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孫の手とガキの口【昔のこと】

昨日の投稿で子供時代を思い返しましたので、ついでの思い出をもう一つ。他愛もない話です。

私が中学生の時代は体罰というものが普通に存在していまして、私のクラス担任も「孫の手」で殴ると有名でした。殴るは少し言い過ぎで、実際にはポクポクと頭を叩きます。男子は丸刈りが校則の母校、坊主頭を木魚とみなしてポクポクポクポク何発も叩く。ポクポクと言えども硬いので痛いです。私は不良ではありませんでしたが、一度だけ喰らった機会がありまして…

当時「技術」という授業科目がありました。女子の家庭科に対して男子の技術科。その授業になると男女それぞれが各専門教室に分かれて、女子は料理と裁縫、男子は鋸や釘打ちといった工作を習う訳です。

その日の授業はまさかの座学。工作の実技ではなく座学なんて面白くもなんともない。ということで友人三人と共に机の下でUNOをして遊んでいたんです。当然の如く見つかる。技術担当の教師は大激怒で説教。それでは治まらずに担任まで話が行き、孫の手が登場することになります。

四人が一人ずつで職員室に入って来いと言われる。各自は出た後も私語は厳禁。教室までは喋らずに戻れと言われていました。まずは一人目が入り五分ほどで出てきた。「イタイ?」と声には出さず三人がくちパクで聞く。「イタイ…」と唇が答える。同様にして二人目も戻る。「ヤッパ、イタイ?」「メッチャ、イタイ…」という無音のやり取り。そして三番目の私が職員室へと入ります。「来い」と孫の手で促されて、担任が座るの席の前で正座をさせられる私。

「技術の先生から説教はされてるから、ワシからは何も言わん!お前らはただ痛みだけを覚えて帰れ!で、何発喰らいたいんだ?」

担任としては脅しのつもりだったようですが、自称素直な私としては数を聞かれたことを有難く思い、バカなフリして交渉してみます。

「すいません、、、もし1発とか、思い切って0発なんてお願いしてみたら、まさか通ったりということは、、、さすがにしませんよね?」
「ん、おぉん、、、何ちゅうことを聞くんだ。普通はまぁ無理だろう。」

少し担任の顔が和らいだ気がしました。怒ってる風を装っていたのが、ちょっとだけほぐれた言い方に感じます。

「先生の中でとか過去を踏まえたうえで、最低何発くらいからというような決まりみたいなものはあったりしますか?すいません、初めてなもので…」
「はーあ?えぇー。・・・まぁその、一桁くらいでは済まさんぞと思っていると言えばいるが…」
「それならば最低の10発でお願いしたいです。よろしくお願いします。」
と即答して丁重に頭を下げる。10で手を打ちますとばかりに顔も合わせなければもう喋らない。後は首を差し出して担任に身を委ねます。
「お前なぁ、オイッ。10だけっていうのはそのぉ… まぁ仕方がないか…」

ポクポクポクポクポクポクポクポクポク、、、ぽこーん。

「次の奴とは絶対に喋らずに戻れよ。別にルールがあったって訳じゃないんだからな。」

職員室を出ると最後の一人は何も聞いてきませんでした。もう覚悟は決めたらしく腹を括って大人しく入って行く。教室に戻り、四人揃ったところで叩かれた回数の話になった。私以外は30~50も叩かれていたらしい。最後の子だけが帳尻合わせなのか問答無用で50発もいかれていました、申し訳なく思います。

思い返せば、こういう類の要領だけは良かった気がします。習った訳ではないですが、何となく持って生まれた口先だけの技術です。

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