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手術してきた

https://twitter.com/non666love/status/1139069577575378944?s=21


左乳腺上に3センチ程の腫瘍ができた。
昔から浮腫や良性腫瘍が出来やすい体質なのだがだいたいほっとくと治るから、まあ今回も治るやろと思ったらこいつは半年ぐらい居座りやがったのでええ加減鬱陶しくなって取る事にした。

手術の一ヶ月前くらいにまずエコーと組織検査をやった。良性か悪性かをより確実に調べられるが、これがまた痛い。
麻酔を打って、ぶっとい注射針みたいなやつ(詳しくは「マンモトーム生検」でググってくれ)をズブッと腫瘍に差し込んで、バチンッという音と共に腫瘍の一部を吸引する。この「バチンッ」が割と衝撃を伴い、結構怖い。あと麻酔切れてからがメッチャ痛い。鎮痛薬必須。入手したらすぐ飲め(自戒)。

組織検査で良性と判断されたところで手術の相談に入る。
悪性ではないから放置しても死ぬことは無いが、肥大・変形の可能性があるという事で取る方がベターという結論に至った。
4センチを超えると局所麻酔ではなく全身麻酔となり、料金も入院日数も増える。

幾ら「局麻、電メス止血、日帰り」とは言っても術前一週間程度は鬱々としていた。
自分は双極も患ってるのでデフォルトでしんどい。しかも前日に些細な事で家族と揉めた。控えめに言って死にたい。
遊戯王の文庫版19巻を読んで寝る。「やっぱジャンプは燃えるな」という小学生並の感想を抱く。だって燃えるんだもん。

無地のTシャツと無地のスウェットに着替えて昼過ぎに病院に行く(プリントやボタンや飾りのある服を着ていくと色々めんどくさい事になるという事を私は知っている)。
血圧と熱を測る。体温計の置き場所がわからず事務のお姉さんに聞く。血圧計は印刷紙が切れている。
名前のタグを手首につける。これは度々切り忘れられてそのまま帰ってしまう事でお馴染みのヤツだ。
看護士さんに導かれて更衣室に行く。上だけ甚平みたいな青い術服に着替えて荷物をロッカーに入れて手術室に向かう。

手術台に横になると、医療ドラマでよく見るデカいクラゲみてーなライトが真上に来る。ブラックペアンは中々面白かったなあとか思い出す。
パルスオキシメーター(指先で酸素測るやつ)を右手人差し指に着けられるが、これが普段のクリップ型と違ってシールタイプで装着されててかっこいい。クリップ型は外れやすいからな〜なるほどな〜、等と思う。モニターがピッピ言う。
この辺で手術室に音楽が流れ出す。徳永英明のカバーシリーズだ。家にアルバム全部ある。誰のチョイスなのだろう。

「電気メスの電気を逃がすためのシールをお腹に貼りますね」
「“逃がす”とは?」
「えっと、目には見えないんですけど、体内に電気が流れるので、それを逃がします…わかりますか…?」
「はい(そのまんまやんけ)」

腫瘍の上にペンで切取り線みたいなのを書かれる、消毒される、黄色い管の装置(詳細聞き忘れた)をペタペタ貼られる等した後、「お顔を隠す棒を立てます」と言われる。切ってるところ見られないのか…とちょっとしょんぼりする。当たり前なのだが。
ちっちゃい物干し竿みたいなのを眼前に立てられる。「これは名称はなんていうんですか?」「リヒカといいます」
リヒカ。かわいい。リヒカ。

リヒカの上に青い不敷布がかけられる。局部のみ穴があけてある。不敷布をリヒカに金属クリップでとめる。クリップには「必ず病室に戻すこと」とシールが貼ってある。戻し忘れる人がいるのだろうと思う。
「先生が清潔にして入って来られますから、これは清潔との境い目です」

執刀医が来る。不敷布でなんも見えへんので様子がなんもわからん。
「麻酔打ちますねー」
「はい。(担当の)先生にもお伝えしたんですが麻酔が効きにくい体質なので手強いかもしれません」
「えっ、そうなんですね」
伝わってへんのかい。既に嫌な予感がする。
一発目の麻酔注射が入る。何ヶ所か打たれる。数秒後「これ痛いですかー?」と針(見えへんけどおそらく針)でチクチクやられる。「痛いです」「効きにくいんですね…足します」
二発目。再度チクチク。「感じます?」「チクチクします」と元気よく答えると「エェッ…」と小さく言われる。「本当に効きにくいんですね」
「はい(せやからそう言うとるやろがい)」

