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長じて楽器を始めて世界第一級になったレーデル氏、バウマン氏

 2回に1回までは、音楽の話題を書いて良い、と自分に許したので、ノートを7日連続、8本書けているようです。ということで、この方針をお許しください。

 標題のエビデンスは、「AIに勝つ!」p.320「人間も「暗黙知」を習得しやすくなる」、中盤、p.321以下 の次の記述のためにあります。

「一方、最近、大人向けに、ピアノなどこれらの技能の習得を助けるメソッドが開発され、アマチュアながらそこそこ達者な水準に短期間で到達できるようになっています。これは、形式知を併用したり、自学自習のため、メタ認知能力を駆使して自分の暗黙知の習得状況、入出力のリアクションをモニターしたりすることで、暗黙知の習得を効率化しているといえます。」

「ピアノやバイオリンの基礎訓練が低年齢でできていて、18歳以降にフルートやホルンなど、別の楽器に乗り換えて短期間に一流プロの腕前になる人がいます*31 。スポーツでは、たとえば、スピードスケートのための身体作りができていれば夏季スポーツの自転車競技でも世界を狙える。このことは、橋本聖子・元選手が五輪で実証済みです。深層学習では、別目的の学習済みモデル(学習結果)を流用、転用し、少量の正解データで新しい目的のAIを作れる「転移学習」が同様の働きをしてくれます。」

  上記本文中に、フルート、ホルン、とあります。これらの楽器を大人になってから始めて世界一クラスになったのは誰じゃい?と疑問をもった方向けに、p.333に標記の名前を用意しています:

*31…たとえばフルートでは故クルト・レーデル氏、ホルンではヘルマン・バウマン氏が代表的な例としてあげられるでしょう。

他の楽器にも該当例はいくらでもあったことでしょう。このお二人とは直接お会いして話したことがあり、確実なので、取り上げさせていただきました。

20歳でプロオーケストラの首席奏者になるのですが、フルートを始めたのは18歳のとき、と、ミュンヘンや、新宿の酒場で本人に聞いた覚えがあります。ご縁あって何度も1対1で食事や飲酒、ドライブに興じたことがあるのです。関連のエピソードはまた別の機会に書きたいと思います。

"幼少時からピアノとチェロを学び、ホルンを始めたのは20代に入ってから" と書いてあります。ほどなくプロオーケストラの首席となり、30歳で、ホルンの国際コンクールの最高峰ミュンヘンコンクールで優勝します。欧州では、 He is arguably THE best horn player of all time.  とまで評され、少なくともある時期は断トツ世界一でした。 

 巨大データでトレーニングした結果の学習済モデルを流用し、出力層に近い部分についてのみ、結線の構造や重みを変化させ、高精度を叩き出せるのが深層学習の転移学習です。ある楽器に10年以上習熟して大人になり、その後で、別の楽器を僅かな年数でマスターし世界一になるのは、「人間版、芸術家版の転移学習」と呼んで良いのでは、というのが書籍のポイントです。画家なんかでも、超一流の基礎技術をもっていれば、青の時代、キュビズム、、と作風が変わっても一流であり続けられる人は、内部的に転移学習をしているのかもしれませんね。

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