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小説 頑張れ

「頑張りなさい」
毎日、毎日、たくさんの人からそういわれる。
朝は妻から言われ、会社では上司から言われる。
実家に帰ると親に言われる。
私は頑張っている。でも周りはもっと頑張れという。
結婚したら頑張れと言われ、子供が言われたらもっと頑張れという。
主任に昇進したら、技術面で頑張れと言われ、課長になったら課全体が頑張れるように頑張れと言われる。
部長になっても、所長になっても、枠組みが大きくなるだけで頑張っていくしかなくなる。
「頑張ってる」というと、「俺たちだって頑張ってる」と反応される。頑張ってるというから言ってるのに、頑張ってると反論するのは、私よりも頑張ってると言いたいのだろうか。
だからもっと頑張れって言ってるのかもしれない。
職場で就業前にコーヒーを入れるため給湯室に行く。
仕事中にコーヒーを飲むためだが、コーヒーを飲む時間があるなら頑張れという。
お昼時間、ご飯を食べていたら、電話が鳴るかもしれないから頑張れという。
定年間近、これからは頑張らなくてもいいのかなって思ったら、老後なんてないのだから、死ぬまで頑張れと国が言う。
どうやら私は頑張れ地獄の世界戦に入ったのかもしれない。