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ウィーンまんぷく日記 1/369

 だいたい出張の前は「空港に向かう特急で寝られればいいや」「飛行機の中で寝られるだろう」と思うので、朝まで準備していることになる。でも、当たり前ながら年々きつくなる。その上特急の中でも眠れなかった。空港に着いてからも、昨晩提出した書類に不備があるということで作業をせねばならなくなった。
 ラウンジにはあまり食べ物がなくて、チョコレートだけ引っ掴んで搭乗した。登山での遭難を恐れる人がやりそうなチョイスだがこれしかなかった。私が出ていく時にちょうど、食べたかったティラミスと冷たいおそばが補充されてキィィーとなる。書類を出せて安心したのか、飛行機に入るなりシャンパンをもらって即眠ってしまうが、薄れゆく意識の中で「寝る前にこれだけ教えてください。ランチのご希望、チキンですか?ビーフですか?」と問われる。そんなそこ重要か?

 起きてランチ(ビーフ)を食べ、4月に出る本のゲラをチェックしたり、あたらしくはじまる新聞の連載原稿を書きはじめる。本はもう大詰めで、連載の方も締切が近い。お客さんのいる原稿ばかりを書いていると、自分の好奇心と向き合うことのハードルがどんどん高くなってくる。自分なんか大した存在じゃないから、大した存在じゃない自分が勝手にやる研究より、他の人がやっているプロジェクトや、大学や出版社さんから求められているもののほうがニーズがあって大事だ、という気持ちにもなってしまう。それじゃ本当にまずいと思って在外研究に申請したけれど、自分のことだから、たとえ一年であれ何かの形で日本と繋がってないと寂しくてしょうがないだろうと思って、連載の仕事もお受けした。当然私の社会復帰(というか、社会との繋がり?)のために公器があるわけではないので、いいもの、人の心に残るものが書ければいいなあと思う。
 飛行機に乗って5時間くらいで、なんかものすごく頭が痛くなってきたので中断し『CREZY RICH ASIAN』をBGMがわりに寝たり起きたりしながら観た。スキポール空港に到着し、薬局にダッシュで駆け込み頭痛薬をもらい、ラウンジで飲む。飛行機に乗る直前に、ある新聞社さんに送ったと思っていたコメントが送れていないのでめっちゃ焦ってすぐ送る。
 スキポールのラウンジは前よりもきれいになっていて、ご飯もいいものがあるだろう、せめてパンケーキくらいはあるかな?と思ったが特になかったので野菜スープを飲みながら、飛行機に乗っているあいだに追って送られてきたゲラの印刷をした。途中、スタッフの人がミートボールを各席に持ってきているのが見えるが、なぜかこちらには来てくれなかった。そんなにものすごく美味しいわけではないと思うけど、そのさほど美味しくないさまを確かめたかったので悲しい。ラウンジを出る前に薬をもう一回飲む。

 乗り継ぎ便もちょっといい席だったので、ご飯くらい出るかと思ってワクワクしていたのだが、さっきの頭痛薬が効きすぎたのかガン寝してしまう。あとで聞いてみると、サーモンのサラダが出て、なかなか美味しかったとのこと。「まんぷく日記」と書いているが初日からお腹ペコペコである。
 結局到着は23時ごろになってしまって、私がお世話になるアパートメントのAさんもずっと待っててくれていて、とても申し訳なかった。お部屋についていろいろ説明してもらって、すぐ寝る。写真は機内のタパスで、なんだかんだこれがきょう一番美味しかった気もします。パンケーキもついてたし。明日からは研究とかの話も書ける範囲で書きたいけれど、まんぷくになってからですね。

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