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「裏切りデザイン」を覚えてデザイン力を向上させよう/ベーコン #ノンデザ25周年

『ノンデザイナーズ・デザインブック』25周年記念、特典PDF「Missing Pages 2023」からの抜粋です。

特典PDF「Missing Pages 2023」のpp. 36-39に掲載しています。


地味テクニック「反復」➡ 誰もが無意識で使っているけど、使いこなせていない問題

『ノンデザイナーズ・デザインブック』ではデザイン4原則の「反復」についてこう書かれています。

あなたは制作物に、すでに反復の原則を使っています。

そうなんです。デザイン4原則の中でも無意識に使っているのが「反復」なんです。

無意識に使っているからこそ勉強しようとは思いづらい「反復」ですが、実は使いこなすとデザイン制作の大きな味方になってくれます。

前半では事例を使って「反復」を解説し、後半では「反復」の応用編「裏切りデザイン」を紹介します。デザイン未経験者も経験者も「裏切りデザイン」を覚えてデザイン力を向上させましょう。

図解:「反復」とは

改めてデザイン4原則の「反復」を図にしました。

「反復」とは、繰り返すことでデザインに統一感をもたせることです。

でも、そう言われると、 こう思いませんか?

  • 「そもそも、統一感を持たせると、どうデザインがよくなるの?」

  • 「いや、デザインって統一感を持たせない方がよくなるときもあるよね?」

確かにそうなんです。

では「反復」を使った例、「反復」を使っていない例を見て考えてみましょう。

Bの「反復」を使っていない例は、デザイン4原則「整列」によって整えられた「なんとなくよいデザイン」に見えるかもしれませんが「反復」はされていません。

美しさのデザインとしてはこのくらい遊びのあるデザインでもいいのですが、機能面の側面からみると、よいデザインとは言えないのです。

機能面としてのデザインが悪くなる例

なぜ「反復」を使わないと機能面としてのデザインが悪くなるのでしょうか。 Bの一部分を拡大してみると、タイトルとサムネイルの配置が上下逆になっていますね。

今回のYouTubeサムネイル、タイトル、チャンネル名はクリックできるボタンの役目もあるので反復された同じような並びのほうが使いやすいデザインと言えます。

初めてサイトを使う人、インターネットが苦手な人にとっては「反復」が使われた同じ並びのデザインのほうが使いやすいはずです。

正しく反復して使いやすくなったデザイン

他にも、以下のように反復することで機能面としてのデザインがよくなります。

  • ❶ アイコンの形を統一する

  • ❷ サムネイルの形を統一する

  • ❸ タイトル、チャンネル名は左揃えか右揃えに統一する

あえて「反復」を使うのをやめる「裏切りデザイン」

右図では、いちばん上の「ワン 初めての吠え」というサムネイルが大きなサイズで中央上部にドーン!と配置されています。この部分にはあえて「反復」を使っていません。

一部分だけ「反復」を裏切ることで、ひとつのサムネイルを際立たせます。「反復」とはデザインを繰り返して統一感を出すことだけではなく、一部分「反復」を裏切ってアクセントをつくりだすことでもあるのです。

「反復」という原則の基本は「美しさ」や「わかりやすさ」をつくりだすことです。しかし、それだけではなく、際立たせる部分を作るための「フリ」としても大事な役割を持っています。お笑いの技術の「フリ」と「オチ」を想像するとわかりやすいかもしれません。フリが丁寧であればあるほど(=「反復」を繰り返すほど)、オチが際立つ(=わかりやすい)のです。

つまり、意図を持って、あえてひとつだけ「反復」させず目立たせる。これがデザイン制作時に使える「反復」の応用ワザ「裏切りデザイン」なのです。これは4原則のなかの「コントラスト」に通じます。

まとめ

「反復」とはフォントやアイコンや色やレイアウトを繰り返すことでデザインに統一感を出すことです。そして、途中であえて「反復」を裏切ってデザインにアクセントをつくりだすこと。これが「反復」の応用の使い方であり、デザイナーの腕の見せどころ。ぜひ、日々のデザイン制作で実践してみてくださいね。

真面目な人が「反復」を使いすぎると陥る罠

デザイン4原則に忠実なデザインを作ることに気を取られすぎると、整ってはいるけど、誰にも伝わらないデザインになってしまいます。「理論ではあってるはずだけどなんだか違うデザイン」になってしまうのは、デザインを真剣に作っている人ほど陥る罠です。
「なんだか違うデザイン」から抜け出すポイントは理論(4原則)と感覚を交互に使ってデザインを作っていくことです。

4原則を信じすぎず、自分がよいと思えるデザインを作りましょう。
感覚で作ってみてデザインに違和感を感じたら、4原則に当てはめて修正してみましょう。
こうした試行錯誤を繰り返すことで、あなたのデザイン力は必ずアップするはずです。ここまで読んでくださったみなさんがデザイン制作を好きになってくれることを願っています。


ベーコン

フリーランスデザイナー

1984年生まれ北海道在住。 楽しく暮らすことが好きなグラフィックデザイナー。 デザインを活用したマルチな活動を展開している。

ベーコンさんの世界ブログ」やYouTubeチャンネル『ベーコン家のポテとひだり』を運営(2023年5月現在チャンネル登録者数10万人超)。

著書『レイアウト・デザインの教科書』(共著/SBクリエイティブ)