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クラブが怖い

週刊台本 #31  漫才

A:自分が普通に生きていたら絶対行かなそうなところって、死ぬまでに一回くらいはいきたくならない?
B:まあ、そうだな、一回くらいは
A:お前は?図書館?
B:決めつけるなよ。別にいけるわ
A:大丈夫?
B:何?
A:怖くない?
B:俺のことどう思ってんだよ
A:本いっぱいあるよ?
B:活字が怖い子供じゃないから。なんなんだよ
A:おれはね、クラブね
B:ああ、クラブ。なかなかね、縁がない人は縁がないから
A:怖くない?
B:まあ、ちょっと怖いかもね
A:何が怖いってさ…、至近距離で大きい声で話さなきゃいけないところだよね
B:どこ怖がってるんだよ。いや、お前なんか内向的な人間なんだから、ガラの悪い人に絡まれないかなとかそういうこと心配しろよ
A:いや、その辺は大丈夫
B:本当に大丈夫なの?
A:習ってるから
B:習ってる?何を
A:解剖学
B:怖ええなあ、空手とかだろ、普通。何、内部から人を壊そうとしてるんだよ
A:いやだから、クラブでちょっと話しかけに来てよ
B:わかったよ

(以降、2人とも大声で)
B:ねえねえ、何してんの?お兄ちゃん、ひとり?
(A、自分の腹に手を当てて)
A:なんですか〜〜〜
B:すごい腹式呼吸。クラブで腹から出すやついないぞ
A:初めてなんですよ〜〜〜
B:テノール歌手みてえな声出すな。喉から出せ、喉
A:こんな感じですか?
B:そうそう
A:初めて来たんですけど、すごい人ですねえ
B:まあ、いっつもこんなもんだよ
A:ヨン様ブーム再来ですか?
B:ちげえわ。よく見ろよ。マダムいないだろ1人も
A:こんなに人がいるのヨン様以来なんで
B:そんなことねえわ
A:それにしてもあれですねえ。うっさいですね
B:「うっさい」って言うな。クラブはうっさくてなんぼの場所だよ
A:誰が鳴らしてるんですか?
B:本当にクラブのこと知らないんですね。あそこにいるDJが鳴らしてるんですよ
A:そうなんですか
(A、Bが指差した方に歩いていく)
B:おい勝手に行くな
(A、DJのヘッドホンを外す)
B:勝手にヘッドホン外すな
A:おじいちゃん、もう少し音小さくしましょうね
B:おじいちゃんじゃねえわ。耳が遠いから音量でかいわけじゃないから
A:機械、勝手に触らないでね
B:勝手に触っていいんだよ。プロだぞプロ
A:ちょっとすいません
(離れたところに行き、人と少し話す)
B:何?何してんだよ
(戻ってくる)
A:あそこにいる人のことを、入り口にいる人が探してたから呼んだんです
B:めちゃくちゃ耳いいな。こんな大音量の中でそんな声聞こえるんですか?
A:すいません。……多分なんですけど、知覚過敏で
B:違うって。歯のやつだから。なんとなく合ってそうだけど。なんだお前、気持ち悪いな
A:なんですか
B:お前気持ち悪いんだよ。お前みたいなやつ、クラブくるな。帰れ
(A、Bの腰を揺らす)
B:え?何!?
(B、その場に膝から崩れ落ちる)
B:お前、何してんだよ
A:解剖学
B:怖ええよ!
A:もういいわ。帰る
B:そうしろそうしろ
A:帰って、想像で育ててる花に水あげないと
B:気持ち悪いな

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