反復横跳び少女
「タタ、タタ」
そんな音が聞こえて来そうな俊敏な動きをする少女。時刻は朝七時前である。
この冬の時期、曇天ばかりを見上げて来たこの街の人々にとって、久しぶりのお天道様が顔を覗かせた朝、少女はなぜか反復横跳びをしていた。
気になるのはその様子である。場所は駐車場だから、そこまでおかしな話ではない。でも何かおかしい。そう、少女が跳んでいるのは今降りたようにドアの開いた運転席側なのである。そばには中年の女性。同じく髪を一つに結び少女の様子を見守っている。見方によっては、運転席に乗るのを邪魔しているようにも見える。
その2人の中に、あの時どんなストーリーがあったのか、私は知ることはできない。私は時速40キロで横を通り過ぎただけだ。そんなことが街のあちこちに散らばっていて、知ることのない秘密や人生が今日も回っていく。
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