野に、咲く。12

野に、咲く。  第十二話

「血風、吹き荒ぶ」

笑顔で安心感を与えてくれ、悲しい時は寄り添い、困ったときは助けてくれる。

僕の中にいる、「姉」とはそうあって欲しいもの。

姉は全くの正反対、血で血を洗う姉との戦いをここで紹介しよう。

僕より2歳年上で、生まれた頃から両親の愛情たっぷりに育てられた姉は、

写真の数がすごい。生まれてから1日1日の写真を現像して貼ってある

アルバムが何十冊とあった。現在ならスマホで毎日何枚も撮れるが

当時フイルムカメラで何枚も撮り、現像するのは相当な思いがないと

できないこと

僕とは仲が悪かった。初めて殴られたのも姉で殴ったのも姉、

とにかく、しこたま殴られた。 グーで顎の下あたりをエグり、脳を揺らす、

何度も失神し、何度も血反吐を吐いた。 姉はピアノも習っていてリズム感もあり

僕とは違い運動神経も良かったからか、一度もケンカに勝つことはできなかった。

ある日家の中で喧嘩が始まった、今日は勝てると優勢な時でも、姉は

慌てることも、怯むこともなく、流しへ向かい、手拭きのタオルを水につけ

濡らしたタオルで僕は祭り太鼓のように叩かれた。濡れたタオルは硬くなり、

まるで角材で叩かれているようでした。


なぜあんなにも僕を嫌ったのかわからなかった。

ある夜のこと僕は寺から父母姉が暮らすアパートへ行った。

父は夜釣りに、母はなぜか不在、姉が一人いて、暇だったのか珍しく僕を

上げてくれた。 姉は何やら作業をしてて、よく見ると余った花火を分解していた

爆竹から手持ち花火など様々な花火を分解し、中の火薬をお皿に集めていて

結構な量の火薬だった。

僕は当時5歳、火薬がどれほど危険なものかもわかっておらず

お皿に、こんもりと盛った火薬を真上から覗き込んだ瞬間だった‥

マッチをする音がし火がついた、姉はお皿の中に火を入れると、”ボン”っと

いう衝撃音と共に僕の頭は大炎上し悲鳴を上げながら流しで水を被った。

顔や首、肩や背中など火傷を負い、髪の毛は燃えて無くなった。

何日かし保育園に行くと先生や同級生から「どうしたの?」と質問攻め

ぼくは「髪切った!」といい、眉もない顔で笑った。

羞恥心というものを初めて感じた時だった。


つづく




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