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同じ失敗を皆に2回見て頂いただけの話【昔のこと】

中学生の時、生徒会に属していまして議長という肩書を持っていました。
あれは文化祭のような何かしらの行事の後で、その総括を全校集会の場で発表するようにと先生から指示を受けたんです。

そう大したことではありません。原稿用紙2枚程度のスピーチを皆の前でするだけです。自慢になってしまいますが小学生の時は生徒会長をしていました。宣誓や答辞もしてきましたので人前が初めてという訳でもありません。先生からは「原稿を読んでも構わない」と言われていましたし、全然大したことじゃない。素直に従っていれば済んだ話だったのですが…

思い返してみると好きではない先生からの「原稿を読んでも構わない」が余計だった気がします。私としては子供ながらに散々やってきた自負がある。舐めないでもらいたいというやつです。性格的にも読むのはダサいなというタイプ。なので当日は覚えて暗唱するという姿勢で挑んだのですが敢え無く失敗しまして、見事に飛びました。

真っ白でした。
順調だったんです。これは余裕だと自画自賛しながら話していたのですが最後の最後で飛びました。締めの一文が出てこない。何にも思い出せないし、それはそれは真っ白でした。でも、こういう時って普通は保険として原稿を持っているものだと思います。私、持ってなかったんです。というより持たなかったんです。万が一飛んだとしてもそこから原稿出して読むなんて恥ずかしくて出来ないし、出せないのならお守りみたいに持っているのもやっぱりダサいなと。ただ持ってないと頭が真っ白なだけでやりようがない。長い沈黙が流れてもう飛んだことも皆にばれてる。仕方が無いので自分がやりたいことをしようと決意し、皆に向かって正直に話し始めました。

「えー、すみません。ちゃんと話すことを考えてきたのですが忘れました。原稿も持ってないので、ちょっと分かりません。ただ皆さんは知らないことですが僕の考えた原稿でいうとあと2行で終わりだったんです。最後の2行です。だからちょっと悔しいんですが、思い出すこともできません。でも、もう一度初めから話していったら勢いで出てくるような気がしています。同じ話を2回連続で聞かせるのは申し訳ないのですが、やってみたいので初めからやり直します。」

そう言って問答無用で同じスピーチを最初から話し始めました。
さっき聞いたばかりの話がそのまま繰り返されるので全校生徒がクスクスと笑う。先生たちは苦笑いしながら呆れて眺めている。でも、そんなことはどうでもいい。私は自分と戦っていました。そして皆が固唾を呑んで待ちに待った同じ所でデジャブして負けました。頭は真っ白、目の前爆笑。

「えー、すみません。ごらんの通り出てきませんでした。せっかく同じ話を我慢して聞いてもらったのに面目ないです。もう一回挑戦したら出てきそうな気もしますが、さすがに3回は気が引けるので止めておきます。大した文章でも無かったですし… 締まりませんがこのまま終わりにします。」

つまらない自負が仇となりましたが、いつも以上の拍手だけは頂いたような記憶があります。
と、ここまで書いてきましたが最後の一文が思い浮かびません。どうやって締めたら良いものでしょうか。ちゃんと思い浮かんではいたけれど忘れてしまったことにしてもらえると幸いなのですが… 締まりませんがこのまま終わりにします。


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