三発目でやっと感覚が麻痺る。効きにくい上に抜けやすいので嫌な予感はまだ払拭されない。
「電気メス」という声と共に電メスが入る。シュウウウ…、ジュッジュッ、みたいな音がする。めっちゃ焦げ臭い。肉を切る匂いだが、「焦げくっせ」以外の感想が無い。
戦場帰りの兵士なんかが「あれは人間を焼く匂いだ…!」的な事をよく言うが、それってこれとどう違うんだろう。髪の毛や内臓も燃えるとまた違う匂いになるのだろうかと考える。室内には相変わらず徳永英明が流れている。「桃色吐息」だ。全然気分と違う。「ジョジョ〜その血の運命(さだめ)〜」とか流して欲しい。

執刀医が助手に指導しているっぽい会話が聞こえる。小声だしマスクしてるし内容は聞き取れないが。俺の体で急に実習始めんな。

ここら辺から雲行きが怪しくなる。
電メスが熱いのだ。ジュッとやられた瞬間「アッツッ!」と叫んだ。
以降あんまり書くことが無い。執刀医が一回器具をカチャーンと取り落としたり私は「アチィ」「イテェー」「ゥウー」とか言ってた。「痛いですか」と言われる。痛いから痛いっつってんだろ(半ギレ)。
暫くして助手の人が「もう切り取れますから」と報告してくれるが、なんでもいいから麻酔を、麻酔を足してくれ。俺の俺の俺の話を聞け。

「電気を逃がすシール」を度々ぐーっと圧迫される。人間が押しているのかそういう機能なのか見えないのでわからない。
圧迫も苦しいが、痛みへの恐怖で手術台に足を踏ん張る。激痛が走ると身体が跳ね上がり、跳ね上がると先生の手元が狂うので、二次災害を回避するためになんとしても抑えなければならない。
掌と足の裏にめちゃめちゃ汗が吹き出している。脱ぎ履きしやすいようにビーサンで来たので、帰る時さぞかし滑るだろうなとぼんやり思う。
痛みに備えて息をとめていると、モニターに変化が出たらしく「息苦しいですか?」と聞かれる。そうだけれどもそういう事ではなく、麻酔を(以下略)。

「もうだいぶ取り出せてますからねー」と言われる。なんか切ったっぽい音と共に激痛。流れる徳永英明にうるせえ!!!!と怒鳴りつけたくなるのを飲み込む。徳永英明は悪くない。

対策として「遊戯にダイレクトアタックを食らった海馬社長はもっと痛かったに違いない」「蟲にたかられた衛宮士郎よりだいぶマシ余裕」「腹をぶっ飛ばされたエルヴィン団長よりは痛くない」「俺は不死身の杉元だ」などと考えて痛みを紛らわす。オタクは万病に効く(錯乱)。

「出ましたよー」と、シャーレに乗せた腫瘍が持って来られた。思ってたよりでかい。
大きい枝豆を血まみれにしたやつと言ったらわかりやすいだろうか。ころんとして可愛い。これはそのまま病理に回されて輪切り標本にされてしまうのだが、後日フルカラー画像を貰える事になっている。本当はそのまま欲しかった。
腫瘍を見ている間にも皮膚が引っ張られている感覚がある。
「縫合に移りましたか?」「はい。わかりますか…?」「縫われてる感じします」
ぶすぶすやられて、いてー!!と言いながら縫われる。「あと“いっしん”ですから!」と言われるも、いっしんってなんだ……あっ、ひとはりと書いていっしんか……業界用語だな……。頭がはたらかない。

「終わりました。お疲れ様です」
はい。お疲れ様です。
縫合は溶けるやつで縫われたので抜糸の必要は無い。防水テープを貼られる。血が滲んでいた。

付き添ってくれた看護士さんとなぜか白い巨塔の話になる。「院内回診見た事ありますか!?」と聞かれたのでありますよと答える。彼女は見た事ないのだろうか。
医療の人達には謎が多い。

会計など色々やっている内にいよいよ麻酔が抜けてくる。一刻も早くロキソニンを飲みたいが、空腹時に服用するとひどく胃を荒らすのでなにか食べないといけない。最寄りのコンビニでドーナツを買って、ベンチに座って食べた。
すげえ晴れてる。雀がひょこひょこ歩いている。ふくふくしいやつも細っこいやつもいる。服にこぼれたドーナツを払うと、細いのがたちまち咥えて飛び去った。鳥について、飛行は相当カロリーを消費するとどこかで読んだ記憶がある。寿命は短い。あんなに可愛いのに。とか考えて鬱っぽくなる。考えても仕方ない。何にもならない。てか疲れた。
ロキソニンとムコスタを飲む。踏ん張ってたせいで足めっちゃ痛い。

ちなみにタグは切られ忘れた。自分で切るのは難しい。

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