忘れないわ/加納エミリ(feat.笠原瑠斗)
世界中があっという間に特異世界に変貌をとげてしまった2020年もあっという間に過ぎ去り、僕だけじゃなく世界中の人々も、いままで当たり前だったことが当たり前ではなくなり、価値観が一気に入れ替わり、そしてその新しい価値観のためにまた新たな分断がうまれたりと、なかなかにしんどい世界となってしまった。そしてそんな状況になりはやくも2年が経過するかもしれないという昨今である。個人的には、それまで毎週のように行っていたライブ・リリースイベント・その他音楽に関わる趣味が全て絶たれ、他人との接触を元にしていた行動はすべて抑制され、個人的な感覚や感動がどんどん分厚い壁におおわれていくような変異を感じていた。。
そんな状況下でコンスタントにドロップされる加納エミリの作品やサウンドが、その都度ぼくの「感情のぶあつい壁」をぶち破る。わすれかけていた音楽を聞いた瞬間の「感動」や「輝き」を蘇らせてくれる。ほんとうにそんな感じだ。思えば1年前の2020年にも、活動を一時休止していた彼女が再始動した際の楽曲「朝になれ」に胸を踊らせ、おなじようにその衝動を書き留めたい、、とnoteに記事を書いた覚えがある。そしてまさに今回の彼女の新作「忘れないわ」にも感情を揺り動かされ、1年ぶりに筆を踊らせているいまの私である。
最近の彼女の作品はミディアムテンポのメロウなメロディーラインに、1年前にも書いたが独特なアンニュイなニュアンスが絶妙な彼女のヴォーカルが響く(そしてそのようなモードは大歓迎で個人的にはその方向性が大好きでたまらない!)「笠原瑠斗」氏のヴォーカルトラックも最高である。エモーションや表立った感情表現は二人とも抑えてどちらかというと都会的でクールなヴォーカルなのだが、その細かいヴォーカリゼーションに繊細な心情があふれているかんじがして、とてもいろっぽくセクシーなのである。
そう、今回の作品で特に感じたのはとても「セクシー」だなということである。ここまで直接的に男女の関係や心情をリアルに歌っていた楽曲は無かったかなと感じた。「忘れないわ」というタイトルからもいろいろなシーンを想像してしまう。そのセクシーさのバランスが絶妙で、聴くたびにいろいろな情景・シーンが脳内でうかぶような、かなりアーバンかつミッドナイトなイメージである。
音楽的には、いつにも増して洗練されたトラック数の少なさ、そこに厳選されたリズムパターンやカウベル?のような印象的なサウンド。あえてだろうが生音を排除した感じの淡々としたトラック、色っぽいベースライン。前作ではギターのサウンドが印象的だったが、今回はどちらかというとR&Bに近いトラックに加納エミリと笠原瑠斗のヴォーカルが絡み合うような、その対比がとてもクールだ。聞いた瞬間に「加納エミリ」のサウンドだとわかるこの個性、、さすがである。
新しい作品を耳にするたび「本当に素晴らしい、、、」と心を奪われる加納エミリの才能に都度度肝をぬかれるのである。誤解をうむ表現かもしれないが、もともとアイドルだろうがアーティストだろうがあまりそういうカテゴリーにはこだわりは私にはなくて、素晴らしい音楽をストイックに追求してくれればそれだけでずっとリスナーとして、ファンとしては応援していきたいと思わせてくれる。その気持ちを再認識できる。そんな名曲がまた一つ誕生した。