3、救い

彼と別れる決断をしてから、新たに一人で暮らす家をなんとか契約した。
誰の手も借りず、とにかくまずは彼のそばから離れることだけを考えて初期費用はクレジットカードを切って。

3月になって、新居の入居可能日が4月の15日に決まった。
後少し、ゴールが見えたようで、少し安心していた。

彼と入れ違いで生活をしていたが、たまたま彼と顔を合わせた日があった。
その日、仕事に行ったはずの彼が、昼過ぎに夜勤になったからといったん帰ってきたのだ。
そしてその日、私は彼に襲われた。
強い力で私に抱きついて、無理矢理キスをされ、無理矢理…
気持ち悪くて、それ以上に怖くて、私は泣きながら辞めてと訴えた。
こんなにも歪んでしまった関係が辛かった。
こんなことで私を繋ぎ止めようとしてきた、彼の頭の悪さに失望した。

いよいよ、身の危険を感じた私は、警察の生活安全課に相談した。
もちろん警察は動いてくれはしないのは分かってた。
ただ、こうでもしないと頭の弱い彼には分かって貰えないと思った。

警察の人が、わたしの父にその場で電話をしてくださり、警察の指示のもと私は引っ越しができるまで実家に戻ることになった。
それまで、ずっと仕事は辞めたくなくて頑張ってきたが、もうなんか何も考えられなくなっていた。

翌日、朝早く父が迎えにきてくれた。
多分、父は言いたいことが沢山あっただろう。
だけど、こんなわたしを攻めもせず、何か聞くわけでもなく、
『何も気にすんな。』と、言ってくれた。
あの時の安心感は今もはっきりと覚えている。
こんな娘でごめんなさい。
心配ばかりかけてしまった。
父とさほど歳の変わらない恋人は最後の最後までクズだった。
なのに、何も言わずにいてくれた。

3月の終わり、私は久しぶりに地元でゆっくり心を休めることができた。
本当に家族には感謝しかなかった。
救われた。
そして、2年の交際を経た私に残ったのは、言葉にできないほどのアイツへの嫌悪感。
いつまでも、アイツが幸せになれない理由がやっと分かった。



寂しい残念な頭の弱いおじさんへ、お疲れ様です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?