4分音符×2 + 8分音符×3になります。

難しいので、感覚的に話をしてみましょう。
イントロのメロディのリズム、タッタッタンタ、に聞こえないでしょうか。これに数字を当てはめます。

1    2   1  2  3
タッタッ タンタ
もしくは
1 2  3 4   5  6  7
タッタッタンタ

になります。
ちなみにこのタッタッタンタ7文字なので、タッタッ+タンタで考えても分かりやすいかもしれませんね。


拍子の解説は以上になります。


3-3.  "イントロの為のイントロ"   (飛ばした人はここから読んで下さい)

3-2.で皆さんに7/8拍子をご理解頂いたところで、もう一度イントロを再生します。

この「タッタッタンタ」のひと塊が6つ続いていますね。

7/8なのは6小節、6塊だけです。
7 , 8小節目では4/4、つまり1,2,3,4で数えられる訳です。


たまりませんね

私はこういうのが大好きなんです。

いわゆる「普通じゃない、変な音楽」が好きで、その中でも変拍子がある楽曲は本当に大好きです。
ド頭のイントロから7/8拍子を見せられたら、好きにならないわけないんですね。しかも7/8の拍の取り方が「4+3」なことも、私の中ではポイントが高い部分です。

それはさておき、私はこの7/8拍子が主体となったフレーズを「イントロの為のイントロ」と考えています。なぜなら、この8小節の次に、違うメロディでイントロが構成されているからです。
0:11~の、ギターが入るイントロは4/4拍子です。そこにすんなり違和感なく入るために、7小節目から4/4に転向して8小節目でフレーズ収めているんだろうなと解釈しています。


とにかく大好き、変拍子


3-4.  ②wotaku楽曲との関連性

1番の好きなポイントはここです。

「輪っかのマーチ」は、後にwotakuの個人作品に引用されています。

この話はとても長くなってしまうので、次の章で解説いたします。
どうかお付き合い頂けますと幸いです。

「wotaku楽曲との関連性」とは何なのか、ここについて、お話していきます。



4. 輪っかのマーチとwotaku楽曲の関連性について


実は、この「輪っかのマーチ」、前述の通り、wotakuの個人作品と関連性があります。

それがこちらの楽曲、「ハルピュイア」

5分越えの、昨今のVOCALOID楽曲の流行りと比較するとかなり長めな楽曲なのですが、この楽曲には輪っかのマーチからの引用があります。

関係ない蛇足話にはなりますが、この「ハルピュイア」という楽曲、音楽としてかなり特殊な構成をしてると思っています。
オーケストラの重厚なサウンドから始まり、ギターを掻き鳴らす暴力的なサウンド(しかもここは3/4拍子で、個人的にとても好きです)へ移り、そして輪っかのマーチの引用へと行き着き、その後にも様々な展開を持つ、かなり特異的な楽曲です。
輪っかのマーチ以外にも、wotakuの他作品からの引用がありますが、ここでは割愛します。


ここからは、実際に曲を聴きながらこのnoteを読んで頂くのが分かりやすいかと思います。(聞いて頂いている前提で話を進めます)


4-1. メロディの一致

まずハルピュイアを、3:00から再生してみてください。
3:10頃の歌い出しまでの、このメロディをよく覚えておいてください。

次に輪っかのマーチのイントロを再生してください。

同じですよね。

というわけなんです。
笛のリズム、入る位置まで同じです。明らかに輪っかのマーチを意識した構成になっています。

ハルピュイア聞いても分からない…!という方は、ハルピュイアの再生速度を遅くして聞いてみてください。この2曲間ではテンポがだいぶ違うため聞き取りにくいのも無理は無いです。


4-2. 歌詞の一致

さて、そんなハルピュイアの3:00~のメロディーが一致したのはわかりました。その後はどうでしょう?

「もう恐れるな 1人では無い 仲間は常にいる」

「さあ 飛び立てよ 寂滅は今日 フォボスを超え その先へ」

ハルピュイア 歌詞より引用

こちらがハルピュイアの歌詞です。では次に輪っかのマーチ Bメロの歌詞を見てみましょう。

「もう恐るな ひとりではない 仲間は常にいる」

「さあ 飛び立てよ 涅槃の向こう 勇気と言う希望の回答」

輪っかのマーチ 歌詞より引用

歌詞が一致しています。
正確には、「さあ 飛び立てよ」までが一致していますね。

歌詞の一致はここだけではなく、その後も続きます。


4-3. サビの一致

ハルピュイアでは、前述したBメロの引用のあと、シンセサイザーのソロが入り、その後バンドサウンドに帰結します。
具体的には「檻の向こうにはきっと 素晴らしい世界が 待っているはずだ」の後から、サビへ展開します。
なぜ私がこの部分を「サビ」と呼称するのか、その理由に歌詞、メロディがあります。
ハルピュイア4:07~、歌詞、メロディにご注目ください。

