見出し画像

【能登半島地震】水道の復旧みなさまありがとうございます。そして水の復興に関して思うこと

支援業務と自分の生活再建のため書く時間が取れなくなっています。このためしばらくの間、@Nahomamamuu さんに校正や編集をお手伝いいただいています。ありがとう。

被災地を走っていると、数キロごとにいろんな自治体の職員の方が水道工事をしています。 多くの方の努力に本当に頭が下がります。 それだけ多くの人が頑張っていてもまだ奥能登のほとんどの地域には水道が戻っていません。 今回の地震はそれだけ被害が大きかったのです。


能登の水道管は地震でどうなったのか?

地震発生後2分もしないうちに風呂の水栓を開いたのですが、すでに水は出ていませんでした。 ちょっと水道管が漏れている程度なら、しばらくの間は水が出るはずなので、おそらく崖崩れや貯水タンクの倒壊など、ものすごく大きな被害が出た事はすぐわかりました。

家の裏に出てみると、道路がこんな感じでした。

水道管は普通は道路の下を通っていますから、これだと確かにズタズタになってますよね。 さらに30mほど南に歩くと山が崩れ、電柱も倒れて道路が塞がれていました。

反対の北側に150mほど歩くと、もっと大きな崖崩れが起き、道路を塞いでいました。

奥能登全域がこんな調子ですから、当然ながら、水道管は何箇所破損しているか数え切れません。 これを一つ一つ丁寧に漏水調査をしながら復旧を進めているのでほんとに大変だと思います。

道路の崩落もたくさんありますから、道路と一緒に水道管も崩落してしまっています。 そういう場所では、道路の仮復旧と同時に仮設の水道管を上につないでいます。

歩道の上を延々と伸びてゆく仮設の水道管

確かに、この方法をずっと続けていれば、水道の復旧には何ヶ月もかかるのはわかります。

また、浄水場からの距離があまりに長い所では、仮設の浄水場を作って川の水を汲み上げる試みが行われています。


水が届いていない水道管ではなく、川から直接取水して仮の浄水場に送る試みをしてました

というわけで行政は全国の自治体を総動員して復旧に当たっています。昼も夜もあちこちの自治体の水道局の車が走り回り、数キロごとに職員さんが検査や復旧を行っています。本当にありがとうございます。

能登の水事情ってどうだったのか?

復旧はさておき、そもそも能登地方の水事情ってどうだったんでしょうか?

能登地方は、水にそれほど恵まれた場所ではありません。
なので、白山ろくのダムの水を能登島まで100km以上に渡ってひいています。(県水って呼ばれてます)

能登杜氏という言葉があるように酒作りをする職人さんはすごく多かったのですが、多くが出稼ぎで県外でお酒を作っていました。
もちろん、能登にも良いお酒はたくさんありますが、 能登の職人が能登でお酒を作らずに、灘でお酒を作ってるのはたぶんそういうことなんだろうなと思います。

私の家がある輪島市三井町の水道は多くの地区が輪島の市街地にある浄水場を水源にしています。
しかし、市街地より三井町の方が標高が100m以上高く、また距離も10km離れています。

水道事業は一朝一夕にできたものではなく、人口の推移や都市の発展と合わせて何十年もかけて徐々に大きくなってきたものです。
三井町のように、人口が減少してきているときに水道の敷設が行われたところには、既存の配管を無理に引っ張ってしまったところもあります。
もちろん、逆に思ったより人が増えたがために無理にやってしまった配管もあるでしょう。 奥能登は一次産業が主力ですから、農業用水との絡みもあります。 水道のために農業用水で流すべき水を勝手にとっていくわけにもいきません。

水利用とは山から海までの水の経路を人が利用しやすいように変えること

水利用はそもそも山に降った雨が海に帰るまでの経路を、人間が利用しやすいように変更することです。
田んぼに流したり、水道で流したり、都会では、土地利用や治水のために地下に流したりしながら海に返します。

多くの水道は、ダムや取水口を作って川の水を浄水場に流し、そこで飲める水質にして水道として供給しています。 しかし、井戸水を利用している自治体もかなりあります。

私が今みなし仮設で住んでいる志賀町は、深井戸4本で町全体の水道水を賄っています。

東京でも私が大学の頃、調布市は半分が井戸水でした。 (今は知らない)
東京の水はまずいと聞いていたので、大学に行くために上京して恐る恐る水道の水を飲んでみたのですが、全然まずくなかったのであれっと思って調べたら、半分が地下水だったということがわかりました。

