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音楽の力は音を包んでいるジャケットにもあったことを思い出させてくれます──高地明『ブルース・ レコード・ジャケット』

「When music is over, it’s gone in the air. You can never capture it again.」
 ジャズマン(サックス、フルート、クラリネット奏者)のエリック・ドルフィーが、死の直前に吹き込んだライブアルバム『ラスト・デイト』で演奏後に囁いた言葉です。

 アルバム(CD)に収められたのですから、ドルフィーのいうように音楽が宙に消えたわけではありません。それどころか今はダウンロードという名の下に音楽が宙からやって来るようになりました。どうやら音楽の住処は雲(クラウド)になったようです。

 デジタル化によって音の質そのものが変わってきたとはしばしば耳にします。最近ではアナログ盤での復刻も増えてきているようです。アナログ盤の復刻で歓迎したいことのひとつにジャケットの復活というのがあるように思います。LP盤の大きさでしか感じ取れない迫力、盤に込められたミュージシャンの思いを伝えようとするデザインがLP盤にはあふれています。

 また、横尾忠則さんのデザインのサンタナのアルバムのように変形版のジャケットも数多く作られました。ローリング・ストーンズの飛び出す絵のジャケットとか。ストーンズといえばミック・ジャガーとキース・リチャーズが初めて声をかけたのは小脇に抱えていたLPのジャケットを見て、同じ音楽が好きじゃないかというのがきっかけだったとかいう話も聞いたことがあります。その時持っていたのがチャック・ベリーだったかマディ・ウォータズだったかは覚えていませんが。(バンド名からいうとマディであって欲しいですが、ブルーズフリークはブライアン・ジョーンズでしたからチャックのほうかもしれません)

 で、この本ですが、ロックンロールの父ブルーズ音楽の名ジャケットを集めたものです。この本には、ロバート・クラムのイラストやノーマン・シーフの写真など壁に飾っておきたいと思うもものがあふれています。なかにはアートと呼ぶにはなかなかえぐいもの(?)もありますが、ジャケットにあらわされた迫力はいずれおとらぬ強者(?)ぞろいです。

 ブルーズファンにはたまらないものでしょうが、それ以外の人にも、こんなジャケットがあったんだ、という発見がいたるところにあると思います。また、かつてこのようなミュージシャンがいたんだなということを感じさせると思います。

 音楽は住処が変わっても音楽ですが、それをどう届けるかによって、受け取る側の感じ方もきっと変わるのではないでしょうか。ロックやポピュラーミュージックの名盤ガイドとひと味変わった本だと思います。

書誌:
書 名 ブルース・ レコード・ジャケット
著 者 高地明
出版社 スペースシャワーネットワーク 
初 版 2014年7月18日
レビュアー近況:少し大きな業務のお打ち合わせ終わり、自らへの喝入れで「とんかつ」を喰らう。意気揚々帰社し頑張ろうと思った矢先、乗った電車が反対方向。案の定の前途多難に、殆自分が嫌になる野中でした。

[初出]講談社プロジェクトアマテラス「ふくほん(福本)」2014.11.18
http://p-amateras.com/threadview/?pid=207&bbsid=3252

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