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小説 1億円の作り方

 怪しげなタイトル。一億円持っているのか?といわれたら、持っとるよと答える。
昔ソシャゲバブルがあってな、こいつそれに上手く乗っかったんよ。周りからはそんな感じで馬鹿にされる。たしかにソシャゲバブルで株価が100倍近くになった。300万円ぐらいの投資金額3億くらいになった。税金引いても2億は超える。その付近で、再生医療に投資したり、ソシャゲバブルに乗っかりまくり、資産がふえったけか。ゼニゲバみたいに言われたけど、ちゃんとした理由があるんよ。
 最初300万円は結婚資金。彼女と結婚しようと言うために貯めたんよ。仕事くださいとオイラを騙した上司に頭を下げて、残業時間を確保。支出を抑えるために水にして、水道水を汲みに行く。ポットはオイラには使わせないらしいから、水を汲む。水道から出る水は生ぬるいけど我慢した。
 300万円貯まった日に彼女が事故にあったっけ。仕事中に電話が来たけど、将来のためのお金のためと駆けつけるのが1日遅れたんだ。そしたら、全てが終わっていたんよ。全てが。ぐちゃぐちゃになっていたらしい。即死だったのかもしれないとお義父さんが言っていたんよ。妹が、おねぇちゃんは生きてた、あんたの名前呼んどったんよ、あんたねぇちゃんすてたんよ、と泣きながら怒鳴った。オイラにも聴こえた気がした。なんだか涙が出て、止まらない。きっと目に水道の蛇口がくっついたんや。そうに決まっとるわ。
 空白の二ヶ月。会社を休む。寝込んでいた。熱が止まらない。胃が痛い。気持ち悪い。命をかけて守る対象がなくなった。急に。自分がした判断を後悔した。
 仕事を選んだのに、仕事から外された。営業所への異動だと言う。難しい仕事が終わり、不要になったからだ。あっそうか、オイラはなから切られる予定だったんか。そんなもんに将来重ねて、安定な未来とかいって、彼女より仕事を選んだんや、きっと、いや絶対、オイラは馬鹿なんだな。営業所総務部への異動辞令が書かれた紙が机に置かれている様子を見て、そのまま会社を休むことにした。
 会社は医師による診断を勧めてきた。会社とタッグを組んだような医師の顔、金に目が眩んだ輩の顔はどこかドスぐらい。コイツの顔は笑顔だったけどドスぐらさを感じだから先手を打ってやることにしたんよ。