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小説 好きな人のためにできること

40代半、独身の僕。
20代半、司法試験に合格した。
好きな人が電車の事故で死んだ時、会社の対応が許せなかった。
だから法律で合法的に制裁を加えたいと勉強をした。
2年で合格したのはかなり早いと思う。
ただ、その時に、被害者と会社の裁判が終わっていた。
僕は彼女の彼氏という赤の他人で被害者ではないとされた。
お義父さんからも、もうつかれたと言われ諦めることにした。
会社にはエンジニアとして働いている。
法律は使うかもと思い、会社に登録しようとしたら、修習を受けさせろとか言われると思ったのか、業務に関係ない資格は登録させないと言われた。
僕の2年の努力は水の泡になった。
ならなんなら登録できるのか?と聞いた。
すると、弁理士とかでしたらと人事に言われた。
弁理士はきいたことがなかった。
法律の資格かと思い、勉強をしたら弁護士は弁理士になれるとしった。
調べるのが遅かったから、受験はするかとやることにした。
合格は一年でできた。当たり前と言えば当たり前。
弁理士を会社に登録をしたら今度は弁理士登録できないという。
副業禁止だからとかいう。
そんな規定はないはずだけどと思ったけど、元来争いが嫌いだからそのままにした。

大学時代に付き合っていた彼女から連絡がきた。
彼女は大学4年の時に結婚しようと約束し、双方の親にも挨拶をしていたけど、卒業間際に東大のエリートで官僚になる人と温泉旅行に行っていた。
黙って行くから失踪扱いにされて、彼氏の僕は警察で取り調べを受けたのだ。
彼女をどこに埋めたかを聞いてくるのだ。
死んだ前提ですすめられるから疲れてきた。
若手の刑事が入ってきて、ニヤニヤ話す。
良いことあるよなんて言われたが、彼女がどうなったかなんて当時は分からなかった。
お義父さんが警察署の前ですまんなんていう。
怒りよりも悲しかったな。
彼女はその後結婚した。
ただ、10年が経って子供が生まれたぐらいで、離婚したと聞いた。
旦那の暴力らしい。
僕の前に現れた彼女は俯きながら、ヒロくん、お久しぶりと弱々しくたっていた。
どうしたん?と聞いた。
実家にも帰れなくてと答える。
うちに来てもなんもできないよ。
そっか、そうだよね。お、お金、貸してくれないかな。
いくら?
2、10万くらい。
すこし考えた。子供が彼女の足を掴んでこちらを見上げてる。
わかった。これ返さなくてよいから。
2度頭を下げた彼女。
絶対に返すから。
未だにその時のお金は返ってきていない。