つづき

かつての先輩に引き抜かれ工場に戻ってきてからの話。

この異動の内示を受けた時は内心嬉しかった。内示の数ヶ月前にあったキャリア面談では、思考低下した脳で今の仕事環境から変わりたい旨の意思をなんとか伝えるので必死だったからだ。(東京の至る所の神社にお参りした結果?笑)

内示を受けた数日後、物件探しを兼ねて工場に出張し業務内容を打ち合わせした。今年1番の目玉新製品開発の工数が不足しているので手伝って欲しいとのことだった。担当部位は製品の基幹部ともいえる場所で、私自身初めて担当する領域だった。

ここまで話せば大プロジェクトに抜擢されたと舞い上がるべきところなんだろう、だが私はそうは思わなかった。理由は2つ、スケジュールがなさすぎる!着任後3ヶ月後に金型発注?!もう一つは、引き着いだ基幹部の設計内容が明らかに成り立っていないことを知っていたからだ。それは、かつて東京勤務時代に海外製品の品質改善をしてたときに、最もタチの悪い不具合を起こしていた内容と酷似していた。

私は猛反対した。このままでは納期が間に合ってもこの先数年クレームがで続けることになる。例えコストを掛けても、ここだけは死守する場所だと先輩を説得した。しかし聞き入れられなかった。既にこのテーマの基本方針が決まっており、CEメンバーとして承認されているというだけで跳ね返された。それまで尊敬していた先輩への不信感が一気に湧き上がる瞬間だった。設計者としての優先順位が違うじゃないか。明らかにおかしい。それでもその先輩は東京という地獄から私を救ってくれた恩人でもあるため、それ以降私はこの件への不満を口にすることは辞めた。



この新製品が世に出て3年が経つ、かつて私が担当した基幹部の品質改善はまだ続いている。



つづく





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