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ウィーンまんぷく日記 4/369

 ゲラのチェックがようやく終わった。ここから念校を出してもらって最終チェックなので、いまは少しお休み。といっても他の原稿があるのでお休みできないのだが。家主さんがクワイア(合唱)の発表会をされるというので、お願いして見に行かせてもらう。家主さん曰く「左翼っぽくて政治的なクワイアなんだけど……」というので、おお、対抗文化!と思ってその点でも楽しみにして行った。

 合唱というから日本でいうようなものをイメージしていたが全然違って、非常に面白かった。歌詞は当然わからないのだが、表現の幅がすごく広い。呼吸というか、ボイスパーカッションが中心となる曲もあれば、掛け合いというかポエトリー・リーディングのようなものが全体を占める曲もあるし、曲調もいろいろだ。演出も前衛的というか現代的というか、歌詞がわからなくても確かに対抗文化なんだなという気がする。その一方で、現代の日本でいう合唱はかなり規律化や調和といった学校文化のバイアスが強いのかなということも考えたりした(もっとも、オーストリアでもそういう合唱文化が前提としてあるからこういう形での対抗行動が成り立つのかもしれないけど……それでいうと日本のうたごえ運動は対抗の仕方がおそらく少し違っていて……とか書いていくと、知識がないくせに余計なことを書いてしまいそうなのでここらへんでやめておく)。これは家主さんにお伝えしたかったのだが、英語がうまく出なかったので次会ったときにきちんと喋れるようにここにまとめておこう。

 クワイアに行ったほかは、ゲラのチェック以外やっていない一日なので、三日坊主は免れたもののほかに書くことがない。まんぷく日記というからには食べ物のことでも書こうと思ったが、日本食とイタリアンなので特に書くこともなかった。どこでも既にそうなのかもしれないが、カフェやレストランでなにか食べようとするより、日本食のほうがむしろ安い。バルクなものなら当然安いが、きちんとしたものだって安い。
 海外に住む友人がよく言っていることだが、日本食もあるし、コミュニケーションに不自由せず仕事があるなら、わざわざ日本に住まない人が増えるのもわからなくはない。もっともコミュニケーションに不自由せず仕事があるという状況が私には訪れないと思うけれども。

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