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小説 お金の稼ぎ方

20代のぼくは、お金が欲しかった。
40代の私は、別にお金は欲しいとは思わない。
こんな風に言うと、だったらくれと言われる。
なんで、知りもしない奴にお金をやらないといけないのか。
欲しいと思わないという話と、いらないと言う話は同義ではない。
お金は大切だ。
何かに変える能力があるからだ。
人の心を買えるかみたいなドラマがあって、それはどうだかわからないけど、売っている物であれば買えるのだから、私にはあまりかんけいないかもしれない。
40代の私は、投資で大金を得た。
2005年に韓国のオンラインゲームを日本で販売する会社の株を300万円分買った。
僕が20代のころの話。
結婚しようと約束していた彼女がいた。
お金がなかったのは氷河期世代の所為にしたかった。
でも、実際は社内いじめが原因。
そんな僕に優しくしてくれた彼女。
職場の近くの公園で池を眺めていたら、声をかけてくれたのが出会い。
彼女は僕に笑いかけてくれた。
八重歯が右に少し見える。
右にだけエクボができる。
笑えとき下を向く。
好きだなと思ったのは彼女が僕を覗き込む様に見てきた時に、モモのような匂いがしたからかもしれない。
「す、す、す」と急に緊張して声が出なかった。
彼女は笑う。
「す?」と聞き返す。
「いや、」
「違うの?」
「違わないです」
「何が違わないの?」
「好きってこと!」
うふふと右手を口に当てる彼女。
「ありがと」
僕には彼女が女神に見えた。
そんな彼女との別れは付き合って2年が経った時だった。
結婚したいが金がない。
仕事もないし、社内ニート。
大企業に勤めていることになっているが、営業所の備品管理。
たしか、開発職で入ったはずだったが、学歴がぁとか言われて、飛ばされた。
異動辞令前は、頓挫プロジェクトを成功させたのに。
先輩がやれなかったことを、僕は1人でやった。
なのに成功したら、僕ははやってないと言い出した。
周りも同調した。
先輩と同じ大学を卒業した上司も同意した。
みんながそういうならと、僕は仕事をしていないことにされた。
頓挫した時は、けつふきで押し付けたのに、成功したら掠め取る。
世の縮図だなと思う。
弱肉強食なんだから。力が欲しいなと思った。
力がない僕は恥ずかしい。
そんな時に彼女に出会った。
身長は小さい。150ないくらい。
化粧っけながなく、幼く見える。
遠目で見ると小学生にも見えるかも。
大人と思ったのはビジネスカジュアルな格好をしてるからだ。
結婚のためにお金が欲しい。でも稼げない。
節約をしてやっとためた300万円。
その日、彼女は死んだ。
事故にあった。
電車の事故。
なんで兵庫にいたのかはわからない。
でも、彼女が死んだ。
事故にあった連絡を受けた僕は急いで病院に向かう。
病院は人で溢れていた。
受付に被害者の家族がいた。
「田口愛美、愛美の部屋は?」
「あなたはどう言ったご関係ですか?」
「愛美の彼氏です」
「今ご家族のみなんです」
「愛美にあわせて欲しい。家族なんだ。来週、籍を入れるんです。家族なんです。」
「でも、規則ですから」
「お願いします」土下座する僕。
受付の女性が電話をした。
「あぁ、そうですか。わかりました」
と電話をきって僕に304です。と悲しそうに伝えた。
病室に続く廊下は悲しみの渦に包まれていた。
涙を啜る音が聞こえる。
光が途切れた先にある304。
部屋に入った。
真っ白。
部屋の色、ベッド、シーツ。僕の頭。
彼女は上を向いて眠っている様に見えた。
力が抜ける。
「300万、貯めたんだ。愛美と一生いられるために」

彼女が死んで一ヶ月。
生きる力がなくなった。
でも会社には行った。
いてもいなくても変わらないが、いてやると決めた。
お金をみるのが嫌だった。
だから、捨てるつもりで投資をした。
30代で、その会社がソシャゲとしてパズルゲームを出して爆益を出した。
100倍。3億。その後もいろいろ投資したらテンバガーとかで20億。
今ではその一部を使って配当金を貰い生活費はまかなっている。
私は愛美を思い出すと、株を買う。
すると上がる。
どうやら、私は愛美を忘れることはできない。