乳がん検診結果を読むための知識
検診結果はレポートで送られてくることも多いと思いますが、今回は検診結果の解説をしたいと思います。
所見を見る前に心構えとしてまず知ってほしいことがあります。
そもそも乳がん検診の目的はなんだったか。それは「乳癌死リスクを減らす」ことです。具体的には「外来受診しなきゃ、などとは露程にも思っていないでしょうけど、あなたは受診してくださいね」という人を探すことです。
言い換えると、
・検診が行っていることは「診断ではなく」、「専門病院(専門科)を受診してほしい人を選別」すること
このため、
・「要精密検査」のハードルは低め
・要精密検査の詳細(どういった検査を行うかなど)は専門科で聞いてください
・専門科で診断をつけてもらってください
というスタンスです。
いいですか。要精密検査のハードルは低めです。
要精密検査となっても慌てずにまずは受診してください。
ちなみに、日本対がん協会のサイトにある「(乳がん検診について)検診の意義と目的」というページでは、全乳がん検診のうち要精査となる率は4.47%とあります。そこからさらに乳がんが発見される確率も約5-6%(全体の約0.2%)です。
さて、レポートに記載されている所見の説明です。
(画像があればよりよいのですが、手元にありませんでした)
マンモグラフィ検診の所見編
マンモグラフィの所見は以下の3つに大別されます
・「腫瘤」
・「石灰化」
・「その他(ほとんどのケースで局所的非対称性陰影)」
おいらの読影手順に沿って説明します。
1:異常のない乳腺組織である場合、マンモグラフィ画像は概ね左右対称に写し出されます。これが異常なしの基準となります。
以下のサイト内にあるようなマンモグラフィ画像が概ね左右対称で異常なしとなるイメージです(GE healthcareのサイトに飛びます)
http://newsroom.gehealthcare.com/mammography-system-mammo-techs-patients/
これに従うと、逆に
「部分的に左右非対称な箇所がある」だけで「異常あり」の判定となります(全体的な左右差は異常ととらないことが多い)。
これを局所的非対称性陰影といいます。分かりにくい所見なので、外来で説明すると「こんな所見でも要精密検査になるんですね」と言われることもあります。決まりなので「そうですね」としか言えませんが。
2:白っぽい塊が目立てば、腫瘤かな?と考えます。
ちなみに腫瘤とは「塊」のことを指します。がんに限らず「あらゆる塊」が腫瘤です。腫瘍は細胞増殖の塊ですので、腫瘤のほうが含みが広いです。
(おいらの場合)検診レポートでは腫瘍は用いずに腫瘤で統一していますが、あまり意識されていないレポートも散見されます。
腫瘤影があればほとんどのケースで要精密検査となります(検診は診断をつける場ではないからです)。
3:より細かく目を凝らし、石灰化(病変)を探します。
石灰化にはさらに以下の2つに分かれます
・「精密検査は不要な石灰化」
・「精密検査が必要な石灰化」
前者は乳腺内の分泌物などに含まれるカルシウムが正常な生体反応により、後者は正常細胞ががん細胞に変化する際の壊死性変化などから生じます。
いずれの石灰化も「変化の結果」生じることがポイントです。
「石灰化があるからがんになりやすい」と誤解されている方もよくいますが、そういうわけではありません。
「精密検査が必要、不要とはどういうことですか?」という質問には、「肌にできるホクロで考えてください」と説明しています。
くっきりとした小さなホクロを見つけても皮膚がんだと思って慌てて皮膚科に行く方はほとんどいないでしょうが、例えば手の甲など狭い範囲に無数のホクロができていたり、ものすごくいびつな形をしたホクロが見つかったら皮膚科に行くはずです。。。。イメージ湧くでしょうか。
乳房のはさみ方一つでよく見えたり見えなかったり、どちらともとりにくい微妙な所見もあるので、「たしかにこのときから要精密検査と言えなくもない」という反省はたいてい石灰化についてです(おいらの場合)
超音波検査では石灰化の描出が難しいため、マンモグラフィを優先させる理由は石灰化をカバーできるからと言っても過言ではありません。
この他、「構築の乱れ」といった所見もありますが、頻度が少なく説明も難しいので割愛します。
ちなみに、ストックフォトサイトでマンモグラフィ画像を見ていたところ、以下の画像にたどり着きました(2019/11/27現在:不適切なリンクの貼り方でしたらご容赦ください)
Right Breast Calcification showed in Mammogram in patient with Intraductal Breast Cancer.
https://www.shutterstock.com/ja/image-photo/right-breast-calcification-showed-mammogram-patient-1236820828
おいらにはみぎ乳房(向かって左)に石灰化(calcification)ではなく腫瘤が、またひだり乳房にも構築の乱れがあるように思えます。タイトルとかけ離れている気がするのですが、どうしたらいいのかはわかりません。
乳房超音波検診の所見編
超音波検査では、ほとんど「腫瘤」の有無が判定の分かれ目です(たまに拡張乳管。もちろんそれ以外もありますが、ここでは割愛します)
腫瘤の全体像が把握しやすいので、必ずしもマンモグラフィのように腫瘤あり=要精密検査とはならず、見た目や大きさなどからある程度は良悪性を判定して(場合によっては診断をつけて)結果を返します。
(おいらの場合)腫瘤については以下の4つに分けて説明しています。
1:悪性の可能性を考慮すべきもの
2:良性と思われるが、大きさなど今後も変化が予想されるもの
3:小さくて判定困難
4:のう胞
厳密な意味での要精密検査は1だけです。2については半年-1年後の再検査、3・4は異常なしになることが多いでしょうか。のう胞も異常なしとしています。
ここでも前述の通り「腫瘤」「腫瘍」がごっちゃになったレポートが散見されますが、具体的な病名が書かれている場合は大抵の場合「良性」として扱われているはずです。
良悪性の判定は、大きさだったり形だったり。アルゴリズムがあるのでそれに従うのが普通ですが、経験や過去の結果などを踏まえて決定することもあります。
大雑把に言えば
・小さいよりも大きいほうが怪しい
・楕円形はたいてい問題なし。楕円形より円形、円形より複雑な形のほうがより怪しい
・全体像がくっきりと写っていないものはたいてい怪しい
以上になります。ご参考になれば幸いです。
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