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飛ぶクラゲ

すっと浮き上がるように飛ぶロケットは、まるで海底を漂うクラゲのように滑らかであった。船中のマグカップがカタカタと揺れる。中に入ったカフェラテがなびき、右から左へと大きく波打った時。カップの淵を越えて、薄茶色の液体がグレーのデスクの上に溢れる。ゆっくりと広がっていく様子が、ヨーグルトに垂れた蜂蜜のようで、平凡な日常が遠くなって行くことを感じた。飛ぶロケット。遠くなるヨーグルト。シートベルトのバックルを、キュッと握って、彼女は宇宙飛行士になったことを、少し後悔した。

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