「生きていたいを辞めて 明け方にゃ後光証明」

「振り返る間も無いくらい 急ぎ天に召して」

ハルピュイア 歌詞より引用

次に、輪っかのマーチのサビの歌詞を見てみましょう。

「燃える星にファックして 明け方にゃ後光証明」

「振り返る間も無いくらい 急ぎ  天に召して」

輪っかのマーチ 歌詞より引用

輪っかのマーチのサビの大半の歌詞、メロディは完全に一致します。

……と言ったように、ハルピュイアは、曲の後半から輪っかのマーチの引用がかなり多く行われています。
ハルピュイア最後の歌詞、「逆様に伸びてく身長 影の中で」も輪っかのマーチのAメロ歌い出しの歌詞と一致します。

また、小ネタにはなりますが1つご紹介しますと、ハルピュイア3:00~から、動画画面を見てみると、右側に3行ほどの文が現れます。

「諸君ハ コノ暗澹タル 深海カラ 逃ゲ出ス術ヲ悟ッテイル」

これは輪っかのマーチ イントロの琴葉茜の演説と同じ文章です。輪っかのマーチの引用と同時にこの文章を載せているのがとても好きです。


4-4. ハルピュイアと輪っかのマーチ

先ほどから、ハルピュイアの話ばかりになってしまいすみません。読んでいただいている方の中にはこう思う方もいるのでは無いでしょうか。

ハルピュイアの紹介になってない?、と。

答えとしては、確かにそうです。でも、切り離すのが難しい。
というのが正直なところです。

何を隠そう、私が輪っかのマーチと出会ったのはハルピュイアがあったからでした。ここで少し、自分と輪っかのマーチ、ひいてはwotakuとの出会いについてお話しさせてください。

あくまで曲に対する熱意や解説が聞きたかったよ、と言う方は5.を飛ばしてお進みください。


5. 私の話。ハルピュイアと輪っかのマーチ、そしてwotakuとの出会い


当時私は大学の課題で、音楽を題材にした作品を作っており、VOCALOIDを始めとしたかなりの数の音楽を漁っていました。
その中の一つがハルピュイアでした。

私はそこで一気に、wotakuというボカロPに惹かれていきました。
もちろん、VOCALOIDのトレンドを軽くは追っていたのでwotakuという人物がいること、DOGMAやシャンティ等の有名な曲があることは知っていましたが、そこ止まりでした。
ハルピュイアとの衝撃的な出会いをきっかけに、私は、投稿されているwotakuのほぼ全楽曲を聞きました。その過程で、オススメに出てきたのが輪っかのマーチでした。
サムネイルの時点でインパクトのあるこの曲は、まんまと私の興味を引き、すんなりと再生ボタンを押すことが出来ました。

すると、どうでしょう。
私が好きなハルピュイアと、明らかに同じものが、そこにある。

Jimmy’zとしての投稿作品なのでwotakuの個人チャンネルには上がっていないため、wotakuが手がけた作品にしては再生数も多くなく、そんな中でこの作品に出会えたことに、私は「運命だ」とすら思いました。

こういった経緯があり、私にとっては、ハルピュイアと輪っかのマーチは切っても切り離せないものなのです。


さて、自分語りはこれくらいでお終いにします。


さいごに


ここまでお読みくださった方、本当にありがとうございます。
稚拙な文章、解説になってしまうのではないかとハラハラしながら書き始めましたが、実際書いてみるととても楽しく書かせていただきました。

もともと投稿祭に合わせてnoteを出す気は全くありませんでした。理由としては、ずっとAT1選を決めかねていたからでした。
ハルピュイアか、輪っかのマーチか、また別の曲か……。
たくさん迷いましたが、自分の中で、この曲はとても大切で、大好きで、ずっと心にあり続けているのだろうと考え、「これが私のAT1選だ」と胸を張って言えるこの曲で、noteを書かせていただきました。

最初にも書きましたが、本企画主催のかんなぎ様に、このような機会を頂けたことに感謝申し上げます。

このnoteを読んでくれた貴方が、輪っかのマーチのことを、少しでも好きになってくれますように。

ここまでご覧いただき誠にありがとうございました。

2024.05.29 乃々瀬





追伸

次回ボカコレ、輪っかのマーチでREMIX部門に参加します。

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