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フェス叩きを考える

8月20日から22日まで、新潟県の苗場スキー場においてフジロックフェスティバルが開催されました。
昨年はコロナウイルス流行の影響で中止となりましたが、2021年は入場人数を減らし、感染対策を講じた上での開催となりました。
どうにか予定通りの開催となったものの、案の定ネットではそれに対する批判が散見されました。 

https://togetter.com/li/1762492?page=4


まず始めに、これまでコロナ禍で開催された複数の野外フェス(国内)において、クラスター感染が発生したという発表は一度もありません。JAPAN JAM、VIVA LA ROCK、りんご音楽祭など、どれも懸念されていたような「最悪の事態」は発生しなかったのに開催当時には猛烈なバッシングを受けました。
例年よりも入場者数は抑えているとは言え、多くの観客が集まるイベントで大規模感染が出なかったのですから、有効な感染対策が行われていたと考えていいでしょう。 

さて、7月下旬から今日まで、これまでに無かった勢いでコロナウイルス感染者が増加しています。
病床が足りず、自宅療養中に亡くなる方、陣痛が起きても病院に搬送して貰えず、自宅で生まれた新生児が命を落とす事案も発生しています。
医療が正常に機能していない異常事態が一部の地域で起こっているのです。 

各々が感染リスクを最小限にする心掛けを求められることは言うまでもありません。しかし他者の行動を非難したところで何の意味もありませんし、何の役にも立ちません。非難に意味があるならば感染者は減少の一途を辿っている筈です。沢山の人が毎日のように誰かを咎めているのですから。
しかし実際のところは感染者は増える一方で収束の気配などありません。 

他者を非難する行為はただ分断を生むだけです。悪いのはウイルスなのに人間同士が憎み合う、そんな構図を作り出すだけです。
いい加減その事実に気づいて他者への不要な干渉は止めるべきです。 

オリンピックもフェスも然り、これから開催されるイベントも然りですが、あらかじめ決まっていた事を予定通り実行しようとしているだけで何も咎められる謂れはありません。とは言え自治体などから中止要請が出される場合もあり、民間企業が主催するイベントの場合、そういった要請には従う他ありません。
しかし個人が「自分には関係のないイベントだから」開催を非難するのは極めて独善的な主張です。コロナウイルスの流行が始まって1年半以上が経過します。収束の目途は未だ全くついておらず、この先何か月、何年この生活が続くのか誰にも分かりません。最早「収束するまで不要不急の外出をしない」事など不可能なのです。他人に「帰省するな、旅行に行くな、イベントに行くな」と言う人達も収束するまで自粛し続ける事など出来ないと思います。往来の激しい場所に出向かなくてはならない事もあるでしょう。そうなった時、これまで他人に向けていた糾弾の矛先が自身に向く事になります。結果的に自分自身の首を絞める事になるから、分断を煽るような糾弾はすべきではないのです。 

出演者が意思表明をしなければならない風潮 

フジロック開催に際し、出演をキャンセルした人や予定通り出演をした人が、ツイッターに自身の考えを所謂「長文スクショ」でアップしているのを複数見かけました。
また、King Gnuのライブの際にメンバーがコロナ禍における出演についての心情をMCで吐露する、といった場面があったようです。
自分の意思で「言葉で伝えたい」と思ったなら勿論それは自由だと思いますが、あまりにもフェスに対する非難が多い為に「意思表明しなければならない」風潮が出来てしまったように思います。出演を取りやめた人が経緯説明としてそのような手段を用いるのは理解出来るのですが、出演を決めた人がバッシングを回避するための弁解や予防線を貼らなければならない、そんなプレッシャーを感じたとしたら、非常に理不尽な事だと思います。
繰り返しますが予めブッキングされていたライブに出演することは何も悪い事ではありません。誰かを苦しめる為にそうしている訳でもありません。ステージに立つこと、演奏することは彼らに認められた当然の権利であるのに、何故それについて弁解する必要があるのでしょうか。
彼らは堂々とライブをしていいのです。何かしらの声明を出さなければ後ろ指を指されてしまうとしたらそんな風潮の方がおかしいのです。そんな不要なプレッシャーを与えたのもフェス開催を非難した人々の責任と言えます。 

喜ぶよりも何かしらの支援を 

フジロックは予定通り開催されましたが、その反面多くのフェスが中止を余儀なくされました。
公式に発表されると中止を喜ぶ声や「英断だ」という意見がツイッターに多数書き込まれますが、これについても私は疑問を感じます。
感染リスクが高いと思われるイベントが無くなった事が嬉しいのでしょうが、中止するという事は莫大な損害が発生するという事です。補償はありません。何の救済措置もなく主催者はただ痛手を被り、出演者も仕事をひとつ奪われます。
観客にとっては娯楽、批判者にとっては無価値なものでも、彼らにとっては仕事です。生きる事そのものなのです。何も悪いことをしていないのに理不尽にそれを奪われた人達がそこに居るのに、喜びを表明するのはあまりにも配慮に欠けているのではないでしょうか。英断だなどと言われても、彼らはそうしたくてした訳ではありません。嫌でもそうするしかなかったのです。
本当に中止に対して感謝する気持ちがあるのなら無神経に喜ぶのではなく、主催者に対し何かしらの支援をしてはどうでしょうか。
殆どの場合イベントが中止された場合でも既に用意されたグッズがネット販売されます。是非グッズを購入することで感謝を伝えて下さい。それがイベント存続の為の支えとなります。 

このコロナ禍において私達がすべきことは否定し合うことではなく支え合うことです。イベント中止という判断は主催者にとって、社会の為に我が身を犠牲にするも同然です。一方的にその犠牲の恩恵を受けるのではなく、私達も彼らを支えるべきであると思います。


※みんなのフォトギャラリーより、竹内健太(タケタケ)さんの画像をお借りしました。ありがとうございます。
https://note.com/taketake1309/

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