ただ、東京の地下水は汲みすぎると地盤沈下で江戸川区や江東区が水没します。地域における水源は地形や地質、人口、産業を見ながらバランスで考えるということですね。

ただ、こういう災害の場合は、取水口から蛇口までの距離が短ければ短いほど復旧は早くなります。
復旧が遅れているのは、長い間かけて作ってきたことで水道があまりに長くなってしまっていることと、そろそろ老朽化の限界に来ていることもあるでしょう。

日本の人口が増えて地方でも都市が発展していくという前提に立った時代にできた水道事業をそのまま次の世代も使っていくかと言えば、ちょっと考えたほうがいいのかなと思います。
(もちろんとりあえず今は水を出すことが先です)

水道事業は一年中安定した品質の飲料水を提供し続けることで、夏になると枯れる水源とか雨が降ると濁る水に頼るわけには行きません。難しい問題だからこそ長期的な視点で復興段階は考える必要があります。

田舎の水システムは今後どうしたらいいのか?

10日ほど前に、山梨大学の水処理専門の先生方と一緒に地域の水源の調査をしました。

山梨大学の水源調査の様子。地域の井戸や水源、集落の利用のヒアリングなど同行してすごく勉強になりました


三井町に水道ができたのはかなり最近のことで、昔使っていた井戸も結構残っています。
また、奥のほうの集落に行くと、今でも山の水をろ過して使っているお宅があったりします。 そういう集落では、現状でもそんなに水に困ってないんですね。

皮肉な話なのですが、水道事業をやってしまったがために今回は水に困ってると言う側面もあります。

もちろん、山の水や井戸も夏になれば水不足で枯れてしまう事はあるので、安定した水道はありがたいのですが、専門家と回ってよくわかったのは、昔の集落って水の利用を前提にして作られているということです。

山裾に家を建てて山の水を家に引き込めるようにして利用する、そしてそれを平野部の田んぼに使って川に戻す。

里山の美しい景観はそうやって作られているということがよくわかりました。 水を浄化する技術も年々上がってきていますし井戸掘りの技術も上がっています。

人口が減少していく地域においては、SDGsの観点からも、できるだけコンパクトな水利用のシステムで作り直したほうがいいんじゃないかなと思います。

(山裾の家はがけ崩れにリスクが有り、これも場所によっては考え直す必要があるんですけどね)

公共下水道に関しても同じことがいえます。液状化や土地の隆起で使えなくなっている下水道もすごくたくさんあります。
これもある程度は、集落単位での合併浄化槽とかに分散させた方が良いのかもしれません。

とは言え、浄化槽は結構地震で浮いちゃっているので、いろいろ工夫はしなきゃいけないとは思います。
ちなみに、地震で最強だったのは昔ながらのし尿だけ処理する単独浄化槽です。 埋設が浅いので、浮くことが少なく、排水でポンプを使わないので、電気がなくてもしばらくなら使えます。(長期的にはブロアで空気を送り込んでやらないと微生物が死滅します)

自然環境の観点からも、サスティナビリティの視点からも水の利用はなるべく狭い単位での地産地消が合理的です。
地域での水利用のバランスは復興計画で一度考えてほしいものだなと思います。
と同時に、住んでいる人たちも昔のように自分たちで水活用を考えると言うこともやってみてもいいのかなと思います。

私も井戸ができたので、電気の自給も含め、自分の家や地域の復興ではコンパクトな水利用の仕組みを考えていきたいと思います。

水のない被災地でも支援する覚悟をお持ちの方へ

公式のボランティアの受入も始まりましたが、まだバスでの往復で人数もかなり限られます。現状奥能登はすごい渋滞で乗用車で勝手に来られても困るのは事実です。
とはいえ、障害物で入ることもできない家、雨で濡れてゆく家財、動けない身体に忍び寄るエコノミークラス症候群と被災者の支援も急を要しています。
自伐林業仲間である福井の団体が私の町を拠点に震災ボランティアとして活動してくれています。泊まるところ(寝袋ですが)もありますのでぜひご応募ください。
現場はとても厳しいので条件は多いです。よく読んで応募くださいね。

スキ!は遠慮なくお願いします。拡散されることが励みになります!

今は寄付ページへの寄付をお願いしていますが、こちらも気に留めていただきありがとうございます。 この先どうなるかわかりませんが、サポートいただけましたら、被災地支援活動がおちついたら自分自身の生活再建に使わせていただきます。