番外編 心がチクチク

心が痛ーいな。

身を投げてリターイア。

本当はしたーいな。

でもできないから弱ーいな。

こんな夜は小さく丸まって、

自分を守ろう。

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駅を出ると台風のような強風が私の髪をさらった。
前を開けていたコートも同時になびく。

すっかり暗くなっていた帰り道を一人歩く。
心細くなってつけたラジオがイヤホンから漏れる。
ただその会話は全く耳に入って来なかった。 

無性に悲しくなる。
無性に人に会いたくなる。
無性に愛して欲しくなる。

寂しさを埋める方法を求める声が押し寄せてきた。

いつしか風に混じり雨が降り出す。
傘を指して通り過ぎる子どもたちと、車のヘッドライトが照らす雨粒でようやく気がつく。

きっと気づけなかったのは、

冬用の厚手のコートを着ていたからだ。

感染症予防のためにマスクをしていたからだ。

ショートにした髪が無造作に暴れていたからだ。

...ううん。あまりに自然に私の気持ちと一致していたからだ。

家につき部屋の電気をつける。

「ただいま」

その声に答える音はなく。

やはり一人だった。

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