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君と夏フェスと周辺住民の不安

エンタメ関係の仕事に就いている29歳です。

本記事の主題は「イベント開催に当たっては周辺住民の理解を蔑ろにしてはいけない」という基本的なことです。イベント設計の基本のキですが、改めて強く感じたので忘れないように残しておきます。

またロッキング・オン社を咎めるものでもありません。無事に終わり、今回のフェスが今後の国内フェスの指針になってもらいたいと本気で願っております。

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GW期間中、自分が住む町でロックフェスが行われるという体験を人生で初めてした。

開催されたのは「JAPAN JAM」というもので、日本3大ロックフェスティバルも手掛けるロッキング・オン社による、音楽好きにとっては名の知れたものだ。

各種報道の通り、本フェスはコロナ禍に於いて各日1万人程度が動員された。同地区は4月28日より「まん延防止等重点措置」の対象区域に後追いで追加された土地ということもあり、ネガティブな報道も目立った。

「皆が我慢している中、人が集まるなんてバカなんじゃないか」という論調も見受けられた。気持ちはわからんでもない。、外出自粛と医療体制のひっ迫が謳われるなか、人がモッシュピットに集まり、酒を飲み、肩を組み、大声で歌い出す、飛沫は飛び放題だ。若者が多いということもあり、どうしてもそんなイメージを思い描いてしまう。

私自身音楽が好きということもあり、フェスには何度も行ったことがある。音楽を楽しむ、フェスの文化は存続して欲しいと思う。主催者側も徹底した観戦対策を掲げ、音楽の火を絶やさないという強い思いがウェブサイト上にも載せられていた。「この状況でクラスターなんて起きたら本当に暫くの間、フェスが世の中から消えちゃうよ」というような、心情に訴える発信が雑踏警備のスタッフからなされていたことが印象的だった。

その一方で、駐車場エリアには県外ナンバーのプレートが並ぶ。普段は閑散としているコンビニにも、汗ばんだTシャツの若者がドリンクを買うために列を作る。近所の飲食店のカウンターには人がギュウギュウ、テーブル席にはバンドTシャツを着た参加者が興奮冷めやらぬ様子で、その日のベストアクトについてマスクをせず語り合っている。規制退場を実施しているので人が車道に溢れるような様子はなかったが、大きくない駅の構内には普段以上の人混みが作られていた。自粛を訴える人にとっては格好の標的になるだろう。

これが、「フェス文化を守る」という信念の裏で(あるいは表で)起きているリアルだ。

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私はこれまで「わかっていたつもり」でした。

『だってイベントをやることで、人が集まって、街にお金が落ちて、結果的に皆潤うじゃないですか。その恩恵を享受してるくせに、なんで文句言ってくるんですか。騒音ガーっていうけど、20時や21時には音出しを止めますし、交通渋滞だって(フェスに限っては)年間365日の内の数日ですよね?経済効果と比べたら我慢できる範囲じゃないですか?』

知らず知らずのうちに、「魅力的なイベントを開催してあげてる」というような、驕り高ぶりが有ったような気がします。

今回イベントの裏で見られたリアルな光景は、普段人を集める仕事をしていて、音楽にとても興味が有って、ウェブページなどで対策を読んだような私にとっても少し恐怖感が有るものでした。

主催者や参加者の努力が足りないとは思いません。最大限の周知を行って、みんなが協力し、おうちに帰るまでがロックフェスと、音楽を守るような意志が有った、素晴らしいイベントだったと思います。

それでも、「全く音楽やエンタメに興味のない人だったら」という想像が非常に大事だと、今回人生で初めて、「大型イベント開催地の周辺住民」を味わったことで痛感した、そんなメモでした。

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